コーヒー1杯分の料金で1日利用できるシェアスペース 下町の古民家を働き方改革に活用

「働き方改革」に対応したシェアスペース事業を展開するアイビーリンクスは、東京都荒川区町屋にある一軒家を活用し、コーヒー1杯の料金で1日利用できる会員制のシェアスペース「ivyCafe NEIGHBOR&WORK」を開設、1月5日から本格的にオープンした。
スマートロックの入退室とネットワークカメラの常時記録・遠隔操作、警備会社との連携により24時間体制のセキュリティーを採用し、OLや主婦などの女性でも安心して利用できる空間を提供する。

この一軒家は古民家のようで、昭和へとタイムスリップし、「懐かしいけれど、実に新鮮」という空間でもある。テレワークなどめまぐるしく働き方改革が推進されるなかで始まった同社の取組みについて、水野功社長に話を聞いた。


1日コーヒー1杯分の低価格にした理由


ivyCafeの1日利用料は電源とWi-Fi、電子レンジなどが使い放題のほか、ドリンクバー(コーヒー、紅茶、日本茶)がついて380円。このほか予約制のミーティングルームは30分単位、500円から利用できるなどのサービスも提供している。
コーヒー1杯分の料金で1日利用できるシェアスペース 下町の古民家を働き方改革に活用

――一軒家を利用したシェアスペース事業の概要からお願いします。
水野 功(以下、水野) 私はもともと不動産とITの仕事をしてきました。そこにまつわる部分で世の中にある「もったいないもの」「十分に価値を生み出していないもの」について、カタチを変えることで、新たな価値を創造できると考え、いくつかの事業をはじめようと思い立ちました。
そこで2017年7月に「アイビーリンクス」を立ち上げました。
事業の初弾として、地域の一軒家、理想としては今、社会問題になりつつある「空き家」の再利用でしたが、都心の駅チカには、そうそう空き家はありません。
たまたま、この東京都・荒川区町屋の一軒家に巡り会えて、オーナーともご縁があり、「働き方改革」「テレワーク」、「地域コミュニティーの活性化」に対応した低料金で1日利用できるシェアスペース 「ivyCafe NEIGHBOR&WORK」の展開をスタートしました。
一般的にシェアオフィスは、都心のターミナル駅近くにあり、ビルの個室を使って、起業家、フリーランサー、クリエイターをターゲットに展開されていますが、私は、さらに拡大し、普通のサラリーマン、OL、主婦など職業をもっと多様化し、そのなかで、地域に展開していくことができないかと考えています。実は、シェアオフィスは月会費が数万円です。これでは普通の方々が気軽に支払える費用ではありません。

そこで、コーヒー1杯の料金で自分の使えるスペースを用意でき、時間を気にせず一日ゆっくり利用できる会員制のコミュニティー&ワークプレイスを展開していく考えです。
実は世の中にこのようなビジネスはなく、はじめての試みです。これからどうなっていくか分りませんが、お客様になっていただく方の御意見を聞きつつ、軌道に乗せたいです。
コーヒー1杯分の料金で1日利用できるシェアスペース 下町の古民家を働き方改革に活用

――この一軒家は古民家のように風情があり、静かな住宅街にありますね。
水野 私はもともとデベロッパー勤務で、ビルやマンション建設に携わっていました。
再開発などでは、既存の建物をすべて解体し、更地とし、ビルやマンションを建てるのがデベロッパーとしての役割です。しかし、仕事を続けていくうちに、「カタチを変えれば、まだ使えるのでは」と思い始め、古民家に新たな価値が生み出せる可能性があるのではないかと考えたのです。
デベロッパーのプレイヤーは星の数ほどおり、その存在も重要です。しかし、当社のような存在は少なく、この世に生を受けたのですから、仕事をしつつ、世の中に貢献したいという想いがあります。残された人生を生きる中で、存在意義もつくっていきたいです。
実は今回の物件もリノベーションなどの措置を施しておりません。おばあちゃんの家にタイムスリップした感覚と似ており、「懐かしいことがむしろ新しい」という感性が得られ、若者にも喜んでいただけるのではないしょうか。


――東京下町である荒川区町屋を選択した理由は。
水野 事業展開では地区にはこだわらなかったのですが、荒川区町屋は千代田線沿線で、アクセスでは便利でありつつも、非常に混雑する沿線です。
そこで千代田線沿線で物件探しをスタートしましたが、物件であればなんでも良いというわけではありません。
その空間で大切な時間を過ごしたいと願う場所を探していました。ここは、町屋駅から徒歩7分と、少し離れた場所にありますので、一般的にワークプレイスとしては難しい立地ですが、建物に入った瞬間気に入りまして、最初の事業にはぴったりだと確信しました。


サラリーマンを通勤ラッシュの苦痛から解放したい


――この事業は働き方改革の一助にもなりそうですね。
水野 サラリーマン時代、片道1時間、往復2時間の毎日の通勤が大嫌いでした。これがなんと無駄で苦痛な時間であるのかと、思い出します。
今のITの進化に伴い、もはや会社に通勤する必要性を以前に比べて感じておりません。会議をするのであればテレビ会議などで解決します。
しかし、現実には朝9時には今も出勤しなければならない。私も以前、勤務していた会社ではフレックスタイムが存在しています。
しかし、制度として存在しても、本当の意味では十分に活用されていない制度でもありました。サラリーマンを通勤ラッシュから一人でも解放したいという思いもあるのです。

――出勤が楽になればサラリーマンやOLも仕事はもっと楽になりますが。
水野 特に、経験で話しますが、東京が大雪に見舞われますと、電車がストップし、駅の構内に入るまで外での待機時間が1時間かかったことがありました。
あの時、日本のサラリーマンやOLは寒空で大雪が降っているなかでも外で待機するという辛い思いをしてまで会社に出勤しなければいけないのかと思いました。
そのような時には、駅の混乱が収まるまでの時間をこのような空間で仕事をした方がずっと生産性が上がります。
コーヒーが飲めてWi-Fiも使え、監視カメラの設置と警備会社との連携によるセキュリティー対策もしっかりしてますので、女性の方も安心して使えるスペースです。
空間のコンセプトは「会社よりもリラックスできて、自宅よりも緊張感のある空間」を目指しています。
アイビーリンクスは、多様性という価値観を重視しており、サラリーマンが仕事をし、学生が勉強する、主婦の方がワークショップをする場になるかもしれません。それはお客様のご利用状況を見ながら様子を見ていきたい。
コーヒー1杯分の料金で1日利用できるシェアスペース 下町の古民家を働き方改革に活用

――アイビーリンクスの理念を拝読しましたが、おおいに共感しました。
水野 アイビーリンクスの理念は、「もっと自由に働ければ、人生はもっと豊かにできるはず」というものです。

学校を卒業した後、就職や起業など、仕事の定義は各個人によって異なります。
しかし、人生のなかで、働いている時間が大半を占めその時間をどう豊かにするか。パフォーマンスや働きがいをどう豊かにするかは大きなテーマになります。最終的にはそれが人生の豊かさにつながっていく。
例えば、会社としてのルールでは「朝9時に出勤する」だとしても、それとは別に、やりたい仕事とやりがいの仕事を有意義にできる空間を提供したいのです。

――今回は、東東京でしたが次の展開は、どちらの地区を考えていますか。
水野 小田急路線、京王線路線、中央線の西東京地区を狙っていきたいです。戦略としてはドミナントなどもありますが、多くの沿線で点在して、展開していきたいです。
今回は、古民家のような一軒家でした。確かにはこれは時代にマッチしています。
しかし、不動産は、オーナーも含めて出逢いが大切ですので。古民家風にこだわらず、いろんな可能性を模索していきたいです。


――20代から30代男性に向けてのメッセージも。
水野 私はいま45歳です。さまざまなクラウドサービスを導入しているなかで、20代の方と出会うこともあります。僕らの時代を振り返ればこれほどの通信技術の発展は想像しなかったです。感覚的なことを言いますが、これから来る時代の変化のスピードはより速くなります。柔軟な対応力や発想力を大切にして、豊かな空間で豊かな時間を過ごし、豊かな仕事をして、人生をより豊かなものにして欲しいと願ってます。
(長井雄一朗)
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