連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第22週「夢を継ぐ者」第124回 2月28日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:東山充裕
「わろてんか」124話「笑いは人生や」名セリフは主人公に言わせてあげてほしかった
イラスト/まつもとりえこ

124話はこんな話


リリコ(広瀬アリス)とシロー(松尾諭)は女問題で大揉め。
つばき(水上京香)は結婚が近づいてきたが、隼也(成田凌)のことが忘れられず・・・。


あと1ヶ月


2月27日に「わろてんか」がクランクアップを迎えたそうだ。
てん役の葵わかなのTwitterで、焼け跡に簡易な芝居小屋を建てたようなところで葵が映った写真が載っていることから、最終週の展開を推理すると、戦後復興の時期だろう。
戦争で物語が盛り上がることを期待するのは心苦しいが、「ごちそうさん」(13年)がそうであったように、戦争の苦しみを経て生き抜く希望を描くことで、物語は尻上がりにヒートアップしていことであろう。

笑いは人生や


まるで最終回みたいな台詞「人生は笑い 笑いは人生や」と謳う楓(岡本玲)に、この人こそ、「わろてんか」のテーマ、恋と笑いを体現している人だと感じた。

少女の頃は、与謝野晶子の「乱れ髪」を愛読し、歌人を目指していた楓。藤吉(松坂桃李)の婚約者として、てん(葵わかな)と争ったものの、ほんとうは、結婚して貞淑な妻になるだけが人生ではないと思っていたので、闘いから降りて新聞記者になった。その後、漫才の構成作家になっていまに至る。

狂おしい恋物語に陶酔していた楓が、最終的には「なんでもないところに笑いのタネが転がっている」(byとき〈徳永えり〉)ことを実体験し、そこに“書く”楽しみを見出していく。そういう人物をつくりあげたことで、「恋バナ」と「笑い」が乖離しているのではないかという視聴者の疑問に、見事、答えたところだろうが、
この役割をてんのほうに託したら、ドラマとしてきれいにまとまったのではないかと、余計なお世話だが惜しむ。

つばきと隼也


一所懸命、25周年パーティーの企画を練っていた隼也のもとに、つばきの家の女中さんがやってきて、
つばきが隼也のことを忘れられないので、彼女の気持ちを断ち切ってほしいと頼む。
そこで、隼也は「ぼくも結婚します」と嘘の手紙を書く。

あゝこれはあかんパターン。縁を切るには、一切、連絡をとらないべきで、内容がどんなにつれないものであっても、手紙なんて書いたら、また想いが蘇ってしまう。顔を合わせちゃダメだし電話もメールもLINEもしちゃダメなのだ(力説)。もっとも、ドラマとしては、これで話が転がっていくわけだから、あかんくないパターン。


ただの女


シローが会っていたのは、ほんとうにただの楽団の仲間で、そこに恋愛感情は一切なかった。
それを、123話に続き、探偵のように社員の動向を追跡していた亀井(内場勝則)が「ただの“女”」表現。
リリコみたいに美人で仕事もできていざつきあったら優しくしてくれる女性を手に入れたのに、ほかの女にすぐ目移りするわけはない(したらバチが当たる)。シローは上海で、本来彼がやりたい音楽をやる誘いを受けていたが、リリコへの愛のために諦めようとする。
それをリリコが立ち聞きしていて・・・
さて、どうなる?

ここへきて、レギュラーのキャラクターが粒立って来たので、たわいない日常のあれこれを気楽に楽しめるようになった。「わろてんか」のもうひとつのテーマである「家族」も、北村笑店という大きな「ファミリー」を通して機能しはじめている。それもあと1ヶ月と思うと、すこぉし名残惜しくなってきた。
(木俣冬)
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