
4人組バンドBLUE ENCOUNT(通称:ブルエン)の前後編インタビューの後編。前編以上にディープな音楽に対する想いや、最新アルバム『VECTOR(ベクトル)』について語ってもらった。
「BLUE ENCOUNTは終わる」
はたから見ると“成功”を手にいれたように思えるBLUE ENCOUNT。だが「常に不安と戦いながらやってる」(江口)現状は、「今をあがくっていう意味では、昔と全然変わらない」(田邊)という。
江口:現状維持で行こうとすると、僕らみたいな仕事ってちょっとずつ……自分たちは現状維持って思っていても、お客さんの方からしたら、ちょっとずつ下がっているように見えると思うんですね。だから自分たち的に常に上がっていかなきゃいけないし、そのメンタルを保つのはすごく大変で。自分たちに常にムチを打って、このバンド活動を続けているっていうのはあります。

――それってすごくキツイくないですか? 上がっていて現状維持で、さらに上げないと、もう一つ上に上がることができないって。
江口:でもそのキツさよりも、昔に戻ることの方がキツイって思っているんで。あの頃(バイト時代)の苦しさは正直、何事にも変えがたい。そのためだったら、なんでも頑張れるっていうのはあります。一番苦しかった、どん底を知っているので。そこには戻りたくないっていうのもありますし、今、この周りにいるスタッフのみんなとずっと一緒にいたいっていうのもあるし。だからそのために頑張ってる。いろんな楽しさを失いたくないから頑張っています。

田邊:音楽って何より自分の心が救われていると思うんですよね。逆にそうじゃなくなったら、やめたほうがいい。僕は最終的に自分のために作れないんだったら、音楽をやめたいって思うんです。だって自分を喜ばせる曲を歌っているから、人に伝わるんですよ。自分が倒れそうだなって思っているときに、自分自身に頑張れよって言ってる曲を、BLUE ENCOUNTはずっと書いている。それをステージ上で歌ったときに、聴いてくれた人にも広がって、僕も私も背中を押されるってなって、みんなで背中を押し合うことができる。僕はそれが音楽の力の一つだと思うんです。それを今はやっているし、やらなくなったらBLUE ENCOUNTは終わるなって思っているので。

江口:ホントに僕らの仕事って特殊だなって思うのが、僕らが歌を作って届けて、届ける代わりに対価をもらうじゃないですか。でも届ける以上に、僕らは喜びであったり、楽しさをもらっているんですよね。プラスさらにお金までもらっていて。僕らはお客さんがいない時期が長かったせいもあるのか、ライブとかで演奏をしたり、CDを出したり、それを届ける相手がいるってことがホントに嬉しくて。それなのに、それがお金にもつながって、こうやって僕たちが生きている糧になっているっていうのは、本当にありがたいことだなって思います。どんなバンドもそうやって生きていけるわけではないので。
ミュージシャンのお金の使い方
そんな仕事をして稼いだお金を二人がどんなことに使っているかは気になるところ。衣食住を除いて、今、一番何にお金を使っているか。二人の“仕事”以外の楽しみについても聞いた。
江口:携帯アプリの課金に一番使っているかと(笑)。ゲームをやっているときが一番、リセットできるんですよ。例えば、洋服を買うとか、髪形を変えるとか、何をするにも常にバンドのことを考えてしまうんですよね。バンドの一員としてどう見られるかっていうのを考えちゃうからリセットできない。けど僕にとってゲームは、完全にバンドのことと切り離せる瞬間で。薄っぺらでダサいことを、すごくカッコ良く話していますけど(笑)。そのときは何も考えず、趣味に没頭できるから、正直、そこにつぎ込むお金は惜しまないってなっちゃったんですよね。

田邊:本当は楽器とか言えるといいんでしょうけど、僕の場合、家で楽器を弾きたくないんですよ(笑)。ちゃんとスタジオとか、僕ら曲作りのための合宿をしたりするんですけど、そういう場所じゃないと曲ができないんです。例えば今回のこの『VECTOR』というアルバムを作るために3泊4日の合宿をしたんですけど、そのときは70曲くらいできたりもして。僕の場合、音楽は日常と逆のことをすることによってできるものなんですよね。なのでお金を使うのは趣味です。
――その趣味とは?
田邊:ミリタリーマニアなんです。もともとは映画がすごく好きで、なので映画にもお金は使っているんですが、その中でもアクション映画が好きで、そこに出てくる銃器も好きになって。初めて観た映画が親父に連れて行ってもらった『スピード』(1994年公開)で、その頃からエアガンとかに興味を持つようになって、いまもコレクションとして鑑賞用のエアガンを集めてます。それを点検したり、動作してるときが楽しいです。一度、ドラマ『LAST COP』の主題歌として「LAST HERO」って曲を提供させていただいたとき、ドラマが刑事ものだったので、ピストルを持ったアーティスト写真を撮ったんですけど、そのときに僕のものを使っていただいて。「やっと趣味が仕事に生きたな」って(笑)。
江口:違うから。結局それ、ボツになったし。

――使われなかったんですか?
田邊:はい。なのでいろんなテレビ番組とかでそのエピソードを語ったんですけど、全部使ってもらえなくて。今日は使っていただけるということで。
江口:ばっさりいってください(笑)。
また音楽稼いだお金を受け取ることによって、お金の使い方についてより意識的になったともいう。
田邊:お金との付き合い方って、夢を叶えてからの方がちゃんとするようになったというか、バイト時代の頃の方が雑に使っていたな、って思います。言っても人気商売なのでいつかは今の時期よりももらえなくなる時期が来ちゃうかも知れないので、そのときに向けてお金を貯めるってこともしたりとか。会社員ならローンが組めるようなものとかも、僕らはできないとかもあるし。そういうのも含めて、今のほうがお金にシビアに動いてますね。個人事業主とはよく言ったもので、お金の勘定も含めて、自分の未来について考えるきっかけになっています。

――お金を大切にすることで、次の作品を生みますよね。
田邊:それこそ衣食住につながり、そこが充実することによって趣味ができたりするわけですから、回ってくるわけですよね。無駄遣いをしていたら、衣食住がおざなりになって、モチベーションが下がって曲が作れないってなるので。そう考えるとお金って大事ですよね。人前で初めてこんな話をします(笑)。
「バカが作ったからこそ、バカみたいにいい」

そんなBLUE ENCOUNTが前作から1年2カ月ぶりとなるアルバム『VECTOR』を3月21日リリースした。収録される14曲中12曲が新曲という意欲作だ。
田邊:それこそここまで話してきたことにつながるのですが、自分たちはこのままではダメだ、と思ったからこそできた作品ですね。ほとんどの楽曲が先ほど話した合宿のときにできたものなんですが、それが11月の半ばで。それを12月にレコーディングして。曲はいくつか以前からのものもあるんですけど、歌詞は全部12月に書きました。だからホントにできたてほやほやの曲ばかりなんですけど、普通、メジャーのアーティストはこんなことしないですから。
――確かにそうですね(笑)。もう少し計画的に曲を作りためてアルバムにしますよね。
田邊:バカがやることなんですよ(笑)。言葉を選ばずに言うと、バカが選んだ道なんです。でもバカが作ったからこそ、バカみたいにいいんです。それは自信持って言えますね。それこそ周りの人からは今の僕らの状況をめちゃくちゃいい、って言われることもあるんですけど、そこは全く納得していなくて。音楽でご飯は食べられるようになりましたけど、今はご飯を食べられることが夢ではないんですよ。もっともっといい景色を見たい。それはスタッフを含め、一緒に歩んでくれているファンの皆さんとか、これから出会ってくれるみんなを、もっともっとブルエン聴いてる俺、私、かっけーな、って言わせたいというか。今が一番カッコよくありたい、って思ったんですよね。

バンドであれば前の方がよかったよね、って言われるのは当たり前にあることなんですけど、僕らが好きだったアーティストさんたちはそれでもいつだって今がカッコイイっていうのを見せてくれていて。だからずっとついて行きたって思えるんですよね。僕らは1カ月という短スパンの中でその答えを出したかった。出したかったというか、出たんですよね。その結果、こんなにもジャンルレスで、初めて挑戦するようなシティポップものとか、オルタナなものとか、ミクスチャーなものとか、いろんなものをやれたんです。それこそ14本の“ベクトル=矢印”がそこにはあって。そのどれを取っていただいても、その辿った先にはBLUE ENCOUNTがいるっていうくらい、今回、等身大のBLUE ENCOUNTで作れた作品なんです。
――タイトルの“VECTOR”にはそういう意味があるんですね。
田邊:もう一個は、BLUE ENCOUNTとしてこれまでやっていて、その間には、特にバイト時代とかは、バンドをやることを反対されたこともあって。でも僕らはどんなに反対されようとも、音楽というベクトルを選んだ。それが今、正しい。絶対に正しいんですよ。例えば、この先、音楽がダメになったとしましょう。それで、メンバーおのおのが新しいベクトルを選んだとしても、今を選んだことが邪魔になることは絶対にないので。だから俺はどんなに迷っても、ちょっとでも信じられるベクトルをその人が拾ったなら、それは絶対に正しい選択しだよって言いたかったんです。逆に他からいいように見られていても、その場所が自分のいるベクトルじゃないって思うこともある。そんなときは新たなベクトルを探す旅をすればいいじゃないかっていう意味も含めて。何をやっても最終的にはあなたに帰って来るからいいですよ、っていう意味ですよね。ベクトルは。
――そんなアルバムの最後に「こたえ」という曲があることにも意味を感じます。

田邊:この曲はこのアルバムの最後、これだけ1月にレコーディングをしたので、ホントに今のBLUE ENCOUNTですね。歌は一発録りなので、まさに僕の叫びなんですよ。そして、バンドとして最後に出た「こたえ」で、何が正しいかわからない、って言ってるんですね。でも、わからないことを認めることがいいことなんじゃないかと。なんとなくこれが正しいんだな、って言って妥協するよりは、大きい声でわからないんだよね、って言ったほうが進めることもあるのかなって。大人になればなるほど何が正しいかわからなくなるけど、でも今、俺らが楽しんで音楽をやっているんだったら、俺らはここに立っててよかったと。この先、どんな音楽が売れるかわからないけど、今、あなたが笑ってここにいてくれるんだったら、あなたたちはBLUE ENCOUNTを選んでくれて正解です、って言いたいというか。そういうすべての「こたえ」が詰まっているんです。
江口:田邊が言ったことは、バンドとしての意志でもあるんです。4人が100%で出した一つの答えがアルバムの中に入っているので。4人の感情を一枚のアルバムにパッケージできたことは、バンドとしての一つの財産だと思うし、今、ぼくらが見せる、一番正しい「こたえ」になったかなって思います。
――そんな『VECTOR』を携えてのツアーもありますが、どんなものを見せてもらえますか?
江口:発売をしてからツアーまでの日にちが結構空いているので、ツアーが始まる頃には、みんなの中でもそれぞれ曲に対して想いが募ってくると思うんですよね。だから僕たちはツアー初日に100%、120%を見せて、そこから先をみんなで作って行けるようにします。難しい楽曲が多いので、僕らにとっても一番挑戦的なツアーにもなると思いますし、みんなとさらに成長していけたらいいな、って思っています。

取材・文 瀧本幸恵/撮影 石井小太郎
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(スマダン編集部)
リリース情報
3rdアルバム『VECTOR(ベクトル)』
発売日:2018年3月21日
HP:http://blueencount.jp/
Twitter:https://twitter.com/BLUEN_official