
甲高い声、誰もが癒されてしまう笑顔、巨大な段ボール、そこに描かれるのは牧歌的なタッチの絵、独創的なストーリー展開、そして、せわしなく舞台上を動き回って最後に「ためになったね~」の決めゼリフで締める。1分前後のショートネタブームを巻き起こした『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)で一躍人気者になったもう中学生さんを覚えているだろうか? ネタ番組で見る機会は少なくなったが、現在上演中のミュージカル『メリー・ポピンズ』に主要キャストのひとりとして出演中だ。
もう中さんはオーディションに参加し、物語の中心となる「バンクス家」に仕える役立たずの使用人、ロバートソン・アイ役を勝ち取った。オーディション当日は課題曲を覚えずに臨み、代わりに美空ひばりの「愛燦燦」を歌ったという。美声を海外スタッフに評価されての抜てきだが、それだけでなく大人が見て「自分が子供だった」ということを再認識できる作品であるだけに、もう中さんが醸し出すイメージと共通する部分を感じ取ったに違いない。
ダンボールネタのきっかけ
そんなもう中さんのこれまでをごく簡単に紹介しよう。2001年にNSC(吉本総合芸能学院)東京校7期生として芸人人生をスタートさせた。段ボール芸のきっかけは、「世の中でやっていないこと、プラス誰もできないようなことをやりたいなと思った」からとオリコンのインタビューで明かしている。カテゴライズできないネタの着想は、「地元の長野で子どもの頃に見た景色が多い」と語り、「自分の心から出たもの」を重視しているという。
2009年には初の個展『~幸せになる~ギャグ・アート展』を渋谷パルコと、地元の長野県でも開催。また、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の自らの出身を活かした「あぁ農業高校芸人」に登場。高校の特色として、農業実習のあとの授業だと、手に付いたオクラの匂いが嗅げるから腹減り防止になる、という旨のエピソードを披露しスタジオを沸かせた。また、広末涼子さんのモノマネで活躍し先日芸能界引退を発表した、おかもとまりさんとの熱愛が噂されたことも。
IPPONグランプリでも発揮された独自性
大喜利力でも独自性は発揮され、大いに注目されたこともある。松本人志さんがチェアマンを務める『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)のテスト企画『IPPONスカウト』で優勝し、見事、第8回の本戦に出場権を獲得。
「ぼんやりと地元の長野に帰ってお笑いやろうかなと思い始めていた」と行き詰まっていた時期で、「松本さんが大好きで、松本さんが坊主にしたときに、自分も坊主にしました」と同世代の人間なら理解できる松本信者ぶりを自ら明かした。本番でもらしさを発揮し、絶対王者バカリズムさんも思わず「もう中さん、ハマると怖いですね」と危機感を露わにしたほど。実際の模様はDVDなどで確認されたい。
『メリー・ポピンズ』は初ミュージカルではあるが、舞台への出演は初めてではない。2017年に『ハイスクール!奇面組』に奇面組のメンバー・出瀬潔役で出演している。舞台出演でさらなる表現力を身につけ、唯一無二の段ボール芸で世代を問わないエンターテイナーになる可能性を秘めたもう中学生さん。今後の活躍に期待しないわけにはいかない。
(小島研一)