サービス開始直後ということもあり、今のところはTBSテレビ、テレビ東京の過去ドラマや見逃し配信などが中心のラインナップとなっているが、その中で目玉となるオリジナルコンテンツが、堤幸彦監督の新作『SICK'S 恕乃抄 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜』だ。
『ケイゾク』『SPEC』シリーズの完結編ということで注目度も高い本作だが、1〜2分の動画を毎日配信していき、1ヶ月まとまると1話分になる「ピンチョス配信」という、ちょっと飛び道具すぎる配信方法をとっているため、「Paravi」に加入してまで見ようかどうしようか悩んでいる人も多いんじゃないだろうか。
そんな人たちの人柱として、早速「Paravi」に入って、配信開始日から毎日追ってみた。

週1回くらいで良かったんじゃ……
「ピンチョス配信」を日々追いかけてみての感想は……とにかく、じれったいし見づらい!
現時点で、まだ第1話も終了していないので、ストーリーどうこうを語る段階ではないが、それにしても見づらくてツライ!
こういう配信方法をとっているからには、1〜2分で一応のオチがつく細かいストーリーが積み重なって1話になっていく……的な構成を想像していたのだが、今のところ、普通のドラマをただ単にブツ切りにして配信しているだけという印象。
普通のドラマを1〜2分に区切って見せられたら、そりゃあ見づらいし、話も頭に入ってこないのだ。
「Paravi」のスタート初日、「目玉である『SICK'S』が1分しか見られないのはさすがにマズイだろう」という判断なのか、第1話の1〜8まで一挙公開されていたのだが、8まで連続で見ても「よく分からん」状態だった。
1〜8は、普通のドラマでいう主題歌がはじまる前パートなので、ストーリーが何にも進んでいないんだもん。
ちなみに、毎日1〜2分の動画が配信され、毎週日曜日には1週間分の動画をまとめた「週間まとめ」が配信されるのだが、サービス開始日の4月1日が日曜日だったので、こちらも同時に公開開始。
この「週間まとめ」が見やすいこと見やすいこと……。
ほぼ同じ内容をまとめているだけなので「話が進んでない!」のは変わらないが、1〜2分ごとにイチイチ次の動画をクリックしなくていいというのがこんなに楽ちんだとは。
主演の木村文乃がTwitterで、
「パラビでは今日Twitterでご覧頂いた分の週間まとめが配信されています。ストレスなく見ていただけますので、是非ご覧下さいませ」
と告知していたが、通常の毎日配信がストレスあるって認めちゃったよ……。
だったら毎週1回、それなりにまとまったストーリーを配信した方がよかったんじゃ……ってそれ、普通のテレビドラマか。
スマホのスキマ時間を狙いたいのは分かるけど
堤幸彦監督の新作という注目度の高いコンテンツで、どうしてこんな、明らかに無理がある配信方法をとってしまったのか?
「Paravi」に話題を集めるため、という理由もあるだろうが、それ以上に、「ドラマ」というコンテンツで、スマホやインターネットに対抗するための試行錯誤の一貫なのではないかと思う。
今や、老いも若きもスマホばっかりいじくっていて、テレビに1時間集中してドラマを見てもらうのは至難の業。
そこで、SNSやスマホゲームに奪われてしまった可処分時間の「スキマ」に入り込もうとしているのだろう。
『SICK'S』は「Paravi」以外に、TwitterやYouTube、スマートニュースなどでも、毎回24時間限定で最新話が配信されているので、自分のタイムラインに流れてきた動画をなにげなく見て欲しいという狙いはよく分かる。
最近、Twitterのタイムラインのみで配信するという「ピンチョス配信」よりもさらにワケの分からない配信方法をとっているTwitterドラマ『パパ活整形』もスタートしたが、こちらも1話が約2分。「SNSに奪われた時間にスルッと入り込みたい」というのはドラマ制作者共通の願いなのだろう。
確かに、通勤・通学中に1時間のドラマを見る気にはならないけど、1〜2分の動画だったらチョロッと見てしまいそうだ。
しかし、それだったら1〜2分でオチがつくショートコント的な話が毎日配信され、1ヵ月分まとめて見ると1本のストーリーになっている……みたいなタイプのドラマの方が向いていたんじゃないだろうか?
この『SICK'S』、まとめて見たら面白そうな雰囲気は漂っているものの、いかんせん1〜2分ずつ配信するには話が壮大するぎるのだ。
タイトルに「恕乃抄(じょのしょう)」とついているように、全3部作(序破急で3部作か)を予定しているようだが、1シリーズ仮に12話だとしたら完結までに1年。3部作だと3年かかる計算。
3年間、毎日毎日、1〜2分の動画を追いかけ続けるのはツライ!
「Netflix」などの動画配信サービス・オリジナルドラマでは、最終話までまとめて配信してしまうというのが最近のトレンドだが、その真逆を行く「ピンチョス配信」。
現時点では、その特徴を上手くいかせているとは言い難いので、月末に1話分をまとめて配信される「完全版」だけを追う感じでもいいんじゃないかとは思う。
「Paravi」に入会すべきか否か!?
ちなみに「Paravi」というサービスに課金(月額925円!)する価値があるかどうかという問題だが、正直、現時点では全体的にラインナップが貧弱なので、『SICK'S』を毎日追いかけて熱烈に見たい人、またはTBSテレビ、テレビ東京のドラマが大好きだという人以外にはあまりオススメできない。
海外ドラマや洋画がほとんどなく、国内ドラマ中心というラインナップは「Netflix」「Hulu」と差別化を計っているとも言えなくはないが、肝心のTBS&テレ東の番組も、CSの「TBSチャンネル」「BS11」あたりでさんざん再放送しているようなものばかりというのが残念。
せっかくテレビ局が手がける動画配信サービスなんだから、「えーっ、コレ見られるの!?」というレベルの、再放送もソフト化もしていない伝説のドラマをドーンと配信してもらいたいのに。
個人的には、『3年B組金八先生』の影に隠れて忘れ去られている「B組」シリーズの『1年B組新八先生』『2年B組仙八先生』『3年B組貫八先生』をまとめて配信してくれたら一生「Paravi」についていきます!
……というか、TBSテレビの代表的なドラマなんだから、せめて『金八先生』全シリーズくらい配信してくださいよ!
(イラストと文/北村ヂン)