1月期ドラマの話題作『アンナチュラル』(レビュー)の枠を引き継いでの金曜10時枠。

騒ぎながら見たい2018年版『金妻』
原作は、1994年に発表された山本文緒の同名小説。2003年にはBSフジでもテレビドラマ化されており、そのとき主人公を演じたのは斉藤由貴だった。
今回、主人公の佐藤真弓を演じるのは中谷美紀だ。真弓は結婚13年目の専業主婦。おおざっぱな性格で、細かいことによく気が付く夫にはつい文句を言ってしまう。娘が中学校に入学して手を離れたとき、元職場の同僚に声をかけられ、10年ぶりに職場復帰をすることになる。
住宅販売会社で営業マンとして働く真弓の夫・秀明役は玉木宏。外から見れば、優しそうでイケメンの「理想の旦那様」。でも、家では真弓の気持ちを汲まず、仕事や漫画喫茶に逃げてしまう困った夫だ。
このドラマは、事前に100人を超える女性たちに「オンナの本音」をリサーチして制作している。その甲斐あって、お互いへの不満を口にする真弓と秀明の掛け合いは「わかる……!」とテレビ画面に話しかけたくなるほどリアルだ。
ユースケ・サンタマリアは、秀明の顧客となる教員・茄子田太郎を演じる。自分が客だと思うと店員に横柄に接し、「男が稼ぎ、女は家を守る」という家族観を信じている時代錯誤な男だ。
放送前トークショーでの話によると、特に1話のモラハラ演技にはかなり力を入れたという。過去にモラハラ被害を受けたことがある人にとっては、見ていて少しキツく、背筋が凍るような瞬間もあるかもしれない。見るときに気を付けてほしいくらいの怪演だ。
茄子田の妻・綾子役は木村多江。茄子田からモラルハラスメントを受けながらも「私は幸せだ」と信じようとしている専業主婦。息子と茄子田の両親と同居しており、家族からも小間使いのように扱われている。
茄子田と一緒に訪れた住宅展示場で、綾子は秀明に出会う。家庭や職場で居場所のなさを感じていた秀明と、家庭に閉じ込められさみしさを感じていた綾子が、恋に落ちてしまう。不倫へ続く2人のタガがひとつ、またひとつと外れていく様子が、危うくなまめかしい。
筆者は1話の試写を観た。
トークショーの際、中谷は今作について「切ないお話ではありますが、ブラックコメディなので、きっと笑って最後までご覧いただけると思う」と述べていた。
不倫、モラハラ、夫婦の崩壊、女性の社会復帰の厳しさ。胸がヒリヒリ痛むようなつらさが襲う中で、右往左往する大人たちの姿。まっとうに生きているように見える大人たちのかっこ悪い姿は、たしかに笑えてきてしまう。
見ててつらい! でも、なんか笑える! テンポ良く与えられる飴と鞭が気持ち良い。
2018年版『金曜日の妻たちへ』を狙っている今作。金曜よる10時の妻たちが、SNSに感想を書きまくる社会現象を起こせるか。まずは一度見てほしい。第1話は今夜10時から。
(むらたえりか)
2018年4月13日(金)よる10時スタート
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系列)
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫)
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
演出:平野俊一、吉田健、松田礼人
編成:高橋正尚
音楽:兼松衆
主題歌:Superfly「Fall」(ワーナーミュージック・ジャパン)