閉店間際のスーパーに行くと、野菜や惣菜など色々な物が値引きして売られている。2割引き、3割引きは当たり前で、中には半額になっているものもある。
買い物上手になったような得意げな気分でつい色々買ってしまうのだが、中でも一番嬉しいのが、普段は手が出ない高い肉類が半額になっているのを見つけた時である。千円ぐらいする分厚いステーキ肉が半額の500円になっているとする。当たり前だが、それを買って帰れば、リーズナブルに肉厚なステーキが味わえるのだ。
半額肉との“偶然の出会い”だけでパーティーはできるのか
「カップラーメンでも買って帰るか」と立ち寄ったスーパーで半額肉を見つけて家で焼いて食べる行為を私は“いきなりステーキ”と呼んでいる。カップ麺で終わりだったはずの晩ごはんが急にステーキになるのだ。もちろん、いつも半額肉が棚に並んでいるとは限らなくて、何もない時もある。偶然の出会い感が楽しい。
その“偶然の出会い”を活かし、半額肉だけで焼肉パーティーをやってみたら楽しいのではないかと思った。私が勝手に設定したルールは以下の通りである。
・スーパーの閉店時間を考慮し、パーティーの開始は24時とする。
・参加者がそれぞれの家や職場の近所のスーパーで半額になっている肉類をその日に購入して持ち寄る。買っていいのは元値の半額以下に値引きされているもののみ。
・野菜類も半額以下であれば購入していい。
どうだろうか。前述した通り、遅い時間にスーパーに行けば必ず値引き商品が並んでいるわけではないので、最悪の場合、誰も肉を入手できずに終わり、ということも考えられる。その時に釣れた魚を焼いて食べるような、偶然に身を任せるドキドキ感を楽しむ会だ。
半額肉の収穫は……
そんな酔狂な企画に参加してくれたのは、大阪のミニコミショップ「シカク」のスタッフや、その常連客のみなさま。左からたけしげさん、ヤマコさん、はやとさんのお三方だ。会場はシカクの2階を使用させていただいた。
ちなみにこの企画の言い出しっぺでありながら、私が近所のスーパーで入手できた半額肉はこれ1点のみ。
「豚トロ」とよばれることも多い豚のネックが半額になっていた。が、残念ながら半額になっている肉はこれだけだった。企画倒れか……と不安を覚えつつとりあえず集合場所へ向かう。
私はホッと胸をなで下ろした。これだけの半額肉が集まったのである!
ありがとうみんな……。
たけしげさんが入手した半額肉はこちら。
・黒毛和牛肩ロース 定価1,476円が738円!
・鹿児島県産黒毛和牛もも焼肉用 定価852円が426円!
・純輝鶏もも肉角切 定価496円が248円!
・米産豚肉ローステキカツ用 定価578円が289円!
・国産豚バラしゃぶしゃぶ用 定価544円が272円!
・焼肉用 北見牛小腸 410円が205円!
・国産若鶏 砂肝 定価223円が112円!
など。
ヤマコさんが入手した半額肉はこちら。
・タスマニアビーフリブロースステーキ用 1,567円が783円!
・京鴨むね肉鍋焼肉用 定価699円が350円!
・九州産黒毛和牛ロース 定価995円が497円!
・枝豆 定価321円が80円!
など。
はやとさんが入手したのは半額肉じゃなくて半額野菜。
・かぼちゃ 定価158円が79円!
・サニーレタス 定価158円が79円!
など。
一人あたり1300円 ふところと胃袋に嬉しいパーティーに
総勢4人で合計額を割り勘すると一人1,300円ほどだ。この金額で色々な肉を食べられる焼肉屋さんはなかなか無いだろう。これぞ半額焼肉の醍醐味だ。また、肉だけじゃなく野菜もあるのが嬉しい。
レタスで肉を巻いて食べることもできる!それにしても、こんな存在感のある分厚い肉が食べられるなんて胸が高鳴る。
時計の針が24時を回った。こんな時間から肉をたらふく食べるという背徳感もまた半額焼肉ならでは。
まずは「鹿児島県産黒毛和牛もも焼肉用」から。元は約100グラムで852円の肉である。
半額肉とはいえ、焼いてしまえば同じ肉。当然だがめちゃくちゃ美味しい!ヤマコさんも至福の表情である。
次は「黒毛和牛肩ロース」。元値は100グラム1,200円の高級肉である。
しゃぶしゃぶ用と書いてあるが構わず豪快に焼く。
こちらもまた、上質な脂の旨みを感じる絶品。
間髪入れずに今度は「タスマニアビーフリブロースステーキ用」を焼く。箸で持ち上げるのが難しいほどの厚みだ。
キッチンバサミで切り分けたものをじっくり焼き上げ、ガーリックチップを乗せて食べてみたところ、口の中が一気に高級ステーキハウスだ。
「すみません!これはもう赤ワインいかせていただきます!」とヤマコさんも慌ててワインを開けるほどの上質な味わい。
こんな風にして次々と肉を食べ続け、しかもどれもが元が高めの価格帯の肉だけあって本当に美味しい。半額になっているということは、少し鮮度が落ちているということはあるのだろうが、そんなことは一切感じぬ旨さである。
参加したメンバーに「半額焼肉」をやってみた感想をたずねてみた。
ヤマコ「一言でいえばナイスパーティでした。ふところと胃袋の両方に嬉しいのが魅力ですね。半額肉を探してまわったスーパーにライバルの“半額ハンター”がいて、無言で駆け引きしたのも面白かったです」
たけしげ「最初は半額の肉なんてそんなに集まるかな?と思ったんですが、探してみると予想以上にたくさんあって驚きました。みんなで持ち寄れば結構集まるし、夜遅くから肉を食べるのが秘密のパーティーみたいで楽しかったです」
はやと「当日に肉を買い集めるって聞いて、『事前に半額の肉を買って冷凍しといて、当日に解凍すりゃあいいじゃん』と思ったんですけどその日に見つかったものを夜中に食べるっていうところにロックを感じました」
最後のはやとさんの発言でハッとした。そうか、事前に買っておいて冷凍しておけばよかったのか……。全然思いつかなかった。「当日に肉を入手して夜遅くに集まるなんてハードルが高い!」という方は、前もって半額肉を手に入れて保存しておいた上でパーティーをしてみるのもいいかもしれない。
ちなみに、参加者のたけしげさんがスーパーで半額肉を買い漁っていると、たまたまそこにテレビ番組のロケ隊が来ており、インタビューを受けたそうである。
(スズキナオ)