あの『るろうに剣心』が連載再開となる。
正確に言えば、一世を風靡した前作の続編。
ジャンプSQ(スクエア)で連載していた『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚・北海道編-』が、6月4日発売の7月号から再開するそうだ。
作者の和月伸宏先生が昨年11月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で警視庁に書類送検されたことを受けて連載休止となっていたが、ついに復活。
前作をリアルタイムで体感していた筆者としては、今後の展開が非常に楽しみでならない。


ジャンプ低迷期をひとりで支えた『るろうに剣心』


さて、ここであらためて前作『るろうに剣心』の偉大さを振り返りたい。

・あらすじ
逆刃刀を腰に下げ、「不殺(ころさず)」を誓う流浪人・緋村剣心。彼こそは、幕末に最強無比の「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客だった。
大切な仲間たちとの出会い、宿敵たちとの戦いを通じて、自身の過去とも向き合う剣心。明治という激動の時代を舞台に、贖罪の旅は続いていく……。

連載が始まったのは、少年ジャンプ94年19号から。
『幽遊白書』『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』(さらに言えば『ジャンプ放送局』も)と看板作品が次々終了し、部数が下降路線に入ってしまった時期のジャンプの屋台骨を支えた功労者である点は、ジャンプ購入歴34年の筆者にとって最大の評価ポイントである。
この作品のブレイクがなければ、ジャンプの低迷はもっと長引いていたに違いない。
97年の『ONE PIECE』登場までは、孤軍奮闘していた印象だ。

ちなみに、『ONE PIECE』の作者、尾田栄一郎先生も『るろうに剣心』のアシスタント出身。
「京都編」に登場する十本刀の鎌足が「オカマの鎌使い」という設定を考えたのは尾田先生だ。当時から、言葉遊びが得意だったようである。


アニメ主題歌はアーティストブレイクの登竜門


ゴールデンタイムにアニメ化され、平均で12.2%、最高で16.0%の視聴率を残した実績も大きいが、その主題歌タイアップが次々成功したことも注目ポイント。
JUDY AND MARY『そばかす』、川本真琴『1/2』、T.M.Revolution『HEART OF SWORD ~夜明け前~』、SIAM SHADE『1/3の純情な感情』など、ブレイクしたアーティストも多数。和月先生もお気に入りの『HEART OF SWORD』(直訳すれば「剣心」)を除けば、原作のイメージとは著しく異なる気もするが、アニメとアーティスト双方がファンを拡大する最高の関係にあった。

ちなみに、L'Arc~en~Cielによる3代目エンディングテーマは、当時のドラマーが覚せい剤取締法違反で逮捕されたことにより、わずか4話分のみでしか使用されていない。これにより、『HEART OF SWORD』が復活した経緯がある。これもあってか、この曲はT.M.Revolutionのシングルの中でも最長のロングセラーとなっている。


『DEATH NOTE』作者も大絶賛!前評判を覆し大ヒット!


『るろうに剣心』北海道編再開へ 「ジャンプで歴史物はウケない」を覆した凄さ
佐藤健主演で実写映画化もされた 画像出典:Amazon.co.jp「るろうに剣心 伝説の最期編 通常版

劇場版アニメも公開され、さらに連載終了後もOVAがシリーズ化するなど、根強いファンに支持される中、2012年&2014年と2度にわたって実写映画化。これにより、漫画ファン以外にも広く知られる作品となったわけだが、この作品の魅力をズバリまとめると、次の評論がピッタリではないか。

「今までの漫画界で描く側が敬遠してきた『剣劇』『明治』というマイナーな時代背景で『史実をベースにする』といういくつかのタブー的要素をあえて詰め込み、さらにちょっと乙女チックな部分も加え、一切の手抜きなしにすべての登場人物のドラマを描ききったとてつもなくすごい作品です」

和月先生が師匠とあがめる小畑健先生(代表作『DEATH NOTE』『ヒカルの碁』など)が、
『るろうに剣心』公式ファンブック『剣心華伝』において、上記のように本作を大絶賛しているのだが、まさにその通り。
実際、和月先生は連載前に編集者から「ジャンプで歴史物はウケない」「明治時代は漫画の題材として難しすぎる」と諭されたそうだが、それを覆す大ヒットに。
コミックス全28巻の発行部数は6,000万部以上。しかも、5年半もの長期連載を作者自身が望む形で完結できたのだから、名実ともに少年漫画誌に残る傑作といえるだろう。

(ラストシリーズ「人誅編」はコアなファンの間では賛否両論あったが……)


『るろうに剣心』は少女漫画だった!?


「ちょっと乙女チックな部分」とあるが、確かに連載初期の絵柄は剣心もかなり可愛げだった。
というのも、和月先生は学生時代、少年誌よりも少女漫画を読んでいたそうで、絵柄は元より、その人物描写の深さにもその影響があったためだ。
当初は「ジャンプ内少女漫画」と揶揄する向きもあったが、際立つ個性は立派な武器。他の漫画に比べて女性ファン比率も高く、少年ジャンプの女性ファン獲得の先駆けとなった功績は非常に大きいのである。


剣心のキャラクターには作者の嫌な部分も反映されていた!?


主人公の剣心には、和月先生が理想とする「強くて優しい」部分と、自分が1番嫌な部分と語る「悩んだり落ち込んだり、ちょっと痛いところを突かれるとすぐ壊れちゃう」性質が投影されているという。
となると、今回の騒動で先生が壊れていないか、いらない心配をしてしまうのだが…。
連載再開する『北海道編』は、前作連載時からあたためていた構想になる。当時は「明るい内容になる」と断言していたが、今後の展開は果たして…。
「人誅編」のような「過去の贖罪」をテーマにした重苦しい話にならないよう、願ってますよ! 和月先生!
(バーグマン田形)
編集部おすすめ