連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第9週「会いたい!」第49回5月28日(月)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

49話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)は正人(中村倫也)とあれよあれよという間に恋仲になる一歩手前のような感じになる。
一方、律(佐藤健)は大学でピアノを弾くロボット(ロボヨ)と出会う。


パフェドン


「半分、青い。」新しい週、第9週は「パフェドン」からはじまった。パフェを鈴愛の前にドン(実際はトンくらいだけど)と置いたのを、脚本家の北川悦吏子がツイッターで「パフェドン」(壁ドンのもじり)と呼んでいて、こういうキャッチーな言葉を考えるのが巧いなあと思った。
「パフェドン」、いいと思う。プテラノドンにも似ていて。

一時期、流行った「フラッシュモブ」というサプライズ。主にプロポーズするときに根回しして周囲が踊りだし、みんなに盛り上げてもらいながら・・・という嬉しいような恥ずかしいような(ほぼほぼ恥ずかしい)やつ。人はなんか気持ちが沸き立つことをいつだって探している。パリピじゃないけど、8、90年代は何かとサプライズができる人がモテた。主に雑誌「ホットドッグプレス」がそれを煽っていた。
この時代に人気脚本家としてドラマを書きはじめた北川悦吏子は「仕掛け」がうまい。
49話は「14番目の月」にやられた。

実際、14番目の月の日だった


鈴愛が正人(中村倫也)にパフェドンされて「あなたがわたしの王子様」と言うと、正人は魔法にかかったように鈴愛のために動き出す。彼女がパフェに飾る花火が欲しいというと、季節外れにもかかわらずどこからか手に入れてくる。この頃ドン・キホーテもまだないからどこで仕入れたのか。
コンビニとかでと言ってたけど倉庫にあったとかいうわけでもないだろうに。

結局、食用花火ではなかったので使えなかったが、不幸中の幸い、いっしょに花火をやる約束をする。部屋に戻って、浮かれ気味に小泉今日子の「木枯らしに抱かれて」をヘビロテしていると、ボクテ(志尊淳)とユーコ(清野菜名)がやってきて女子トークがはじまる。
ボクテはユーミン(荒井由実時代)の「14番目の月」を歌う。
それは、幸せの絶頂の満月よりも、その1日前の14番目の月(待宵月)が好きと物語る。まったくその通りで、絶頂を迎える直前のほうがワクワクする。
この49話が放送された5月28日は、満月の1日前。14番目の月の日だった。
朝ドラではよくその日の出来事に合わせたような内容を描くことがあるけれど、14番目の月合わせってロマンチックでオサレ。ラブストーリーはこういう仕掛で盛り上がる。
「半分、青い。」49話。5月28日は本当に「14番目の月」だった
荒井由実「14番目の月」ユニバーサルミュージック

だがしかし、小泉今日子の楽曲がかかってしまったので、アーティスト・小泉今日子の存在しない「あまちゃん」と「半分、青い。」は別世界らしいのは少し残念。赤坂で鈴鹿ひろ美とニアミスするようなことはないようだ。


はじまるか、塚本晋也劇場


第8週は豊川悦司劇場だったが、またしてもチャーミングなおじさんが現れた。
律の大学の先生・宇佐川(塚本晋也)だ。シン・ゴジラでピンクのタオルを首に巻いてた巨災対のメンバーのひとり。朝ドラ「カーネーション」にも出ていた。
映画監督にして怪優でもある。豊川に続いて怪優の登場だ。これで、鈴愛には秋風(豊川)、律に宇佐川(塚本)という巨大な師匠ができて、鈴愛と律が並んだ感じ。
律は“ロボットは人間の欠けている部分を助けるために開発された”と認識すると、鈴愛の耳のことを思う。
鈴愛は14番目の月状態だけど、律は夢に向かう2番目の月(二日月)くらいではないだろうか。

「チェルノブイリ」というワードが宇佐川から出てきたが、爆発事故があったのは86年。なつかし流行ワードがわんさか出てくる「半分、青い。」だが、バブル以外で、重めの社会的事象が出て来るのは珍しい。昭和天皇崩御もスルーだったし。

(木俣冬)
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