真海「自分の息子と寝ていたと知って、絶望すると思っていたが……。あんな嬉しそうな顔をするとはな。
母親というのは偉大だな」

5月17日(木)放送の木曜劇場モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―(フジテレビ系列)第6話。

神楽清(新井浩文)への復讐のため、モンテ・クリスト・真海(ディーン・フジオカ)は神楽の妻・留美(稲森いずみ)と借金を抱える青年実業家・安堂完治(葉山奨之)を引き合わせた。そして真海は、完治が22年前に捨てられた留美の息子であることを、留美本人に知らせる。
ディーン・フジオカ「モンテ・クリスト伯」母親の偉大さに復讐を忘れた6話
イラスト/Morimori no moRi

ディーン・フジオカ、母の愛が弱点


近親相姦をしていたことを知れば留美が傷付くはずだ、と考えていた真海。その予想は外れ、留美は完治への愛情をさらに深めていく。
そこでの真海の感想が「母親というのは偉大だな」って! 真海が、亡くなった自分の母親・恵(風吹ジュン)を思っていることはわかる。けれど、留美の件で恵を偲ぶことには飛躍を感じる。

まず、真海の予想どおりに留美が絶望したとしたら、神楽にどんなダメージを与えられたというのだろう。
留美が心神喪失状態になったとしても、彼女を愛していない神楽はきっと心配することも取り乱すこともない。これまでどおりに、秘書の牛山(久保田悠来)が後始末をするはずだ。

現実では、留美は息子が生きていたことを喜んだ。そして、親に愛されなかった完治をこれから精一杯愛していこうと決めた。これまで神楽の言いなりだった留美が、清々しい笑顔で「お金ちょうだい」と言う場面が、留美の意思の芽生えを表している。


結果的に、現実のほうが神楽へのダメージが大きかった。お金をくれなければ、神楽が衆議院議員・木島(嶋田久作)に賄賂を渡していたことを世間にバラすというのだ。
自分の駒として動かしていた寺門(渋川清彦)を失い、南条幸男(大倉忠義)はライバル社のCMに出演し、妻も自分に逆らう。すべてが上手くいかない神楽の焦りと苛立ちはすさまじいものだろう。

真海の計画が崩れている。この状況で、母の愛についてしみじみと考えている場合か。真海の目的は復讐なのに。
愛していたすみれ(山本美月)のことは冷たく突き放し死んだことにしているのに、母の愛には心揺らいで人間味を出してしまう真海。ここまで冷酷さを貫いてきたのを見てきただけに、少し落胆してしまった。反面、それほどまでに「母の愛」が重要なテーマであるとも言える。

真海の復讐には、いま3人の母親が関わっている。すみれ、留美、そして入間公平(高橋克典)の妻・瑛理奈(山口紗弥加)だ。

瑛理奈は、息子への愛ゆえに人知れず殺人を犯している。ここで真海が「母親は偉大」と母の愛を肯定的にとらえてしまうと、瑛理奈の殺人まで肯定しなければいけなくなる。愛情をもってやっていいこととダメなことのラインは、いったいどこに引くのだろう。

1話に立ち返り、柴門暖だったころの真海とすみれが「愛は勝つ」と言っていたことを思い出す。彼の復讐物語において、このまま母の愛を勝たせ続けることは良いことなのか。
心揺さぶられている様子を見ると、母親が真海の弱点だとわかる。出口(尾上寛之)や寺門などの死人を出しておきながら、母の愛に屈して復讐をやめましたという軟化した結末だったら、ちょっとがっかりしてしまいそうで心配だ。

芝居がかった表現は何のためか


留美が息子と寝たことをスルーしたことや、淡々と復讐をしてきた真海が突然「母親の愛って偉大だなあ」としみじみし出したこと。その他にも、今回は特に「えーっ!」と面食らうシーンが多かった。

たとえば、完治が借金の取り立てを受け、マジックペンで身体に直接臓器の場所を書かれている場面。ガキに貸した数百万円でそこまでする? と驚くし、過去に何度も見逃してもらっているはずなのに完治の怖がり方がすごい。
それから、強盗中に寺門が留美を手籠めにしようとする場面。
逮捕歴のある寺門が、現場に体液などの証拠が残ることをわざわざするのが不思議。彼がそれほどのバカで目先の欲を我慢できない、という意味の演出という可能性もあるけれど……。

演技も、悪い奴が女を手籠めにしたがるという表現なども、意図的だと思うがやけに芝居がかっている。
これまで、ただただ素直に真海の復讐に魅了されていた。けれど、ドラマのほうから「そんなに素直に見てちゃダメだよ」と忠告してきたように感じた。復讐の意味が問われるクライマックスに向けて、『モンテ・クリスト伯』をどのように見ていくか改めて考えていきたい。

第7話では、いよいよ真海からすべてを奪うきっかけとなった幸男への復讐がおこなわれる。今夜10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

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木曜劇場モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―(フジテレビ系列)
原作:アレクサンドル・デュマ(仏)『モンテ・クリスト伯』(1841年)
脚本:黒岩勉
音楽:眞鍋昭大
主題歌:DEAN FUJIOKA 『Echo』(A-Sketch)
プロデュース:太田大、荒井俊雄
演出:西谷弘
制作・著作:フジテレビ
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