
芸人がブレイクする最短ルートのひとつに「リズムネタ」がある。
キャッチーなリズム&印象的なフレーズでショートギャクを連発するスタイルは、非常に耳に残りやすく、マネもしやすい。
しかし、その分飽きられるのも早いから、ブームが去れば一気に過去の人なんてことも……。芸人にとって、ある意味“禁断の果実”なのだ。
その果実に手を出し、リズムネタの恐ろしさを身を持って体感したコンビの筆頭が藤崎マーケット。タンクトップ姿で「ラララライ♪ ラララライ♪」のリズムに乗ってエクササイズする「ラララライ体操」。このネタをご記憶の方は多いはずだ。
リズムネタブームと「ビリーズブートキャンプ」ブームの相乗効果でブレイク
「ラララライ体操」でブレイクした藤崎マーケットは、ツッコミの田崎佑一さんとボケのトキさんのコンビ。それぞれ別のコンビやソロを経て2005年10月に結成したのだが、ブレイクはそれから間もない2007~8年にかけて。まさに、リズムネタで一気にスターダムに駆け上がっている。
ブレイクのきっかけは、フジテレビ系『爆笑レッドカーペット』にあった。
1分前後のショートネタを披露する番組コンセプトには、インパクトある瞬間芸が有利。リズムネタはピッタリの相性であり、「ラララライ体操」がズバッとハマったのは必然だったのかも知れない。
そして、日本テレビ系『エンタの神様』への出演がブレイクに拍車をかける。
こちらの方が歴史が長く、ネタのメイン部分のみを重視する番組の元祖的存在。オリエンタルラジオが「武勇伝」で大ブレイクしたこともあり、リズムネタは番組の代名詞となっていた。その流れに「ラララライ体操」も乗っかったのである。
(ちなみに、07年最大のブレイク芸人は同じくリズムネタの小島よしおさん)
また、当時はアメリカ直輸入のエクササイズプログラム「ビリーズブートキャンプ」が大ブーム。ビリー隊長の激しい動きとキャラクターがバラエティでパロディのネタになることも多かった。その流れが「ラララライ体操」のブームの下地となったとも言えそうだ。
「ラララライの人たち」のコンビ名って何だっけ!?
メディア出演ラッシュが続く中、藤崎マーケットが番組で披露するネタは「ラララライ体操」一本槍だった。
実は、藤崎マーケットの2人は他の持ちネタやトークを披露することもあったようだが、オンエアではカットが通例。視聴者が望むのは「いつものあのネタ」だと、新たなチャレンジよりも手堅さが優先されたわけである。
しかし、いつ見ても代わり映えしないネタに視聴者は食傷気味になり、徐々に露出が減少する皮肉。
おまけに、コンビ名よりも圧倒的に「ラララライ体操」の認知度が上回ってしまったため、ブームが去った後に普通の格好で番組出演しても、ほとんどの視聴者がピンとこない悲劇。結果、一発屋芸人まっしぐらである。
実は漫才、コントともに実力派なのだが、あまりにも「ラララライ体操」のイメージが強すぎて、いまだに「ラララライの人」扱いなのが切ない……。
ガンが発覚、全貯金を失う……ドン底からの巻き返しなるか!?
昨年には、結婚したばかりの田崎佑一さんに腎臓がんが発覚。
今年の頭には、トキさんが仮想通貨取引所「Coincheck(コインチェック)」から約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した事件の被害に遭ってしまい、全貯金を失うなど、大きな話題は揃ってマイナス方面。
田崎さんの手術は無事成功し、経過は良好。トキさんも投資額の7~8割くらいは返金されたそうで、とりあえずはひと安心といったところ。
大阪での人気・知名度は安定しているだけに、今後再び全国的な活躍を見せるか注目である。
「ラララライ体操」を封印! リズムネタの撲滅を訴える!?
2014年から15年にかけて、8.6秒バズーカー、バンビーノなど、次々と若手リズムネタ芸人が台頭したことにより、再びリズムネタがブームになったのは記憶に新しいのではないか。
その流れに、藤崎マーケットも乗っかったのだが、その絡み方がユニークだった。なんと、「リズムネタ撲滅運動」を展開したのだ。
あえて「ラララライ体操」の封印を宣言し、リズムネタで天国と地獄を味わった自身の経験を踏まえ、撲滅を訴える冊子まで自作。前述の若手芸人らに配布したことで話題になったのである。
転んでもただでは起きない芸人の鑑。ある意味、究極の自虐ネタといえよう。
オリエンタルラジオの再ブレイクを受け「ラララライ体操」を解禁!
しかし、その後オリエンタルラジオが「PERFECT HUMAN」で再び脚光を浴びたのを目の当たりにし、リズムネタ撲滅運動をあっさり終息。
トキさんは「どんどんやっていきますよ、リズムネタ。
リズムネタへの複雑な思いをのぞかせるエピソードであるが、実は、その前にも後にも「今回でラララライ体操を封印」と何度も宣言しており、どこまで本気かは不明だったりする。
しかし、「封印」と「復活」を繰り返し、そのたびにメディアに取り上げられているのだから、もはやこのやり取りさえも持ちネタのひとつとなっている印象。
とりあえず、芸人としてのしぶとさ、タフさは人一倍のようである。
(バーグマン田形)