第10週「息がしたい!」第56回6月5日(火)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平
56話はこんな話
イタリアンレストランのお食事券をもらった晴(松雪泰子)。岐阜に帰る前に立ち寄ろうと鈴愛(永野芽郁)
を誘うが、その日は正人(中村倫也)と会う約束が。
仕事と嘘をついてデートに向かった鈴愛だが、やっぱり晴のことが気になってレストランに向かうと、そこには律(佐藤健)がいた。
和食、イタリアン、中華
食べ物回。
朝、昼、夜・・・3食登場(正確には夜の現物は出てこない)+ソフトクリーム。
朝は、鈴愛と晴がふたりで食べるご飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼き。
昼は、晴が律につきあってもらってふたりで食べる 青山のイタリアンレストランの カプレーゼやうにとキャビアのパスタやティラミス。
夜は、鈴愛と正人がふたりで中華。
その情報量で朝から満腹だった。
今日のランチはイタリアン、夜は中華にしようかな〜などと思った人もいたのではないだろうか。
風吹ジュン大活躍
鈴愛は、正人との約束を断りたくなくて晴に仕事と嘘をついたものの、心配になってデートに身が入らない。
正人は鈴愛の様子がおかしいことに気づいて話を聞き、晴のところに行こうと促す。
ふたりでレストランにやってくると、晴の前の席には律がいた。
たまたまカーテンの件で電話をして誘われたのだ。
優しい律くんは当然晴さんにつきあう。
このくだりはほぼナレーション〈風吹ジュン〉の語りで聞かせる、時短戦略か。
しかも、レストランご招待はじつは秋風(豊川悦司)が裏で仕掛けていたらしいことがわかる。
店に電話して「青天井でごちそうしてさしあげて」と頼んでいるところが映し出された。
心の真ん中を語らない律
この日は、清(古畑星夏)とは会わないのかしら。あれだけベタベタしていたら、四六時中、会っていそうな気がするが。まあでもいくらお坊ちゃんの律でも、オサレなイタ飯屋でランチはラッキーだったろう。今度、清を連れてこようかなと思っていたかも。
正人がやってきて、感じいい彼氏ふうに振る舞っているのをじっと見ている律。
晴の荷物をもって新幹線乗り場まで見送る役割は正人が担う。
ぼーっと自室に帰って来て、亀に餌をやりながら、
「フランソワ おまえ成長しんなあ
いや、成長しきった大人?」
とぼんやりつぶやく。
そこへ電話。鈴愛に一緒に夕飯食べないかと誘われるが「いいよ」と断る。そりゃそうだ。
「そっか」とあっさり電話を切る鈴愛。
31話で律が「心の真ん中を語らない」と言われていたが、ほんとうに彼の心情はわからない。
なんでいつでもそんなに浮かない顔をしているのか。
「フランソワ おまえ成長しんなあ
いや、成長しきった大人?」
鈴愛が恋をしているのを見て、また鈴愛が先に進んだと思っているのか。清とラブラブで、肉体的接触も行っていて、下世話な想像だがすでにご卒業しているんじゃないだろうか。なののなぜ。肉体的な面では大人になってもなんか違う、その迷いが人間の背負った業だ。
成長しないのも、成長しきって止まってしまうのも、どっちも停滞。「死んでるみたいに生きたくない」というワードが浮かんだ。といえば80年代に発表された渡辺美里の歌。

「死んでるみたいに生きたくない」
意地悪だね
中華をたらふく食べて、イルカ公園で(ちなみに、北川悦吏子作「運命に、似た恋」での斎藤工のデザイン事務所は「オフィスイルカ」)まったりする鈴愛と正人。
「律もくればよかったのにね」と正人が言い、「意地悪だね」と鈴愛。
55話では、清が律に「君、意地悪だね」と言っていた。
これは律と清、鈴愛と正人をあえて反復させているのだろうか。
鈴愛は「この手が勝手に 離れたくないって」と正人の袖口をつかむ(このために衣裳は長袖カーディガンでないといけなかったのか)。
そして「正人くん 好きです」
こういうドキドキ、生きてる実感ありますねえ。
まあ、朝起きていちばんに見るものかっていうとちょっとよくわからないが、毎日毎日これってわけではなく、今週だけだと思うので、いいんじゃないだろうか。
鈴愛と律が生きてる実感を探している最中を描いているのだと思う。
(木俣冬)