
「壁を壊す」。レゲエパンクバンドSiM主催のフェス『DEAD POP FESTiVAL』は、初開催以来このコンセプトのもと過去9度開催されてきた。
初の両日ソールドアウトとなった今回の同フェス。各々ジャンルやカテゴリー、イメージや偏見の壁を見事に壊していく名場面と幾度も遭遇することができた。観測史上稀な早期梅雨明けとなり、夏突入の好天のなか行われたこの熱闘。その模様の幾つかをピックアップし、お贈りしたい。
SUPER BEAVER

去年はCHAOS STAGEでの出演だったSUPER BEAVER。今年の彼らはメインとも言えるこのCAVE STAGEのトップバッターを飾った。その持ち前の信念と信憑性を歌やサウンドに変えて放った彼ら。貫き通すべき強い信念の必要を、この日のステージ上の4人は各曲を通し集まった多くの人の前で体現してくれた。
まずはオーディエンスのクラップとともに「美しい日」で幕を開けたこの日。同曲の歌物語に会場中が自分にとっての尊きものへと想いを馳せていく。
中盤のMCではボーカル渋谷が『ライヴハウスから来たSUPER BEAVERです』と出自を誇示。『次はSiMとライヴハウスという自分たちの主戦場で共演したい』とアライアンスを交わす。また、みなを終始バウンスさせた「正攻法」、“好きなことを大切にして欲しい!”との願いを込めて放たれた「秘密」では、会場の雄々しいレスポンスが勇気と活力を分け与え、ラストは「ありがとう」が、集まった人々各々の伝えなくてはならない大切な言葉を代弁してくれた。
岡崎体育

このフェス唯一、一人だけでステージに臨んだ岡崎体育。しかし、いつもながらそこにはポツンとした感じや寂しさ、物足りなさは皆無。それこそが彼の放つバイタリティや気持ちの繋がり、そして、どこか保持している男としての信頼感に他ならない。そしてこの日も終始、和やかで親しみやすいながらも秘めた想いの数々が各曲から溢れ出ていくように放たれた。
会場の鬱憤を踏み潰すべく場内にバウンスとストンプの嵐を巻き起こした「stamp」「R.S.P」に続き、通称「世界一安全なウォールオブデス」こと「Walk Of Death」が準備されたモーゼの十戒のなか、しめやかに行われる。また、「感情のピクセル」時には、「いつも独りで寂しい」と語る岡崎に、なんとSiMの演奏陣がエアバンドとしてバックを務める場面も。また、パペット人形のペックとともに贈られた「FRIENDS」では、コミカルさの中に一抹の切なさを織り交ぜ場内を感心させ、ラスト2曲は<限界突破!>と言わんばかりにアッパーな「XXL」、「The Abyss」が、1人対約10000人だった体勢を、気づけば約10001人の共同体化させている光景と出会わせてくれた。
MAN WITH A MISSION

3年ぶりの同フェス出場のMAN WITH A MISSION。SEとともに彼らがCAVE STAGEに登場すると一斉にバンドのロゴが描かれたマフラータオルが歓迎の意味も込め場内中で掲げられる。
1曲目は会場全体をバウンスさせた「Hey Now」。
『暑イノハ、気温デハナク、アナタタチノホウデス。ナンタッテ日本一クレイジータチガ集マルフェスデスカラ』とMC。中間部では一度若干クールダウン。「Take me under」が哀しみを超えての走り出しを伝えれば、ラウドさとポップさ、そしてキャッチーさといった彼らの真骨頂が炸裂した「database」、切ないメロディがそのスケール感と共に広い会場の隅々にまで響いた「Emotions」では、場内の大合唱が楽曲の完成へと導いていった。『アナタタチノヨウナ(クレイジーナ)輩(ヤカラ)ガ、今後モ、コノフェスヲ支エテ欲シイ』との言葉が新曲「Winding Road」と共に贈られ、ラストは「Raise your flag」が場内を嵐のように駆け巡っていった。
ONE OK ROCK

過去2回は、どうしてもスケジュールが合わず断念。三度目の正直が叶い実現した、今回のDEAD POP FEST.への参加。それも手伝い、ONE OK ROCKのライヴ前は、観客からも緊張の雰囲気が漂っていた。メンバーが登場すると、各所から嬌声に近い歓声が場内に轟く。ワンオクの東京ドーム公演で、MAH(SiM)、Masato(coldrain)、Koie(Crossfaith)による「Skyfall」を観て以来、彼らをまた同じステージで観れる日(といってもタイムテーブルは別だが)を待ち望んでいた。生憎、Koieは海外だったが(MAH談)……。
『やっと出れたぜ、デッドポップ! 声を聞かせてくれー!』とTakaの掛け声とともに「Taking Off」から勢いよくライヴがスタート。待ってました、といわんばかりにジャンプする観客の盛り上がりで会場が大きく揺れる。会場中から起こる割れるようなクラップ音で始まったライヴの定番曲「Deeper Deeper」では、観客はここぞと言わんばかりに手を高く掲げる。MCではNIRVANAの緑色のシャツを着てきたTaka(Vo.)が、MAHとの想い出を語るシーンも。SiMの前身のバンド・Silence iz MineのオマージュでもあったNIRVANA。出会った頃のTakaとMAHは“バチバチ”対立していたという。だが、多くの時間を重ね、いまや同志とも言える仲となった。その当時にMAHがよく着ていた緑色、そして彼がお気に入りだったバンドが描かれたシャツを今日はTakaが着て、SiMが創り上げたDEAD POP FEST.のステージでライヴを行っている。そのTakaのMCや佇まいからは、彼らの関係性の深さや敬意の表しを改めて感じることができた。
黄昏時、夕陽がステージに射し込むなか届けられた「We are」。伸びるTakaの歌声にオーディエンスのシンガロングが重なり、会場中に響き渡る様子はまさに圧巻。この日のハイライトを作り出した。
SiM

気づけばすっかりと夕闇が周りを支配。海側の工場地帯の近未来な夜景も美しく幻想的だ。そんななか現れたのがトリのSiMであった。振り返るとこの2Daysは、比較的ラガ度が高め。それはあたかも『俺たちはレゲエパンクバンドだ!』との誇示の如く。叫びと哀しみの入り混じった「A」を皮切りに、「Amy」ではドライブ感が場内に寄与され、次の「Faster Then The Clock」では数多くのサークルモッシュが形成されていった。
『よくぞ最後まで生き残っててくれました。俺たちがきっちりズバッととどめを刺すから!!』とボーカルのMAH。「GUNSHOTS」では、ポップラガに乗り場内もモンキーダンス。

アンコールでは「Blah Blah Blah」でのラテンポップ部での場内のバウンスが会場の一体感を促進すれば、ラストの「f.a.i.t.h」では、ONE OK ROCKのTAKA、coldrainのMasatoも登場。巨大なウォールオブデスやサークルモッシュを生むと同時に3人のシャウトが場内を席巻。一日目をキッチリと締めた。

取材・文/池田スカオ和宏、日野綾
DEAD POP FESTiVAL 2018 2日目のライヴレポートはこちら
■「DEAD POP FESTiVAL 2018」公式サイト