連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第15週「すがりたい!」第89回 7月13日(金)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:橋爪紳一朗

89話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)は涼次(間宮祥太朗)のマンションをはじめて訪ねる。そこには元住吉(斎藤工)がいて・・・。


気が変わらないうちに結婚したい


鈴愛が結婚すると聞いて晴(松雪泰子)は喜び、宇太郎(滝藤賢一)は心配し、仙吉(中村雅俊)は「楽しみや〜」とお煎餅をかじる。
「これから悪い人と結婚するって親に報告する娘がどこにおる」(宇太郎)とはけだし正論。

鈴愛の結婚騒動を機に、岐阜の楡野家もにわかににぎやかに。
宇太郎は、かつて晴が高望みして婚期が遅れたのを自分がもらってやったと言い出す。ドラマの最初のほうで相思相愛仲良しって感じだったのに、真相はこっちなのか。とかくこの世はこんなものかもしれない。

鈴愛が結婚を決めたのも、“家に風呂のない生活に疲れたから”。大変リアルである。“恋”とか“愛”とかいう前に“生活”が第一だ。
田辺に大丈夫?と聞かれて「愛があるから(大丈夫)というときの鈴愛の目は恋して輝いている感じに見えない。
鈴愛が身も蓋もないわけでもないように思えるのがこの台詞。
「気が変わらないうちに」
涼ちゃんの気が変わらないうちに。そして私の気も、と鈴愛は言う。

律(佐藤健)の気が変わってしまったことがトラウマになっているのだろう。でも「無理」と言ったうえ4年もほったらかしじゃ気を変えるしかないと鈴愛には気づいていただきたい。

割り込むように結婚したい


鈴愛の結婚に“便乗”して、“その勢いに乗って“サッと割り込むように”結婚したいと、そっと仙吉にだけ話す草太(上村海成)。寝耳に水とはこのこと。しかも、相手は10歳上のバツイチ子持ち。
重大な秘密を明かされた仙吉は「なんでおれに言うの」となるが、戦争の重い話を語り継いだのだから、孫の重い秘密も聞くべきってことか。持ちつ持たれつ。
ここへ来て仙吉がちびまる子ちゃんの友蔵みたいになってきた気がする。このままちびまる子路線でもいいかも。

嶋田久作と斎藤工


鈴愛は好きな人とそうでもない人に極端に接し方が変わるフシがある。
涼次にはメロメロだが、店長・田辺には「顔がこわい」、元住吉には「変な名前」とか平気で失礼な物言いをする。立場が上の人、年齢が上の人とか関係なく、誰に対しても対等な精神の現れであろうとはさすがに思えない。
田辺は忙しい時に美女と「失楽園」ごっこ(?)をしていたらしいので、彼を立てる必要もないが、元住吉はいまのところ愛想悪く振る舞う理由がない。
涼次を自分の部屋に居候させてあげている、未来の夫の恩人である。

嶋田久作がドリカム歌うとか、斎藤工が鈴愛の前でちょっとかっこつけている仕草とか楽しめた。
「半分、青い。」89話。鈴愛も弟・草太も、にわかに結婚話が盛り上がる
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先週まで鈴愛のヘヴィーな話が続いたので、これくらいライトで見終わったあととりたてて何も残らない感じの回があってもいい・・・のかな。ドラマ自体もちょっとお休み中といったところか。

「失楽園」にちなんだ鴨とクレソン鍋の説明(風吹ジュンのナレーション)後、すでに視聴者は知っている涼次が三おばの身内だった説明を田辺が鈴愛に説明済みになっているところは手際の良さを感じた。

「失楽園」とは1997年、日本テレビ系(制作はよみうりテレビ)で放映され、古谷一行と川島なお美の濃密なラブシーンに話題集中、最終回の視聴率は27.3%と高かった。原作は渡辺淳一の小説。映画化もされ、「失楽園」ブームが巻き起こった。
不倫はけしからんという現代では嘘のようだが、20世紀、不倫ものはエンタメの人気ジャンルだった。現実ではいけないことだからフィクションで楽しむ線引ができていたのに、いまはフィクションでもNGみたいな風潮はなぜなのだろう。
ちなみに、97年、ほかのドラマにはどういうものがあったかというと、野沢尚脚本、豊川悦司主演の「青い鳥」(鈴木杏が超美少女!)、草なぎ剛主演、人気漫画のドラマ化「いいひと。」、刑事ドラマのレジェンド「踊る大捜査線」、木村拓哉主演の「ギフト」、岡田惠和脚本、反町隆史、竹野内豊の「ビーチボーイズ」、堤幸彦監督、KinKi Kids主演「ぼくらの勇気 未満都市」、雛形あきこの「ストーカー・誘う女」などなどドラマ豊作の年といえるだろう。
北川悦吏子作品は、中居正広、常盤貴子主演で「最後の恋」。
第一話のサブタイトルはなんと「売春」・・・。不倫、ストーカー・・・なんでもありの時代だった・・・。
(木俣冬)
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