連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第19週「泣きたい!」第114回 8月11日(土)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:橋爪紳一朗
「半分、青い。」114話、佐藤健が「あしたのジョー」を音読「るろうに剣心」もしてほしかった
「半分、青い。 下」文春文庫 北川 悦吏子
ノベライズ 

114話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)はつくし食堂二号店を作り、おじいちゃん仙吉(中村雅俊)の五平餅を売ると言い出す。

「あんたの37年間はすべてが思いつきや」


鈴愛は二号店の資金に晴(松雪泰子)の貯金を当てにしていたため、晴が怒り出し、食堂が営業中にもかかわらず、居間で急遽家族会議が行われる。
みんなを居間に向かわせるのは律。
淡々としたその仕切り方は長年、楡野家を見てよくわかっているからこそ。
「あの親子は電光石火 瞬間湯沸かし器だ。ちょっと後からとか様子を見るとかないから」
これは快言とでも言いたい台詞だった。

そして、家族会議。
貯金は草太が発明したカツ丼によってできたもの。
「あんたの37年間はすべてが思いつきや」と晴は怒るが、意外や鈴愛はすでに店舗になる物件も探していた。
高校のそばにあった売店が閉店していま空いているという。そこを使って仙吉の五平餅を鈴愛が引き継いで売ると言う。

だが晴は貯金で世界一周(はできないけど豪華客船で船旅する)するつもりだった。

力石・・・


楡野家が家族会議に入ってしまったので、取り残されたカンちゃん(山崎莉里那)のお守りを律がしている。
「あしたのジョー」の読み聞かせ。「この手で力石を殺してしまった」という名場面。絞り出すような声で「力石・・・」と発する佐藤健。
「あしたのジョー」も良いけれど時代的には「るろうに剣心」を音読してほしかったなー。

帰りがけ、律は鈴愛に、本棚に鈴愛の漫画が置いてないと言う。
「昔漫画家だったんですっていやなんだよ」と答える鈴愛。だからカンちゃんもママが漫画家だったことを知らない。
「律はこういうときいつも言葉少なで人の心に踏み込んでこない。まちがわない。そういうとこが好ましいと思ったり寂しいと思ったり・・・」
鈴愛がウィスパーボイスでモノローグ。こういう声は聞きやすいが喋り言葉でこれは難しいから、稀にモノローグで出すと効果的。おばちゃんのナレーションで語らないのが珍しく、よけいにドキリとなる。

宇太郎・・・


晴が昔を蒸し返して、鈴愛が自分のことを「宇宙猿人ゴア」に例えたと言うと「宇宙猿人はゴリ ゴアはマグマ大使の宿敵や」と正したり、仙吉が「80むにゃむにゃ」と年齢をごまかすと「なんで家族のなかでさばよむ」とツッコんだり、ほかの人がしゃべっているとき、相変わらず鮮やかな表情の変化を見せている宇太郎(滝藤賢一)が、ついに自己主張をした。

鈴愛の二号店を、子供の頃からの夢である、石ノ森章太郎先生の漫画「ドンキッコ」に出てくる電車の住居のような店にしたいと言い出す宇太郎。
かたまる家族たちをよそ目に、ペラペラと「ちんちん電車に住みたかった」と語る。


晴のことを大事にしているはずの宇太郎がなぜ、晴を傷つけるような迂闊なことを言ってしまったのか。
もしかして、カンちゃんが漫画の読み聞かせを宇太郎より「律がいい」と言ったことがショックだったのではないか。悲しくなって自分が集めた漫画の棚を眺めていたら、子どものときの夢が甦ってきて・・・という感じなのかなと。

世界旅行の夢を夫に砕かれた晴は「ちんちん ちんちん煩い」「馬鹿なの いい年して馬鹿なの」「私はもうつきあいきれませんので長い間どうもお世話になりました」とキレる。
ヒトは皆、孫や娘や夫が自分のことを考えてくれてないと思うと寂しくてたまらないものなのだ。

ことの発端は鈴愛の二号店計画。
鈴愛が37歳にもなって、母にもなって、なお自立せず(離婚したから仕方ないともいえる)、実家に寄生しまくっていることに眉をしかめる視聴者もいるようで、それもごもっとも。朝ドラの視聴者には、教養と常識のある勤勉なヒトが多いのだと思う。
ただ、40歳過ぎて自宅暮らし(結婚も働いてもいない)の人たちだっている世の中、家のことをなんにもしないヒトだって、親や祖父母の残したお金で生きている人だっている。その人たちを否定することを誰ができるだろうか。
20週の予告を見ると、イベント盛りだくさん。SNSが沸くこと必至だろう。


ちなみに、「ドンキッコ」のアニメと「マグマ大使」の実写版は制作会社共にピープロ(現在はエヴァンゲリオンでお馴染みの制作会社カラーが作品管理している)であるところが共通点である。
(木俣冬)
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