連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第21週「生きたい!」第124回 8月23日(木)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:橋爪國臣 田中健二
「半分、青い。」124話。原田知世が岐阜犬の声をやる
「佐藤健 in 半分、青い。」東京ニュース通信社
律くんに特化した写真集が9月5日発売

佐藤健 in 半分、青い。


124話はこんな話


鈴愛(永野芽郁)のつくった岐阜犬の声を担当することになった和子(原田知世)は、自宅からの遠隔操作によって、センキチカフェに訪れたお客さんの悩みに回答をはじめる。

岐阜犬に語られる!


金八先生のものまねをしながらちょっといいことを語りたがる和子の性分を生かしてはじまった岐阜犬(和子)の悩み相談。
ボイスチェンジャーで声を変える方式は、「チコちゃんに叱られる!」で5歳のチコちゃんの声を木村祐一が演じていることと同じ。
頭が丸くて大きな岐阜犬とチコちゃんの大きな頭もなんとなくかぶる(たぶんNHKの美術スタッフのすばらしいお仕事)。

ひとりぽっちの女の子、健人に恋したらしき娘・麗子を心配する西園寺の奥さん(広岡由里子)などなど・・・。
ヒトの悩みに答えて役に立つことで和子さんの体調は絶好調。
このまま治ってしまうことは・・・と律(佐藤健)は期待するが、キミカ先生(余貴美子)、そこは曖昧にする。

律くん見とると悲しなる


キミカ先生は「律くん見とると悲しなる」「あんまりきれいで悲しなる 心もきっときれいや」と言う。
律くんはウィスパーボイスと相変わらずの虚ろな瞳をしている。
その風情は、「半分、青い。」最上のロケ場所・川で佇んでいるとき、抜群に発揮された。自然光、最高。
123話の走りも抜けのいい河原なんかが良かったなあと思うが、閉ざされたふくろう街というところに意味があるのかもしれず・・・。

124話を見ていて感じたのは、このドラマは弱い人たちだらけで、でも寄り添って助け合って生きている麗しさ。
最も近い都市・名古屋に出るのに電車で往復5時間かかってしまうようなところにある街、片耳が聴こえないヒロインは都会で仕事に挫折して、離婚して地元に戻って来る。

自分の良さを生かせない気の弱い男は結婚生活がうまくいかず、大事な母の病に苦しむ。

せっかく街一番、きれいな顔をして生まれてきて、頭もよかったにもかかわらず、生来の気の弱さからか自分の良さを発揮できない不遇な律。
そんな彼が鈴愛に「マグマ大使」の役割をもらってやりがいを感じる。
和子の岐阜犬といい律のマグマ大使といい、鈴愛はやりがいを与える天才なのかも。

こんなふうに何かと生き辛さを抱えながらも生きていく中で、楽しいことだってある。それがたとえ傍から見て取るに足らないことであっても当人には大事なことだ。
それはたとえば鈴愛が子どもの頃、クッキーに乗った赤いアンゼリカを赤いダイヤと勘違いして愛おしむようなことにも似ている。和子さんは赤いのはルビーだ、間違っていると否定することをせず、そういう鈴愛を微笑んで見守ってきた。大人になった鈴愛はいつの間にか赤い宝石はルビーとわかる。
その人特有のものの見方や感性をとことん大事にする、「半分、青い。」は一貫してそれを描いている。

律くんの記録


和子さんは、生まれたときから上京するまでの律くんの記録を鈴愛に託す。自分が死んだらこれを律に渡してほしいと。
本当なら嫁のより子(石橋静河)に渡すべきなのかもしれないが、鈴愛と律は互いの弱さを補い合う半身のようなものだから、やっぱり鈴愛に託したのだと思う。上京するまでの律を知っているのは鈴愛だから。
「私が死んだら」と口に出したあと、かすかに「し」と唇に指を触れる原田知世が印象的。
あと、家族写真。谷原章介の律が高村佳偉人のときと佐藤健のときで年齢の違いを感じさせる立ち方が鮮やかだった。モデルもやっていたヒトだから立ち方のバリエーションたくさん持っていそう。
(木俣冬)
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