
先日、Twitterで「結婚新生活支援事業」が話題となった。あまり知られていないからこそ、同制度を紹介するツイートが一気に注目されたわけだが、使えるものなら使いたいと思った人もいるだろう。
結婚新生活支援事業とはどんな制度?
内閣府のサイトを見ると、この事業は「地域少子化対策重点推進事業」のひとつで、「結婚新生活支援事業」という名前で、2016年に結婚に伴う経済的負担を軽減する目的で支給が始まった。主に、新婚生活のスタートアップにかかる新居などの準備などを支援するという目的のようだ。利用するには、年齢制限、年収制限もあり、少子化対策の一環ともされている。健康保険で支給されていた「結婚手当金」がなくなり、結婚による手当が少なくなっている今、非常に助かる収入になるはずだ。
●利用できる人
・対象世帯:夫婦ともに婚姻日の年齢が34歳以下かつ世帯所得340万円未満(税込み年収で約530万円ほど)
ただし、奨学金の返還額は所得から控除する
結婚を機に妻が仕事をやめていれば、妻の収入は0円で申請できる自治体が多い。
・補助の対象:婚姻にともなう住宅取得費、住宅賃貸費用、引っ越し費用
・上限額:1世帯30万円まで
そのほか、自治体によって細かな条件がある(自治体に転入してきたことが必要だったり、住居の条件があったり)ため、その要件を満たす必要がある。また、申し込み可能期間も自治体によって異なるので、利用を考えるのであれば、自治体に確認が必要だ。
今のところ、すべての自治体で利用できるわけではない。日本には1724の市町村があるが、2016年に実施した自治体は全国に130、2017年は234、今年(2018年)は今のところ257市区町村と、徐々に増えてきている状況だ。J-CASTニュースによると、東京都内、福井県、佐賀県など、まだ実施していない自治体もあるが、今後始まる可能性もあるので、様子をうかがっておきたい。
結婚資金は平均600万円 若者は「補助支援」を希望している
近年は晩婚化が進み、家計相談の場面でも、子どもが定年間近、もしくは定年後に大学に進学するが教育費はどうしたらよいかとか、教育費でお金がなくなってしまったが、今後収入の見込みもない、老後生活はどうしたらよいかなどと相談に来るご夫婦がかなり多い。
こうならないように、若い年齢で結婚されることには賛成なのだが、現在は結婚するにも不安になる社会的・経済的背景が多く、それをクリアするにはある程度年齢も必要であるようだ。20~30代の若者に「結婚をするときに行政にしてほしい取り組み」を内閣府が調査したところ、
(1)安定した雇用機会の提供
(2)夫婦ともに働き続けられる職場環境の充実
(3)結婚や住宅に対する資金貸与や補助支援
(4)結婚したほうが有利となるような税制や社会保障
などが挙がり、収入に対しても不安が大きいことが分かる。
その不安軽減のために、同事業は(3)の要望に答えた形となっている。

実際、ゼクシィの調査によると、結婚資金は結婚式から新居準備まで含め、約600万円が平均という結果。結婚式だけでも300万円はかかる見込みだ。親の援助やご祝儀などもあるだろうが、半額ほどは自己負担となると考えておいたほうがよいだろう。
その中で、住居の敷金礼金、引っ越し費用の一部に充てられるお金が支給されることは大きいもの。一時的に立て替え払いとはなるが、結婚で資金がすべてなくなるか、あとから多少戻り、今後の生活資金にしていけるかの違いは、安定した生活を目指すのなら大きいのだ。
結婚新生活支援事業による補助は新居に関するものであるから、その部分の資金を少なく見積もれるとなれば、負担感は少なくなる。
再婚でも使える
利用対象となるには各自治体が定めるさまざまな条件をクリアしなくてはならないが、クリアできた状態であれば、再婚の場合でも利用できる。夫婦どちらかが過去に利用していた場合は利用できないが、再婚だからと諦めることはない。
人の生き方としては、結婚が遅い、子どもを産む年齢が遅いということは悪いことではない。仕事を頑張るなどしていることで、大きな業績を残せるかもしれないし、社会的地位を手に入れられるかもしれない。だが、晩婚に加え、晩産になってしまったら、教育費と老後資金の板挟みとなり、老後の資金繰りは非常に大変になってくる。これは家計相談を受ける立場からいうと、間違いない。
結婚は相手あってのことだし、時期を図ることは難しいこともあるが、もし、少し時期を早めると条件に当てはまるという人であれば、急ぎ足で検討してもよいのかもしれない。
補助金は最大30万円だが、あるのとないのとでは違う。少しお得な結婚も考えてみてよいだろう。
(横山光昭)