第23週「信じたい!」第138回 9月8日(土)放送より
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平

9月14日発売
半分、青い。 メモリアルブック
138話はこんな話
会社を辞めて起業しようとしている律(佐藤健)のことを鈴愛(永野芽郁)は心配になって・・・。
元住吉は自主制作に戻っていた。
シェアオフィスを借りることを検討していることが鈴愛にバレてしまった律。
鈴愛の仕事も見せてもらうと、彼女は迷える人々に向けた恋愛上達ハウトゥービデオを作っていた。
なにやらあやしい代物で、決してこれを良しとはしていない鈴愛は、何かやらなくてはと思っていた。
そもそも、この手の廃校をリノベーションして運営されているシェアオフィスではこんな怪しいグッズを作っている人たちはいないだろう。絶対審査で落とされる。こういうものを作っている場は雑居ビルの一室が一般的だ。鈴愛は第一どういう事業計画を出して入居審査に受かったのか。・・・だがまあ深く考えまい。
そんなおり、三おばのひとり・麦(麻生祐未)が鈴愛の家(外観が映って、どうやら団地的なとこ)に浴衣姿でやってくる。カンちゃん(山崎莉里那)を預かりに来たのだ。先日は光江(キムラ緑子)だったから、おばが交代でカンちゃんの面倒を見ているようだ。
麦は元住吉監督(斎藤工)の新作「かたつむりの囁き」のチラシを持ってきた。
大手映画会社は性に合わず自主制作を選んだ元住吉をあたたかく見守りつつ(このふたりの関係ってどうなってるんだ?)、ひとりでやっていくのは大変だと言うこともわかっている麦。
その点、100円ショップの大手チェーン店・大納言はこの不況に強く、三おばはなんとか生きているようだ。
カンちゃんのスケートレッスン料金も援助していた。鈴愛もほんとうに運が強い。
若い頃は自由を求めるが、年をとると安定がいかにありがたいかを説く麦。
「人生ひとりだと間違っちゃうけれど、その人がいたから間違わなかったってことあるんじゃないかな」と
元住吉が映画を撮れずに悩んだ挙げ句、涼次の脚本に手を出して自殺未遂を起こしたことを思い出す。
鈴愛と麦による、雇用されず個人事業をやっていく可能性の一方で、なんだかんだいっても企業は安定しているという現代の抱えた矛盾をやや説明じみた会話で紹介する場面は、この後の、鈴愛と律とのやりとりに関わってくるので実は重要。ここ試験に出るぞ、的な会話である。
さらに鈴愛は律の会社の平均年収をネットで見てしまう。800万以上であった。
そして、能天気そうな加藤恵子(小西真奈美)も日夜不安で夜も眠れないのだと聞かされる。
このへん全部、この回のクライマックスに向けての布石である。
より子は再婚していた。
律は、正人(中村倫也)に、より子が再婚したことを明かす。
もはや退路はない。
右手を怪我したことを良いことに、会社を休んで、シェアオフィスの南村(山崎樹範)に入り浸る律。
母親の病気のときもあまり会社に行ってるふうでなく、海外勤務を経てからは閑職についていることもあって仕方ないのかもしれないが、あまりにも会社に行ってない印象が強い。24時間働けますか企業戦士の時代はとっくに終わり不況になったからとはいえ、働き盛りのアラフォーがこんなにぼんやりしながら、年収800万円以上もらえていいものか。
普通のサラリーマン続けちゃいそうで怖いと、ほんとに退路を断っているかのような律に、鈴愛は意見する。
「律にはいつも看板があった」「律は看板に守られて生きとる」とかなりきついことを言ったうえ、会社にいたほうがいい。より子とも復縁したほうがいい。などと余計なことを次々並べ立て、「律は精神的にも弱い部分がある」とクスリを飲んでいたことも指摘して、「人の心の中に土足で踏み込んでくるな」と律を怒らせる。でも律は声を決して荒らげないし、ドアもバタンと閉めない(閉めると、佐藤健の後ろ姿が見えなくなるからだろうけれど)。鈴愛はコップをガン!とうるさく置いていた。
鈴愛はなぜ急にやいのやいのと律に余計なことを言い出したのか。すべては、麦と恵子の影響であろう。
麦から安定の話と「人生ひとりだと間違っちゃうけれど、その人がいたから間違わなかったってことあるんじゃないかな」を、恵子からは「おひとりさまメーカーなんてタフでなければやっていけないよ」と聞いたことが鈴愛の頭の中を支配して、律を説得しようとしてしまったのだろう。平均年収も具体的にわかってしまったし。
忘れてはいけない。律のプライドは「チョモランマよりも高い」(By弥一)のだ。看板に守られていたとか、精神的に弱くてクスリを飲んでいたとか言われたら我慢ならないだろう。今まで、そういうことを黙って、マグマ大使にさせてあげていた鈴愛だったが、元住吉みたいになったら大変という心配が勝り、ストレートに出てしまったのだろう。いや、ほんと、律も下手したら元住吉コースだもの、たぶん。
こうして喧嘩してしまった鈴愛と律だが、24週はまた楽しいことが待っていそうだ。
あと3週!!!
(木俣冬)