脚本:福田 靖
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ 長谷川博己 ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋 斎

連続テレビ小説 まんぷく Part1
1話のあらすじ
1938年・昭和13年、大阪。
日中戦争の軍需景気によって豊かだった時代。
主人公の今井福子(安藤サクラ)は三人姉妹の末っ子として快活に育ち、女学校を卒業、大阪東洋ホテルに就職、電話交換手の任務につく。
そこではじめて電話を受けたのは、立花工房の立花萬平(長谷川博己)という人物。彼こそが運命の相手であることを福子はまだ知らない。
ヒロインのモデルは安藤百福の妻
「ラーメン食べたい」と歌ったのは矢野顕子。
朝ドラ99作め「まんぷく」。初回からラーメンが食べたくなった。
このドラマの主人公は、日本ではじめてインスタントラーメンをつくった実業家・安藤百福を支えた妻・仁子をモデルにしている。
安藤百福の功績は多くの書物に書き残されているが、妻のことはほとんど書かれていないため、ドラマでは自由に発想して描くという。
ヒロイン安藤サクラとは
主人公・福子を演じる安藤サクラは、苗字が安藤百福と同じだが、血縁ではない。
彼女は俳優・奥田瑛二と作家・安藤和津の娘で、安藤和津は29代内閣総理大臣・犬養毅の孫に当たる。いずれにしてもすごい血筋。そして安藤サクラの夫は俳優・柄本明の息子・佑(「あさが来た」の白蛇はん)と俳優大家族となっている。
名優ぞろいの家族の中で、安藤サクラもその演技力には定評がある。今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール賞を受賞した「万引き家族」(是枝裕和)にも出演し、彼女が表現する女の生命力は見る者を釘付けにした。代表作は、主演映画「百円の恋」(14年)。
デビューは07年、現在32歳で演技経験も豊富な安藤の表現力は、「まんぷく」のオープニング映像で遺憾なく発揮されている。海や森のなかで表情をくるくる変えるのびやかさ。振り付け感がなく、姿勢もすこしよくないところにもむしろ親近感が沸く。
いきなり未来の夫と出会ってしまう
福子の夫になるのは立花萬平(長谷川博己)。安藤百福をモデルにした、なにやらいろいろ作る人らしく、登場時は幻灯機に取り組んでいるらしい。
第一話、福子が就職した先のホテルに電話をかけてきて、彼女が取り次ぐという出来すぎた展開だが、これはこれで良い。
電話という装置を使うことで明瞭に「たちばな工房の立花だす」と挨拶し印象づける必然性が出る。これで視聴者への自己紹介も完璧だ。なにしろメガネまで外して。
長谷川博己に関しては、20年の大河ドラマ「麒麟がくる」の主演(明智光秀)に決まっているとだけ記しておこう。
彼について書き出すとそれだけで長くなってしまいそうなのでおいおい書いていきたい。なにしろこのレビューも半年(151回)続くので。
とてもわかりやすいはじまり
第一話で、ラーメン、夫と、物語の重要アイテムが一気に出てきてわかりやすい。
はじまりの画が昭和13年の大阪の全景であることも、オーソドックスながら安心して見られた。
当時の建物や車など、なつかしい人にはなつかしく、知らない人は新鮮に映る。
福子の就職先のホテルは、旧帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの弟子が設計した旧甲子園ホテル(1930年施工の建物。現在は武庫川女子大学甲子園会館)。当時の豊かさを物語るいい象徴である。
今井家のこともみるみる理解できた。
長女・咲(内田有紀)は結婚を間近にしている二十代後半。お相手・小野塚真一(大谷亮平)は質素を重んじる人物らしい。
次女・香田克子(松下奈緒)は売れない画家・幸田忠彦(要潤)と結婚している。
母・鈴(松坂慶子)は夫亡きあと家長(とと姉ちゃんみたい)として家を守っている(夫の遺影に、一瞬、風間杜夫?と思ったが違った、残念)。
亡き父は、いろんなことに手を出した挙げ句財産を失って死んでしまったため、娘には堅実に生きてほしいと願っている。武士の娘だからだらしないことを許さない。
これだけ前提を描いておいてくれると、今後、ひじょうに見やすい。
貧乏でも器量が悪くても
べっぴんは接客、そうじゃない子は裏方。本気か冗談かわからないホテルの人員配置。
べっぴん要員は、橋本マナミ(保科恵役)でなっとくのキャスティングだ。
福子は、女学校の友達・鹿野敏子(松井玲奈)と池上ハナ(呉城久美)と川沿いの屋台でラーメンを食べながらの女子トークで、「器量悪い?」と気にしはじめる。女子校時代は貧乏で器量も悪いが平気だった福子。
それはこの友達がいい人たちなのだろう。
結局「器量なんて気にせえへん」とけろっと前を向く。
「そばかすなんて気にしないわ♪」の「キャンディ・キャンディ」か。
明日も気になる。
登場人物が一気に出てきて、概要がよくわかったところで、咲の婚礼を間近にして鈴が腹痛に苦しみだし心配なところで次回に引っ張る。
「福子と萬平さんの物語」とナレーション(芦田愛菜)の「萬平さん」のところでネジを巻いてる萬平の手付き(指の長さと角度のシャープさのバランス)がまた端正。そう、長谷川博己の身体性とフランク・ロイド・ライトの築いたライト式建築の美意識には親和性がある気がした。
なにより、芦田愛菜の聡明なナレーションで朝の目覚めがよくなること間違いない。
「まんぷく」の演出家のひとり安達もじりさんも参加している朝ドラ「べっぴんさん」も10月1日からBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送開始!
第一話レビューはコチラ
(木俣冬)
連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~