「第13話 キリマンジャロの雪」が今日10月4日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。
アッシュ、反撃の準備。ただし勝っても負けても「幸せになれる」というビジョンが全くない、やりきれない展開。

才能なんていらなかった
今までさんざんディノの私怨と「バナナフィッシュ」絡みの問題で振り回されて、防戦一方だったアッシュ。友人のショーターがおもちゃにされてしまってからは、一気にオフェンスに転じた。
攻め始めてからのアッシュは、暴力、頭脳戦、カリスマ全てのゲージが振り切っているかのような鬼神っぷり。ディノが動けない状態を作り、手下のオーサーの活動を片っ端から潰して、王手寸前。
やられっぱなしの環境から反転するスピード感がある回。しかし計画通りにいくほど、アッシュの心はどんどん追い詰められる。エイジとのパート以外、爽快感はない。
この作品のアッシュの描写は、「天才」として徹底されている。頭脳も身体もパーフェクト。
しかも、仲間が惚れ惚れするほどのカリスマ性の持ち主で、誰もが振り向く美少年だ。
「持っている」がゆえに、多くの大人に奪われ続けたアッシュ。
美しさゆえに幼少期に性的虐待を受け、ディノに物のように扱われてきた(空港での剥製にする発言、ディノらしい)。
生きるために身体を売り、殺し続けるアッシュの人生に、幸せは一欠片もない。
アッシュ「才能なんてそんなもの、ほしいと思ったことなんか一度もない!」
アッシュは巧みにディノとオーサーを引っ掻き回すが、意地でも勝つという雰囲気は見えない。
オーサーと一騎打ちをするにあたり、エイジを日本に返し、マックスにバナナフィッシュ問題を託した。
アッシュ「もし俺が死んでも、あんた仕事を続けてくれるかい?」
オーサーの言うように、大切な人や情報はあっても、自分の命への執着はほとんどない。
勇気があるのではなく、自分に価値を感じていないのだろう。
持つものが近くにいる苦しみ
一方でオーサーは、「持つ」ものであるアッシュが存在することでずっと苦しみ続けている人間だ。
今までの回を見ると、オーサーにはそこそこいい仲間がついてきている。
マフィアのディノというバックが怖いから従っている人間もいるだろう。けれども、素直に彼を慕っているメンバーはちゃんといる。
ところが完璧すぎるアッシュのカリスマが強すぎた。ディノもまわりもみんなアッシュアッシュ言うのは相当にしんどいはず。
オーサーは、アッシュと公平に渡り合おうとは全くしない。何が何でも勝つ、とがむしゃらに牙をむきつづけている。
5話ではこっそりスナイパーで殺そうとしていた。今はエイジを利用してアッシュの動きを鈍らせようとしている。
彼は卑怯者になるのを恐れない。
オーサーとアッシュを、炎と氷だと感じていたディノ。
ディノはアッシュを寵愛・偏愛しすぎているとはいえ、オーサーのことだってそのくらいには認めてはいた。バナナフィッシュ絡みの大役を任せたくらいだ。
けれどもオーサーには、アッシュしか見えていない。
もしアッシュがいなかったら、正々堂々とのし上がる人物だったのだろうか。このあたりのオーサーの意地の描写は、13話に期待。
エイジが持っているもの
マックス「これといった特徴のない子だ。とても善良で、だが、ただそれだけだ」「だが彼には不思議な力がある。そばにいる人間の気持ちをなごませる」
(11話)
12話では、エイジはアッシュと真剣にケンカし、仲直りし、ハロウィンでいたずらまでしている。
エイジは隠れ家にしているマンションの住人と仲良くし、アッシュのチームのメンバーともすっかり打ち解けている。いつ殺されるかわからない状態での彼の行動は、大胆でおおらか、みんなを笑顔にした。
アッシュはエイジにない才能を数多く持っている。
しかしエイジは、人の心を安心させる人徳を持っている。年相応の人間愛を持っている。棒高跳びで軽々と飛ぶように、自由に向かって飛べる意思と可能性を持っている。
エイジから見たら「持つもの」はアッシュだろう。けれどもアッシュから見たら「持つもの」はエイジだ。
(たまごまご)