アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。


第十五話「エデンの園」まで放映され、この作品のエグいところがバンバン明らかにされはじめた。アニメの加速が半端じゃない。原作を整理して調理する塩梅がとてもいい。
新OPとEDも、アッシュの悲しみと渇望が強調された。OPでショーターが映るのは、ずるい。
2クール目に入るにあたって、十四話で描かれていた「アッシュと罪」について、改めて確認しておきたい。

「バナナフィッシュ」どんなにアッシュが悲劇の少年であろうと、殺人犯なんだよなあ14話
吉田秋生「BANANA FISH」14巻表紙。ここから精神衛生センター編。十五話以降はアッシュの受難がさらに続くので、心の準備が必要

アッシュの罪の意識


オーサーとの戦いで大怪我をし、病院に収容されたアッシュ。昏睡状態の中、彼は自分が手を汚し続けてきたことに恐怖を抱き続けていた。
親友のショーターを、自らの手で殺さざるを得なかったこと。彼に光を見せてくれたエイジに、人を殺す瞬間を見られたこと。
アッシュ「そんな目で見るな、そんな目で俺を見ないでくれ…」「俺は人殺しだ…人殺しだ!」
彼の置かれてきた境遇を考えると、君が悪いわけじゃないから!と言いたくなる悲しいシーン。
でも本当に悪くないのか?と言われると、決してそんなことはない。どうあがこうともアッシュは既に殺人犯だ


十四話序盤で、かなりの数の少年が死体安置所に並べられているシーンがある。アニメのオリジナルシーンだ。
「いくら身を守るためとはいえ、お前の爪と牙は鋭すぎる、アッシュ」
十三話までのアクションシーンだけ見ると、卑怯な手を使って自分を狙ってくる敵をバッサバッサと倒していく、バナナフィッシュ無双、みたいに見える。
しかしこの死体安置所のシーンが追加されたことで、彼の犯した罪の重さが形として見えるようになった。
本来外部から見たら、彼の行動は残虐非道なものでしかない。

アッシュは今まで、無抵抗な相手は殺さない、という主義を貫いてきた。

しかしオーサーの一件で、無抵抗な相手でも排除のために殺すようになり、自分が何者なのか見失っていたのが描かれていた。
自分のことを「男娼上がりの殺人鬼」と呼んで卑下するアッシュ。これは客観的な評価として間違っていない。ギャングのアッシュのことを好意的に思っている一般市民は、そう多くないだろう。「アッシュが死んだ」というニュースで、よかったこれで少し平和だね、なんて安堵した人間もいるかもしれない。
そこがやりきれない。
彼には味方はいるものの、圧倒的に敵意を向けられることのほうが多い。特に才能があるがゆえに、追われ続ける。罪の苦しみに耐えて身を護るために、さらに人を殺し、罪を犯す。負のスパイラルが断ち切れない。

ところで決闘で死んだオーサーは、安置所で仲間と同じ場所に並べられていた。
彼の死の瞬間が克明に描かれ、死後孤独でないことが付け加えられた。
オーサーもまた殺人犯でありつつも、必死に戦ってきた悲しい少年の一人。少しだけ救われているのがわかるシーンだ。

法と秩序を守らないからこそ


アッシュ「今まで法を無視して生きてきたんだ。いまさら法に守ってもらおうなんて虫のいいことは考えてない」
わざわざ病院で手を尽くしてもらって一命をとりとめたアッシュだが、まあここまで殺してきたら、死刑か無期懲役だろう。彼は18歳、もう子供とは言い張れない。
警察側のセリフが興味深い。

「わずか8歳で性的暴行を受ければ法と秩序なんぞくそ食らえと思うようになっても無理はないと思ってね。加害者と被害者は紙一重か。やりきれんな」

アッシュは8歳の時の性的暴行を受け、その後初めて人を殺したことを、エイジに以前の回で話している。明確に覚えているし、それがトラウマになっている。
その後に男娼とならざるをえなくなり、性的搾取を受け続けてきた彼は、大人の性に激しい拒絶反応を示すようになった。ひいてはそれが大人全てへの不信感になっている。

心の底からやけくそになって、法と秩序に「くそくらえ」と思っているとは限らない。
確かにアメリカ合衆国の法と秩序は遵守してはいない。そのかわりアッシュは、「良心」という彼の秩序に従って物事を判断している。
アッシュは少なくとも、シリアルキラーではない。

彼を付け狙う人々は、ここを逆手にとってくるからいやらしい。
検事局が知能テストを持ち込んで、そこから「精神状態に問題あり」と言い出して、国立精神衛生センターに移送する。
実際は「天才だから実験台にする」という無茶なもの。つまり誰も彼を精神異常だとは思っていないのだ。

「法と秩序なんぞくそ食らえ」と思っている人間は、アッシュを取り囲む人間の方だ。
相対的にアッシュの方が、真面目に生きようとしているようにすら見える。
今までのギャングの少年たちの抗争は、まだ幼さゆえの信念があったから、マシだったのかもしれない。
ここから先は、容赦のない大人たちの、法も秩序も良心すらもない視線に、アッシュは晒されていくことになる。

ちなみに以前のディノの「剥製」の話を受けて、今回アッシュが「いい剥製職人は見つかったのかな」と冗談を言うシーンがある。
ちょうど同じ週にアニメ「ゴールデンカムイ」で、同じ声優(内田雄馬)の江渡貝という変態人間剥製職人が出ているので、比較して見るのも面白い。わざとだったらすごいタイミング。

(たまごまご)