『SLAM DUNK』登場前は「バスケ漫画は売れない」と言われていた
『SLAM DUNK』 画像はAmazonより

『SLAM DUNK(スラムダンク)』の名を知らないヤツは漫画好きの中には1人としていないだろう。全31巻で完結した同作は、言わずと知れたバスケットボール漫画の金字塔だ。


不良でバスケど素人の主人公桜木花道が、湘北高校の仲間たちと全国制覇を目指す物語。ちなみに、漫画の連載期間は約6年間だが、作中で描かれたのは桜木花道の高校入学から夏のインターハイまでのわずか4ヶ月あまりの出来事だった。

『SLAM DUNK』は漫画界のタブーに挑戦した漫画


作者の井上雄彦は『SLAM DUNK』単行本最終巻となる31巻のあとがきでこう述べている。

“編集者から「バスケットボールはこの世界では一つのタブーとされている。」と何度か聞かされました。コケるのを覚悟しろという意味です。(たぶん)”

高校野球からプロ野球までみんな大好きな野球や、プロ化の流れにあったサッカーと比べて、バスケットボールはモチーフとしてはマイナーすぎるスポーツだった。漫画として人気が出にくいコンテンツだったのだ。
しかし『SLAM DUNK』はそんな不安を見事に打ち破る漫画に成長していくことになる。

『SLAM DUNK』がきっかけで競技人口がグッと増える


『SLAM DUNK』は作品として売れただけでなく、日本のバスケット競技人口をもグッと増やした。漫画連載、テレビアニメ放映期間中の競技人口の推移を見てみると、1990年の競技者数登録はミニバスから一般・実業団まで含めて81万人だったが、連載終了時の1996年では100万人を突破している(日本バスケットボール協会競技者数推移より)。たった6年で競技人口が25%もアップした計算だ。それ以降の競技者人口が減少傾向にあるのも、『SLAM DUNK』の連載終了が無関係とは言えないだろう。

いまだ多くのバスケ漫画が越えられない壁


『SLAM DUNK』の成功を受け、以降も数々のバスケ漫画が各少年誌で連載されてきたが、いまだにこれを超える漫画は誕生していないと言われている。『SLAM DUNK』以降、90年代のバスケ漫画は本格バスケと銘打ってネタに走るものや、早々に打ち切りにあうものなどが続出した。

多くのバスケ漫画ではバスケが人並み外れて上手い主人公を中心に物語が進んでいくが、『SLAM DUNK』はど素人を主人公においたことが奏功した。
バスケットを知らない読者や、始たばかりの学生に興味をもたせたことが大きい。

上記の通り『SLAM DUNK』連載中にも他少年誌で多くのバスケ漫画が誕生している、バスケを始めたきっかけとして名前が挙がるのは『SLAM DUNK』がほとんどだった。また、『SLAM DUNK』は湘北高校が県大会、インターハイを通じて優勝未経験だという点も、妙な現実感があった。他のスポーツ漫画でありがちな全国優勝で完…とはならなかったのだ。

『SLAM DUNK』はまだ終わっちゃいない


『SLAM DUNK』は全国制覇を成し遂げられず、インターハイ3回戦敗退というある意味読者の期待を裏切る形で連載を終了した。しかし、物語が終わったというわけではない。
井上は自身の公式ページのよくあるご質問ページで「(『SLAM DUNK』再開の)予定はない」としながらも

“描きたい欲求が自分の中に自然に出てくるのを待っている状態。誰かにやらされるものではなく、自分が楽しんで描いてこそのスラムダンクなので、そういう気持ちでとりくめる時がきたら、第2部があるかもしれません。”

という回答を掲載している。つまり、まだ完結していないのだ。続きがある保証などないが、ぜひとも花道たち湘北高校の選手たちの成長した姿を再び目にできる日がくるのを筆者は待ちわびている。

(空閑叉京/HEW)