「障害者への抑圧につながる」「悔しい」

東京都はパラスポーツを応援する人を増やすプロジェクト「TEAM BEYOND」の一環として、10月12日~21日の期間中、東京駅・丸の内仲通り周辺にてイベント「BEYOND FES 丸の内」を開催中。パラスポーツ体験会や観戦会といった催し物を実施している。また、23人の選手に焦点を当てたポスターを制作して、東京駅構内などに掲示していた。しかし、杉野明子選手(バドミントン)のポスターに書かれた「障がいは言い訳にすぎない。負けたら、自分が弱いだけ」という言葉に対して、ネット上を中心に批判が巻き起こった。
どうやら、「障がいは言い訳にすぎない」というのは、杉野選手が過去にインタビューで語った言葉を元にしているらしい。とはいえ、杉野選手が己を鼓舞するために言うのと、広く世間に発信されるポスターに引用されるのとでは、同じ言葉でも文脈が大違いだろう。当該ポスターは、まるで世間の障害者全体に向けたメッセージのように見えてしまうとして、Twitter上では、「ここだけ引用すると誤解を与える」「障害者への抑圧につながる」「『パラスポーツでは』という前置きが必要」といった声があがった。また、実際に自身も障害を抱えるというTwitterユーザーから「悔しい」と嘆く声もあった。
ジャーナリストの江川紹子さんは10月17日にTwitterで、「公共空間にこの言葉だけを切り取って貼り出せば、人々の心にどういう感情を惹起せしめるかに思いが至らない、東京都と関与した広告会社担当者の想像力の貧困さに驚く」と厳しく批判。コラムニストの小田嶋隆氏も「発話者が障害者本人なのだとしても、発言の切り取り方が無神経だし、それ以上に、この種の文言をポスターのキャッチコピーとして一般化して拡散することの効果に無自覚すぎると思います」とツイートして苦言を呈した。
東京都は「他の方に向けられたものではない」と強調
批判を受けて、「TEAM BEYOND」の公式サイトには10月16日付で謝罪文が掲出された。問題となった「障がいは言い訳にすぎない。負けたら、自分が弱いだけ」という文言について、「この言葉は、杉野選手御自身が競技に向き合う姿勢を表したものであり、決して他の方に向けられたものではありません」と強調した上で、「東京都のデザイン及び掲示方法が不適切であったため、不快な思いをされる方が生じる事態となりました」と釈明。杉野選手たち関係者に謝罪した上で、「『TEAM BEYOND』は、展示物等のより一層慎重な制作を心がけ、多くの方にパラスポーツ、パラアスリートの魅力をお伝えしていくよう努めてまいりますので、今後とも、杉野選手をはじめとするパラアスリートの応援を、何卒よろしくお願い申し上げます」とつづった。
なお、当該ポスターはすでに撤去したとのこと。また、公式サイト内のポスター画像も削除したことを報告している。
(原田イチボ@HEW)