このフレーズを聞けば、90年代を生きた人々の100人中100人が「リゲイン」と即答することができるだろう。そのうち80人くらいはテーマソングを歌うことさえできるかもしれない。
今なら完全ブラック!バブル景気のビジネス思想
80年代終わりから90年代初頭、日本がバブル景気に湧いていた時代に誕生した栄養ドリンク「リゲイン」。当時小学生だった筆者も、大人はこれを飲んで仕事に精を出しているものだと思っていた。24時間寝ないで仕事をし続けるためのパワーアップアイテムだと信じていた。
それから云十年、大人になって当時のことを思い出してみると、いくらバブル景気だったからって24時間戦うって完全なるブラック思想だよなとツッコまざるを得ない。戦うとは、イコール「働く」ということで相違ないだろう。今とは違って働けば働くほどお金になった時代だったからこそ許された、むしろ輝いていたキャッチフレーズなのかもしれない。
実際のところ、24時間も戦えない
「24時間戦えますか」というキャッチフレーズは、とても魅力的だが現実問題、超人でもない限り24時間戦い続けるなんて無理な話だ。
そんなマジレスに応えるように、サントリーから2014年にエナジードリンクとしてリゲインが販売されたときのCMキャッチフレーズは、「24時間」ではなく「3、4時間戦えますか?」となっていた。すでに販売が終了してしまったことはなんとも残念だが、「24時間戦うのはしんどい」という事実にリゲインは気づいてくれていたのだ。
リゲインのCMはいつも時代に寄り添っていた
24時間戦うことは難しいということに気づいてくれたリゲインだが、時代に呼応したのはなにもここ数年だけの話ではない。その登場からリゲインのCMは、日本の景気や人々の様子に歩調を合わせるかのように寄り添ってくれていたのだ。
好景気で湧いたバブル期は「24時間戦えますか」でお馴染みの時任三郎が出演。景気が低迷し始めた時期には、本木雅弘が井上陽水の『東へ西へ』をカバーしながら「全力でいく。」と日本を応援し始めた。
しかし、日本経済の疲弊は続いた。それでもなんとか上を向かなければならなかった。そんな様子を佐藤浩市がドジを踏みながら表現していたリゲインCMのキャッチコピーが「その疲れにリゲインを」だった。
2000年代に入ると、低迷が続く日本に明るさをもたらさんとするように、反町隆史を起用して「ポジティブリゲイン」、「前向きのチカラ。」をキャッチフレーズにCMを展開。さらにTOKIOの長瀬智也が「攻めの1本」で日本を鼓舞した。
次の10年はどんなキャッチフレーズでリゲインが攻めてくるのか。そのあたりが実に楽しみである。
(空閑叉京/HEW)