お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志さんが、10代の女性アイドルが過酷な労働環境のせいで精神的に追い詰められたことが原因で自殺したとされる報道を受けて、「死んだら負け」と発言。ネット上を中心に批判の声が殺到している。

松本さんは「自殺する子供をひとりでも減らすため」と説明


松本人志「死んだら負け」発言はエールなのか?「死者への冒涜」と厳しい批判も
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愛媛県を拠点に活動する農業アイドル・愛の葉Girlsのメンバーだった大本萌景さんが、16歳で自殺した。パワハラや過重労働が自殺の原因だとして、遺族は、所属会社であるhプロジェクトを提訴した。

10月14日に放送されたフジテレビ系「ワイドナショー」では、この報道を取り上げた。その際に松本さんは、「こういう自殺者が出たニュースを扱うとき、なかなか亡くなった人を責めづらいよね」とコメント。その上で、「僕はやっぱり『死んだら負けや』っていうことをもっとみんなが言わないと。死んだらみんながかばってくれるっていうこの風潮がすごく嫌なんです」と自身の考えを述べた。



この「死んだら負け」発言が賛否両論を巻き起こして、松本さんは17日にTwitterで、「自殺する子供をひとりでも減らすため【死んだら負け】をオレは言い続けるよ。。。」と改めて主張した。また、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は、「論破されてない。松本人志、正論。鉄壁」と松本さんを擁護して、「松本人志は『強くなりなさい』とエールを送っているのだよ。わからん?」と代弁した。

「死者への冒涜」「まず加害者側を批判すべき」と批判の声


Twitter上では、「死んだら負け」という意見に同意する声もあるものの、「遺族や関係者に追い打ちをかける言葉」「死者への冒涜」といった批判が寄せられている。また、自己責任論につながるという指摘もあり、「まず加害者側を批判すべき」「死なないための具体的な解決策を提案すべき」といった声もあがっている。

松本さんもけっして、今まさに苦しい状況にある人間を無意味に追い詰めたいわけではないだろう。しかし、Twitter上でもさんざん指摘されている通り、自殺を選ぶ人間は、そもそも勝ち負けにこだわる気力がもう残っていなかったのかもしれない。しかも、どうすれば苦難から脱出することができるのか解決策がわからず精神的に追い詰められている人間に対して、ただ「死んだら負け」とだけ言い放つのは、実質的に相手を追い詰めるだけにしかならない場合もあるのではないか。

確かに、つらい状況にある本人が己を鼓舞するために「死んだら負け」と言い聞かせることはあるかもしれない。しかし、第三者が投げかける言葉としては、逆に相手を傷つけてしまう危険性がある。……批判者たちの意見をまとめると、おおむねこのように考えているようだ。

松本さんの意見に賛同する声も少なくないが、無数の批判意見も寄せられている。その賛否両論の状況こそが「死んだら負け」という言葉が、悩める相手を救うとは限らないことの証左と言えるかもしれない。たとえ激励のつもりだとしても、生き死にが関わる問題において不特定多数に向けて、「人によっては感銘を受ける。人によってはショックを受ける」という強い表現を発信するのは、やはり危険だと言わざるをえない。自殺を考えるほど複雑な状況や心境にある人間を対象とするならば、キャッチーな表現ではなく、万が一にも誤解が生じないよう言葉を重ねて発信すべきメッセージだろう。

(原田イチボ@HEW)
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