脚本:福田 靖
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

23話のあらすじ
昭和20年春。萬平(長谷川博己)に2度目の召集令状が来た。日本が敗戦への道を突き進んでいる今、戦場に出たら生きて帰れないのではないかと福子(安藤サクラ)は激しく心配する。
赤紙が来た
戦況が芳しくない中(戦況は絵で表す)で、兵庫県上郡の黒竹村に疎開し、穏やかに暮らす福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)、そして鈴(松坂慶子)。
夫婦は山菜採りなどをして楽しんでいるが、姑は、大の男が戦争にもいかず働きもせず・・・と気に病む。
そこへ、召集令状が。
この土地の人の「おったってかー」という方言がほのぼのする。
「やはりまた来ましたか」と萬平。
一度目は憲兵の拷問により体が弱っていたので身体検査で落とされた。
今は田舎で健康を取り戻しはじめていたので、覚悟を決めている様子。
夕暮れ、赤紙に動揺している安藤サクラの芝居が良い。
「大阪も神戸も東京もやられて日本はもうダメなんやないか」「みんな生きて帰れない」「爆弾を抱えて敵の戦車につっこむんやて」という噂に心が混乱し、涙・・・の横顔もいい。
「僕だけ安穏としているのは忍びないよ」と感情をあんまり出さないで理屈っぽくしゃべる萬平さん。
晩ごはんの時、あぐらをかいて、一応、どしっと家長ふうな雰囲気を出す萬平さん。
家族三人は泣きながらご飯を食べる。
咲(幽霊)がまた出た
咲「良かったわね お母さん」
「これで福子は未亡人よ」
鈴「なんてこというの、咲」
鈴「どうしてそんなひどいこと」
咲「お母さんがいつも言うてることやない」
咲がいわゆる幽霊ではなく、鈴や福子の気持ちの代弁者(自分と対話する)として出てくるのが「まんぷく」の特徴だが、咲の「良かったわね お母さん これで福子は未亡人よ」には参った(いい意味)。
「お母さんがいつも言うてることやない」とまで。
そもそも鈴は悪い人ではないから、彼女の葛藤を、咲の幽霊との対話で描いた名場面だ。
いやいや、さすがにこれは・・・・
「ところがその翌朝大変な事が起こったのです」
〈参った1〉が咲の場面とすれば、〈参った2〉はここから。
突如、萬平が激しい腹痛、発熱を催す。
冒頭で山菜とりながら「毒に当たって死ぬのはいやですよ」と福子が言っていたことがここで生きる。
まさか、山菜が当たったのか?
福子は山を越えて必死で医者を呼びに行く(医者が遠いというのもあらかじめ描かれてあった)。
ここで鈴がまた可笑しい。
「ほんとうに?」
「戦争に行きたくなくて仮病をつかっているんじゃないでしょうね」
「ほんとうに?」
「ほんとうなの?」
ずっと疑っている鈴。視聴者の気持ちは彼女に近い。
また頭を働かせて病気のふりして兵役を逃れようとしているのでは、と想像してしまう。
だがどうやら本当らしく、腹膜炎の疑いが。
のたうちまわり顔をゆがめ叫んで気絶する萬平。
憲兵による拷問についで、これ。長谷川博己は痛めつけられる演技が似合うとはいえ、なぜ、こんなにも嗜虐的な悦楽を感じさせるような画を作り続けるのか。いったい誰の趣味なのか。
村人がたくさん集まってきて、お年寄りはお祈りする。
早くも、福子と萬平の回想シーンの数々も。
神社にお参りする鈴。「福子を未亡人にしないで」と願う。
萬平が戦争に駆り出されるとなっても、このドラマは夫婦の物語。萬平がインスタントラーメンを発明する話とあらかじめインフォメーションされているので、ここで彼が戦死することはないことをほぼ誰もがわかって見ている。
ましてこのまま病死もするわけもない。
我々視聴者はいったいどういう面持ちで、この一連の流れを見守ればいいのだろう。
そう、答えはひとつ。
ただただ、長谷川博己ののたうちまわる熱演を楽しむほかないのである。
でもさすがにこれは偏重ではないだろうか・・・とおずおずと書いておく。
NHKさん、頑張り過ぎてないですか。大丈夫ですか。
頑なな鈴にふたりを許す気にさせる説得力のために大きな出来事が必要なのもわかりますけれども。
(きまたふゆ 5歳)
連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
朝ドラ「べっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。
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