「働くこと」をテーマにしたテレ東のドラマ枠「ドラマBiz」第3弾『ハラスメントゲーム』(テレビ東京・月曜22:00〜)第3話「イクメンパパの裏の顔」。
「ハラスメントゲーム」宮崎謙介とは別ジャンルのクズイクメン登場、斎藤工が清々しいまでにクズな3話
イラストと文/北村ヂン

育児制度を悪用して副収入を得るイクメン


今回のハラスメントは、育児制度を利用しようとする男性が職場で嫌がらせを受ける「パタニティ・ハラスメント」。

企業イメージの向上も狙って、丸尾社長(滝藤賢一)肝いりで導入したイクメン時短制度。


高村真琴(広瀬アリス)の大学時代の先輩で、商品開発部の徳永悠馬(斎藤工)は、その制度を利用して時短勤務しているだけなのに、周囲から嫌がらせを受けているのだという。

コンプライアンス室室長・秋津渉(唐沢寿明)は調査を進めるが、商品開発部内では部長はもちろん、「イクメン」に対して理解がありそうな女性部員にすら、徳永を擁護する人はいなかった……。

このご時世になっても、女性が産休・育休を取ることに対して協力的ではない職場も少なくない。

ましてや男性の育休や時短勤務となれば、制度的にアリだとは分かってはいても、風当たりはメチャクチャ強そうだ。

「理想のイクメン」風をビュービュー吹かせているにもかかわらず、徳永の持ち歩いている赤ちゃん用の玩具が汚れていないことや、自宅に赤ちゃん用品のサンプル、ビデオカメラ、パソコンなどが置かれていることから、偽のイクメンであることを見抜いた秋津。

実は徳永は、動画サイトにイクメン動画をアップして収入を得るYouTuber的な活動をしていたのだ。

「マルオーホールディングス」の服務規程では副業は禁止となっており、イクメン時短制度を使ってできた時間でYouTuberをやって収入を得ているのは完全にアウト!

「Windows Me」時代のセンスのYouTuber


ちょっと前まで、ドラマや映画などでネット関連の描写が登場すると、「こんなインターネットはないよ!」と言いたくなるようなヘンテコなネット描写も少なくなかった(『電車男』とかね)。

最近では、ドラマの制作者もさすがにネットに詳しくなっているようで、そこまで異常なネット描写は見かけなくなってきたが、今回のイクメンYouTuber周りの描写は、なかなか味わい深かった。

育児の動画をネットにアップして収入を得るというのは、いかにも今時の若いパパがやっていそうな旬のネタなのに、肝心の動画&サイトデザインのクオリティが「Windows Me」くらいの時代のセンスなのだ。

会社にバレないように顔出ししていないのはいいとして(ここでマスクで顔を隠していたらニコ生主っぽくてリアルだったのに!)、代わりに「似顔絵イラストメーカー」あたりで作った感のある微妙なキャラクターが、GIFアニメくらいのカクカクさで口をパクパクさせながらしゃべっている動画。ある意味VTuberだけど……。

「無職のイクメンパパ、走る」というチャンネル名もヤバイ。

このクオリティの動画で月に30万円以上の収益を上げているというから、徳永のトークスキルは相当高そうだ。


懐かしの電波系サイト「愛生会病院」みたいに、「ヤバイサイトがあるぞ!」的な意味で人気になっている可能性もあるけど……。

清々しいまでのクズっぷりが気持ちイイ


秋津に「無職のイクメンパパ、走る」を発見され、服務規程違反を突っ込まれた徳永はソッコー謝罪。YouTuberとしての活動も止めることを約束する。

その言葉通り「無職のイクメンパパ、走る」のチャンネルを閉鎖するが、すぐに「ゴキゲンママチャンネル」という似たようなノリのチャンネルを開設。

ボイスチェンジャーで女声に変えて、お母さんキャラにしゃべらせれば会社にバレないんじゃないかという、斎藤工の発想が浅はかすぎてカワイイ。

それにしても、「本業を失ってまでやる気はありません」と言っていたのに、ソッコーで新規チャンネルを立ち上げるとはどういうつもりだったのか?

当初は金目当てではなく、ネットの活動を通して得たデータを会社での仕事に活かそうと考えていたのだが、ネットに対してまったく理解のない上司から、

「ちまちまネットなんかやっているヒマがあったら、目の前の仕事を片付けろ!」

などと罵倒されたため、開き直ってYouTuberに本腰を入れるようになったということらしい。

秋津は、徳永をこんな風にしてしまった上司を断罪しつつも、徳永自身にも自己退職を勧める。

しかし徳永は開き直って、

「給料は権利としてもらいます、出るところに出てもいいと思っています」

とか言い出した!

これまで「ハラスメントをする側にも、それなりの理由がある」的なパターンが多かった本作。

それ故に、ハラスメント加害者が断罪されてもいまいちスッキリできない部分があったのだが、コイツは清々しいまでのクズ!

「いっそスティーブ・ジョブズを目指しましょう、フォロワーも多いそうですからね。会社にはもう君をフォローする人はひとりもおりませんが」
「お前はクズ中のクズだ、甘えるな!」

厳しい言葉で徳永を責め立てることによって、合わない会社に居座るより、才能のあるネットの世界でがんばるよう奮起をうながす作戦だったようだが、クズの徳永はまんまとブチギレ。

「辞めりゃいいだろ、辞めてやるよ!」
「ぜってぇ成功してやる! アンタらや会社、見返してやるからな!」

ここまでの反応は想定通りなんだろうけど、ブチギレついでに子どものおもちゃをぶん投げていたのが気になった。

この人、会社を辞めて自宅にずーっといるようになったら、DVとかし出すタイプなんじゃなかろうか。

そして「イクメン」をテーマにしたYouTuberを本職にするのはいいけど、子どもが大きくなっちゃったらどうするんだろ……。


HIKAKINがボイパの上手い人というキャラから、変顔で色んなことをやる人にシフトチェンジしていったように、斎藤工もデスソースをペロペロして変顔で悶絶したりするようになるんだろうか?

要は宮崎謙介が悪いということで……


「パタハラ」を訴えていたイクメンが、実は育児制度を悪用して副収入を得る「ブラック・イクメン」だったという今回のエピソード。

斎藤工のクズっぷりが素晴らしく、これはこれで面白かったのだが、せっかく「男性の育休・時短勤務」という、世間的にもまだ白黒つけづらい状態にあるテーマを扱うのだがら、もっとストレートにこの問題に取り組んだドラマも見たかった。

そして、徳永のことを大学の先輩として以上の感情で慕っている様子だった高村の姿から、

「男だって育児休暇をとっていいと思いま〜す!」

とか言いながら、不倫をしていた元・衆議院議員の宮崎謙介パターンの展開も期待していたのだが、さすがにそれはなかったね。

しかし「男性の育休・時短勤務」問題の議論がなかなか進まない原因の一端は、確実に宮崎謙介にあると思うよ。タレント面してバラエティ番組に出ている場合じゃないぞ!
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
ネットもテレ東

Paravi

TVer

『ハラスメントゲーム』(テレビ東京)
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京
編集部おすすめ