アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第18話 海流のなかの島々」が今日11月1日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。

アッシュが脱出に成功して、エイジと再会。一時の幸せかと思いきや、さらなるややこしい事態が起きる回。
まともにやりあったら、向かうところ敵なしだった天才アッシュが、真にかなわない相手の登場で慄いたのはここから。
抱きしめる手
死んだと報道されていたアッシュが、帰ってきた。
バナナフィッシュ絡みの話をエイジがシンにしてしまったことでちょっとした喧嘩になるが、エイジはすぐに言い争いをやめる。
「こんな事したかったわけじゃないんだ。無事でよかった」
エイジがアッシュを抱きしめ、アッシュがエイジをぎこちなく抱き返す様子は、原作でも2P使うほどこだわって描かれているシーン。
アニメでもここは、ものすごく丁寧に再現されていた。
エイジは日本人。スキンシップの距離感は他のアメリカ人キャラに比べて、そこまで近くない。
そんな彼が、自らアッシュに近づいて、ハグした。
背の高いアッシュに対して、エイジがさりげなく背伸びしているのは注目したいポイント(ここは原作にはない追加演出)。
アッシュは彼にハグされてから、非常に複雑な顔をして一拍置き、迷った末に抱き返している。
正面から向けられる好意を、今まで知らなかったアッシュ。エイジの何一つ裏のない「無事でよかった」を受け取り、抱きしめられたことで、自分も「抱きしめる」という好意を相手に示せるようになった。
アッシュの転換点の一つだ。
今まではエイジが自分の心を支える存在なのを認めつつも、汚れた自分を見られたくない、危険に晒したくないと、距離を置き続けていた。
しかしオーサーらを殺し血に汚れた自分の姿を見ながらも、エイジは抱きしめてくれた。無条件に受け入れてくれる彼を、ついに認めた瞬間だ。
エイジに、日本に帰るよう言い続けてきたアッシュ。
しかし彼はついに、今回で折れる。
アッシュ「駄目だと言ってもどうせお前は帰りゃしないだろ、それに俺にとってもその方がいいらしい」
ここまではっきりと、自分の希望を言葉にしたのははじめて。
エイジがこれを聞いてびっくりした後の、「そばにいてくれともう一度言わせたいのか?」の直球なセリフ。不器用でまっすぐすぎる彼らしい。ここにいるのは、ただの純朴な年相応の少年だ。
埋まらない文化の溝
エイジ「どうしたの、子供料金で博物館にでも入る気?」
アッシュ「売春」
エイジ「そのジョークよくわかんないよ」
前半でアッシュはエイジと心を通わせて抱きしめあえた。後半でアッシュはおじさんに買春されてベッドで抱かれる。
原作では11巻中盤が抱擁のシーンで、12巻冒頭が売春のシーン。流れとしては原作どおりだが、これを1話にまとめたアニメスタッフの演出で、アッシュの哀しさは強調された。
「抱く」ことの両極端なギャップ。どちらもアッシュが生きる世界の事実だ。
興味深いのはエイジの反応。
アッシュは「売春」とストレートに言葉にしている。
アッシュが出かける間際になっても、変わらない。
エイジ「出かけるのかい?」
アッシュ「言ったろ、売春しに行くって」
この社会には少年売春がはびこっていることが、彼には現実としてイメージできていない。
アッシュがわざわざ幼い15歳の容姿にした理由も、その方が売れる、という点に全然ピンときていない。
「貴様のような男娼に脅されて国を売るとでも思ってるのか」
彼を買おうとしたキッパード上院議員が言うセリフ。
かけがえのないものとして触れてくれた手も、欲望にまみれたモノ扱いの手も、アッシュに触れてくる。
どういう意図でアッシュが「売春」とエイジに言ったかは、はっきりとは描かれていない。
ただアッシュの中で、変化は起きている。
今までは自分のいる社会のドロドロからエイジを退けていた。
しかし今回は、さらけ出した。
自分の何もかも出していこう、とアッシュが腹をくくったかのようだ。
次の話以降、ふっ切れたアッシュの覚悟が描かれていくことに期待。
(たまごまご)