今回のテーマは「モラル・ハラスメント」。
言葉自体は知っていたし、なんとなーくの意味も理解しているつもりだったが、セクハラやパワハラみたいに「これをやったら○○ハラ!」という分かりやすい事例がパッと思いつかず、ボンヤリとした認識だった「モラハラ」。
「パワハラは大声で叱責したり、殴ったりする威圧的な行為。モラハラは無視したり仲間はずれにする陰湿な行為」というドラマ内の解説がすごく分かりやすかった。
モラハラって、要は「いじめ」ってことなんですねぇ。勉強になるドラマだ。

黒谷友香の「女を使ってどこが悪いの!」発言にシビれる
店舗開発部の貴島秀美(黒谷友香)がコンプライアンス室へ相談に訪れた。
女性初の、なおかつ最年少で店舗開発部長となった貴島だが、部下たちから情報隠しや無視などのモラハラを受けているのだという。
主導しているのは、貴島の同期でもある次長の岩熊義雄(山中崇)。
岩熊は、常務の脇田治夫(高嶋政宏)から次期部長候補だと言われていたこともあり、同期の「女」に先を越されたことに嫉妬。
「女の涙を武器にして仕事を取っている」「接待でホステスのように媚びを売っている」などと噂を流し、部下たちをたきつけて貴島をいじめているのだ。
これまでのエピソードでは、「○○ハラを訴えていたヤツが実は〜……」という、どんでん返しパターンが多かった本作だが、今回は「部下に強く言えない女 VS 嫉妬する男」という構図のままストレートに展開していった。
コンプライアンス室室長の秋津渉(唐沢寿明)による解決方法も「ふたりに直接、本音で話をさせる」というストレートなもの。
「アンタ(岩熊)がもっと圧倒的に仕事ができたらポストなんて奪われてないよ」
「一番女を意識してがんじがらめになっているのはアンタ(貴島)だろ。ポストに押しつぶされそうな部長なんて誰も尊敬しないよ」
秋津は、ふたりを叱責することによって本音を引き出そうとする。
そんな意図をアイコンタクトで察し、唐突に本音を語り出す貴島がよかった。
「涙は仕事の武器にしか使いません」
「そもそも、女を使ってどこが悪いの!」
「膝の上に手ぐらい置いてやったわよ、だから何!?」
さっきまで、自分が女であるせいで何もかも上手くいかないと弱気になっていたのが嘘のような、清々しい開き直りっぷり!
セクシャル・ハラスメントや、ジェンダー・ハラスメントの問題を扱いつつも、シレッと女性の口から、
「どうしても先方が納得しなかったら、私が泣いてみせるから」
なんて言わせちゃう、貴島&このドラマのスタンスが好きだ!
それに比べ、ここで泣き出しちゃう岩熊よ……。やっぱり、コイツは出世できねえな。
いつになくウェットな秋津
貴島と岩熊が本音をぶつけ合った結果、嘘くさいほどアッサリとモラハラ問題は解決したが、注目しておきたいのは、そのモラハラが生まれた背景だ。
「女性の登用が遅れている」という株主たちからの声を払拭しようと、「やる気があるところをアピールしてきたから」などとボンヤリした理由で貴島を抜擢した丸尾社長。
対立する脇田常務は、「私は君が部長になるべきだと思っています」と岩熊をたきつけ、貴島を失墜させることによって「社長の判断は間違っていた」証左としようとした。
結局、ふたりは丸尾社長 VS 脇田常務の権力闘争に巻き込まれただけなのだ。
同期でありながら上司、部下となり、敵対する関係となってしまった貴島と岩熊を見ていて、秋津はかつての自分と脇田の関係性を思い出したようで、いっつも軽い秋津がウェットな発言多めだった。
「上司に裏切られるのはクソッて恨めばいいけど、一緒に夢を語り合った同僚や、部下を信じられなくなるのはこたえるよね」
「一緒に夢を語った仲間、一緒に未来を考えた仲間、一緒に涙を流した仲間、そんなかけがえのない仲間を陥れるヤツはクズ中のクズだ」
この辺の発言は、かつて自分を裏切った脇田を意識してのものだろう。
丸尾社長がすべての元凶なんじゃないか説
秋津が、社内のハラスメント問題に取り組みつつも、丸尾社長から与えられている裏ミッションは、脇田のハラスメント関連スキャンダルを掴むこと。
とはいえ秋津は、かつての同僚である脇田の弱味を探ることに抵抗があるのか、今のところ具体的には動いてはいなかったようだ。
そんなスタンスも、今回のラストで変化を見せる。
「脇田、なぜ俺を売った。告発されたことより、なぜお前が俺を裏切ったのかその理由が知りたい」
「上に情報を流して、取り入る材料にしました。むろん、出世のためです。サラリーマンなら上に行きたいのは当然の欲望ですよ」
直接対峙した脇田から聞き出した裏切りの理由に、泣き笑いしながら「これで迷いが消えた」と語った秋津。
これから終盤に向け、脇田のスキャンダルを探り出して、「倍返し」ならぬ「クズ中のクズ」認定をすることになるのだろう。
しかしこのドラマ、毎回色んなハラスメント問題が発生するが、その元凶は丸尾社長であることが多い。
思いつきで貴島を抜擢したり、育児休暇制度を作ったり、セクハラ発言でパートを怒らせたり……。
コンプライアンス室が社長直属となっていることから、秋津はどんなことがあっても基本、社長を擁護するスタンスでいるが、社内のハラスメント問題を払拭するには、社長自身をどうにかするしかないのでは?
脇田への復讐を果たし「クズ中のクズだ!」と言い放つとともに、丸尾社長に対しても「クズ」認定する必要があると思うのだが、どうなるのか!?
(イラストと文/北村ヂン)
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『ハラスメントゲーム』(テレビ東京)
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』(河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン)
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京