エンジニアが語る料理人との共通点「食材の切り方とif文を覚えるのは同じ」
(画像はイメージ)

昨今、AIを使用した自動調理鍋などが話題になるなど、遠い分野に思われていたIT分野の料理への活用が注目されている。ITエンジニア向けの料理本 「Cooking for Geeks」という本も出ており、もしかしたらシステム開発のIT経験は、調理に活かすことができるのではないか。


その実態を知るために、エンジニアと料理人の二刀流である佐合和也(さごう・かずや)さんに、IT経験は料理づくりにどのように活かすことができるのか聞いてみた。

エンジニアと料理人の共通点


エンジニアと料理人というのは大きくかけ離れているような気がするが、佐合さんにとっては共通している部分があるという。

「エンジニアと料理人というのはものづくりという観点では似ている部分が大きいと思っています。色々なものや素材を組み合わせて『作品』というアウトプットを完成させる部分が共通しています。システムの場合は人を便利にするサービスや役に立つ仕組み、料理の場合は当然、生きるために必要なものであると同時に、五感で人を感動させることができる最高のエンターテインメントです。個人的には食べることが大好きなので料理のほうが好きですが…」

実際、佐合さんのこれまでのIT経験は、料理に活かすことはできているのだろうか?

「料理は科学だと思っています。例えば魚に塩を振ることにより、浸透圧で臭みと余分な水分が取り除かれ、旨味を閉じ込めることができます。
最近購入した低温調理器は、肉のタンパク質の変質する温度(65.5度)と細菌を死滅させる温度(62度)の間を保ってくれて、肉汁があふれるローストビーフのような調理を簡単に再現することができます。こうした科学的な側面が理系脳という意味でIT経験が活きていると感じます」

情報収集術に活きている


「調理科学や最先端の調理家電などの情報はネットで実験動画など見て学んだり、キッチンにスマートスピーカーをおいてタイマーの代わりにしたり、山のように転がっているレシピ情報から先人の知恵を借りて組み合わせたりして入手しています。IT経験で培ったこうした情報収集術が今の自分の料理スキルに非常に役に立っています」

システム開発の工程のように料理が終わると達成感


エンジニアが語る料理人との共通点「食材の切り方とif文を覚えるのは同じ」
(画像はイメージ)

では、具体的に、IT経験はどう料理に活かされているのか。

「料理を作るとき、まず全体像を把握します。冷蔵庫に入っている食材と消費期限を考慮して、帰り道にスーパーで何を買ってくれば効率よく調理して消費できるかを考えます。
そしてすべての料理が同じタイミングで完成するように野菜やメイン食材の下ごしらえをしながら出汁をとったり、タスクに優先順位を付けてキュー待ち状態にならないように順序よくこなし、コンロや電子レンジなどのリソースの制限も考慮に入れて全体を把握して調整したりしながら、効率よく片付けながら料理。
料理ができあがったとき、洗い物も無いきれいなシンクにできたときはサービスをリリースしたのと同じくらいの達成感あります (笑)」

システム開発の経験を料理に活かしていること


・食材や環境などのリソースの管理
・調理手順や順番などのタスクの優先順位付け
・コード整理のように常にきれいな状態を保つ習慣
・低温調理器、フードプロセッサー、食洗機、スマートスピーカーなどの便利グッズの導入

料理づくりの食わず嫌いなIT職種へ向けたメッセージ


最後に、料理が得意になりたいと思っているものの、どうしても苦手意識や食わず嫌いを起こしてしまっているIT職種に向けてメッセージをもらった。

「プログラミング言語を初めて学んだときにif文のような条件分岐やdo-while文のような継続条件とか基礎を“素振り”をしながら学んだのと同じように、料理の基礎となる、食材の切り方、熱の通し方、味付けなどを何度も“素振り”しながら身につければ、その基礎の組み合わせで複雑な料理ができるようになると思います」


【取材協力】
佐合和也さん
エンジニアしつつ趣味で料理している。得意分野はサーバーサイドとインフラとRailsと組織づくり。最近は秋葉原に無人店舗をオープンするプロジェクトでIoTとハードウェアにも手を出している。
https://beeat.jp/


(石原亜香利)