
今年、一風変わった焼肉店が誕生した。お店の名前は焼肉ライク。
座席には1人に1台の無煙ロースターが用意され、定食のような形で焼肉を楽しめる。元々1人でも気軽に入れるようなお店作りになっているので、1人焼肉をしているというプレッシャーをほぼ感じることなく、本格焼肉を楽しめる。
これまでは新橋にしかお店が無かったのだが、焼肉ライク初となる支店が西新宿に誕生した。前々から気になっていたお店が自転車圏で行ける距離に出来たということもあり、1人焼肉デビューも兼ねてお店へ行ってみることにした。
焼肉ライクとの馴れ初め

青梅通りと小滝橋通りを繋ぐ小さな小道沿いに、焼肉ライク新宿西口店はある。牛角の隣に出店するというやや挑戦的なお店でもあるのだが、ターゲットにするお客さんの層が違う上に、営業時間も若干差があるので、直接的なライバルにはならないかもしれない。ちなみに、牛角も焼肉ライクも、創業者は同じ西山知義氏だ。
17時頃に足を運んだこともあり、客よりも店員の方が多い状態。厨房近くの席に案内されると、店員がお店の紹介を始める。ここ数年コミュ障ぶりが加速している身からすると、1人焼肉最大の鬼門はココだったようにも思える。一般的な焼肉店と違い、システムの説明なども行われるからだ。
目の前には顔を見られないようにする仕切りが作られ、注文用のiPadもはめ込まれている。

注文リストには薄切りカルビセット、カルビ、国産牛カルビと、カルビの文字が3つ並ぶ。ご飯は料金変わらずで大盛りにできるので、とにかく食べたい人はここでご飯の量を変え忘れないように。
なお、パネルに手を当てたまま注文に悩んでいると、下のロースターによって利き手を低温調理されてしまうので、注意が必要。
カルビとの接触

10分ほど待っていると、注文商品の第1便が到着した。最初に来たのは薄切りカルビセットで、机の溝にはめ込むようにトレーを置かれた。セットにはご飯の他にわかめスープとキムチが付いてくる。これが焼肉ライクでのデフォルトのセットとなる。
早速薄切りカルビを網に乗せ、他の肉を待ちながらキムチを口にしたのだが、予想を上回る辛さだった。ほんの数口で食べ終わってしまう量だが、存在感は抜群。焼いた肉に乗せるなどの楽しみ方もできるだろう。
薄切りカルビは文字通り薄い肉がスライスされているものなので、火の通りが非常に良い。そのため、店員が最初に設定する火力だと、一気に焦げ付いてしまう恐れがある。事前に弱火ぐらいにまで抑えると、丁度良い具合で焼けていくので弱火での調理がおすすめ。
続いて、遅れて届いたカルビと国産カルビを同時に調理する。火力は同じく弱火で十分だ。トレーの上に収まらなかったため、自分の所だけ約2人前の皿が並ぶという少々異様な光景。だが1人焼肉なので、周囲の目はあまり気にならなかった。

松屋などの牛丼で使われている薄い肉で小腹を満たしている身からすると、通常のカルビの時点で十分ご馳走に感じた。ほど良い肉厚もさることながら、自分好みの焼き加減で肉を食べられるので、これもまた1人焼肉のメリットだろう。
カルビを租借している時点でオキシトシンがドバドバ出ている状態だったが、国産カルビはそれを上回る美味しさだった。通常のカルビと50円しか違わず、薄切りカルビと同程度の肉厚なのに、肉を食べているという満足感を最も感じられた。なのでこれを読んでいる人には、ぜひ国産牛ともカルビをおすすめしたい。
カルビとタレを食べ比べる

今回の目的はカルビをたらふく食べることにしていたのだが、視界に入ってくる6種類のタレも気になっていた。これまで「淡麗あっさり生しょうゆだれ」で焼いた肉たちを次々味付けしていたものの、これまたせっかくなので全てのタレで肉を味わうことにしてみた。材料は最も残っていた薄切りカルビに決めた。
淡麗あっさり生しょうゆだれの直接的な兄弟とみられる「濃厚コク生しょうゆだれ」は、文字通りあっさり生しょうゆだれを濃く仕上げたような味。ご飯にそのままかけても、食べるラー油の要領でスイスイと進んでしまうような一品だった。
「ブランド焦がし味噌だれ」は、タレというよりも味噌につけて食べているような感覚だった。もちろんタレなので液状化しているのだが、薄切りカルビをバウンドさせてから食べると、濃厚コク生しょうゆだれとは違った形の濃い口当たりを楽しめる。肉を和風テイストで味わいたい人はこちらがおすすめかもしれない。
3種類のタレの背後で説明もなく佇んでいる3本のボトルのうち、最もタレの役割を果たしていたのがコチュジャンだ。キムチよりも辛さはマイルドでありながら、薄切りカルビにほど良いアクセントを加えてくれる。ピリ辛具合が肉の味を邪魔しないため、寿司のワサビと同じ役割を果たしているように思えた。
牛タンにおすすめと書かれたレモン汁は、これまでの濃厚さを全て吹き飛ばす、というと若干誇張表現になるが、それぐらい良いサッパリさを肉に加えてくれる。いずれの肉も客に提供される時点で味付けが施されているのだが、いわゆる素材の味を楽しみたい人にとっては最も適したタレ、もとい調味料になるのではないだろうか。
写真では隠れてしまったのだが、中央部分にすりおろしニンニクの入ったボトルが用意されている。よく言えば提供されたカルビの味を最も邪魔しない調味料なのだが、このニンニク味が最も無味のような気がした。その代わり、翌日の口臭にも少なからず影響を及ぼす可能性があるので、ランチタイム時には量を控えめにした方が得策かもしれない。

1人焼肉だけでなく、少人数焼肉にも?
最後の薄切りカルビを口に運び終わり、白米と共に食道へ流し込むと、時刻は18時を回っていた。店内にはスーツ姿の男性が続々と入店し、中にはビール片手に肉を黙々と焼いている人もいた。そして、2人組のお客さんが仲良く談笑しながら食事をしている姿もあった。
そう、あくまで1人焼肉がしやすいお店というだけであり、常識的な範囲であれば複数人グループの客で来ても問題ないのだ。座席は基本横並びになってしまうので、大人数で肉を焼きながらワイワイというわけにはいかないが、2~4人程度の少人数で気軽に焼肉を楽しみたい時にはうってつけのお店になるかもしれない。
個人的に唯一残念な点を言うと、支払いが現金オンリーだということだ。小銭をジャラジャラと持ち歩きたくないタイプなので、財布には必要最低限のお札しか入れていない。もう100グラムほどカルビを多く注文していたら、支払いを済ませる前にATMに駆け込むという痴態を晒すところだった。
もちろん、その一点だけでお店の評価が下がるわけがない。
