もともとはマネージャーの無茶ぶりによって、しぶしぶ始めたというInstagram。RGが“先行投資”の大切さを語った。
<レイザーラモンRG>
1974年6月8日生まれ、熊本県出身。あるあるネタやモノマネで知られるが、近年はInstagramのオシャレさが話題に。HKT48・指原莉乃を始めとした芸能人も真似する“キモ撮り”の名前は、RGが撮影に励む姿を見た妻の「キモッ!」という一言が由来。

「スタイルブックあるある」が詰まった1冊?
――『KIMODORI』は、装丁がとてもオシャレですね。表紙の紙からして違う……オシャレ……!
「この本を作るにあたって、編集者さんと一緒にスタイルブックというものを研究したんですよ。たとえばスタイルブックって、オシャレだけど無意味なページを見開きで入れたりするんですよ。あと『後半に自分のお気に入りの服をコメントともに載せがち』とか」
――「スタイルブックあるある」が詰まった1冊なんですね。
「読んだときにデジャヴ感はあると思いますが、『スタイルブックあるある』というのは言われるまで意識していませんでした。でも言われてみれば、たしかに『KIMODORI』は、『スタイルブックあるある』かもしれない。僕としては、目の前の笑いをとるのではなく、単純にスニーカーをかっこよく写りたいっていう動機だったんですけど、完成したものが結果的に笑いをとるんだったら、作ったかいがありました。1ページ単位ではなく、全体が笑いにつながっているってことになりますね」
――『KIMODORI』には、たくさんのスニーカーが登場しますが、何足くらい持っているんでしょう?
「ある映画でNBA選手が『1000足までは数えていたけど、それからは数えていない』って言っていたのを見て、たしかに数えるのってダサいなと思ったので、300からは数えていません。
――最低でも300足なのか……。すみませんが、うわさのキモ撮りの撮影を実践していただいてもいいでしょうか?
「いいですよ。じゃあ、いったん外に出ましょうか」

――よしもと本社の建物は、もともと小学校だからインスタ映えしそうですね。中庭も緑があって……。あれっ、RGさん! 中庭を通り過ぎて、うす暗い廊下で何をしているんですか!?
「普通は中庭を選ぶでしょうね。でも僕はこの渡り廊下の天井のサイバーな感じが好きなんですよ。スマホの角度を調節して天井が写るようにして、10秒後にセルフタイマーを設定して……(パシャッ)……どうぞ」



――いつものキモ撮りだ~! インスタ素人なので、廊下なんて全然チェックしていませんでした。
最前線に連れて行かれ「あとはお願いします」
――Instagramはどんなきっかけで始めたんですか?
「当時ついていたチャラい新人マネージャーが『これからはInstagramですよ』と言ってきたからです。だから初期は、よくわからないまま写真をアップしていました。『WEAR(ファッションコーディネートアプリ)』みたいな感じにしたいな、くらいで」
――どれくらいからInstagramに対する意識が高まっていったんでしょう?
「スニーカーをテーマにしたトークイベントを開催したんですよ。ダイノジの大地(洋輔)さんとか、マテンロウのアントニーとか、他の芸人さんにも集まってもらって、なんとか100人集まって成功したんですけど、直後にチャラいマネージャーが『2015年8月で赤坂BLITZ抑えました』って。マジか、と。チケットを売るために、なんとか世間にスニーカーの人だと認知してもらわないといけなくなったので、Instagramにも本腰を入れるようになりました」
――すさまじいマネージャーですね。
「ケツ叩くというより、何だろうな……。いきなり最前線に連れて行かれて、『あとはお願いします』みたいな。当時はかなりムカつきましたけど、今となってはありがたいですね。そうしないと人間は成長しませんから。STAP細胞だって何か厳しめの液体に浸けて、つらい目にあわせたら花開くんでしょう? 人間もSTAP細胞と同じです。『KIMODORI』は、若手社員のパワハラによって生まれた本だと言っても過言ではありません」
――STAP細胞に絡めてくるなぁ……。スニーカーの人として認知してもらうために、まず何から始めましたか?
「とりあえず毎週スニーカーを買うところから始めました。株と同じで先行投資しないといけないと思って、月5足ペースで増えていた時期もありましたよ。でも苦労したおかげで、いろんなショップの皆さんとも仲良くなれましたし、スニーカー好きの人たちともつながれましたし、スタイルブックも出せました。必死こいて何年間もやったことって、必ず何か戻ってくるんですよ。何百万円も使って、毎日こそこそ写真を撮ってアップした2年間がようやく実を結んできた感覚です。何事もそうですけど、『宝くじ買ってポンと当たるような簡単なことはない』とすごく感じました」
人生でも“伏線回収”はある
――RGさんは、基本的に真面目なんでしょうね。
「僕を語る上で“真面目”というキーワードは欠かせない。真面目にバイトしすぎて、芸人なのにビデオボックスの店長になって、仕入れやバイトの面接まで担当するようになりましたから。だから、こつこつスニーカーのことも頑張って……」
――しかし、本当に将来見返りがあるのか、わからない状態で先行投資を続けるのは、結構気が気でなさそうですが……。
「ゴールがあるわけじゃなかったですからね。とにかくスニーカーを頑張らなければならないという使命感を背負っていました。でも僕、人生でも伏線回収があると信じているんですよ。今まで真面目に頑張ってきたことが報われる瞬間って何度か経験しているんで。今、自分の腰が痛いことすら何かにつながっているんじゃないかと考えていますよ。腰が悪いことによって、自然と胸を張って姿勢がよくなっていますし。つながる瞬間の繰り返しだったから、『スニーカーをいっぱい買うけど、これを絶対仕事にするぞ』と信じていられました。『何かにつながるかも』って考える性格だから、普段から物を捨てられなくて困る部分もあるんですけどね」
――前向きなんですね。
「相方のHGが売れたあと、いろんな人に『お前はどうすんねん』みたいなことを言われて、顔にぶわーっとデキモノができたんですよ。
――プラス思考を心がけていたからこそ、無茶ぶりの中で先行投資を続けることができたんですね。今までのRGさんの人生の先に『KIMODORI』がある……!
「白鳥みたいに足をバタバタさせて、やっとキレイな本が出せました。『スタイルブック出したい』とか『かっこいいスニーカーほしい』とか簡単に思うかもしれないけど、見えないところではすごくもがいているんだ……ということを伝えたいですね」

(原田イチボ@HEW)