1月16日に『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第2話が放送された。(関連)
「家売るオンナの逆襲」泉ピン子を叱咤しながら涙を必死にこらえる北川景子の演技、咀嚼力!2話
家売るオンナ DVD-BOX/バップ

2016年放送『家売るオンナ』(日本テレビ系)の続編にあたる今回、前作にはいなかった人物が何人か登場している。
その中で最注目は、フリーランスの不動産屋・留守堂謙治(松田翔太)だ。彼は、無敵だった三軒家万智(北川景子)の今作におけるライバル的存在。三軒家と留守堂、それぞれの客への接し方を対比して観るとこのドラマはより面白くなる。

松田翔太は客の心に寄り添う


神子巴(泉ピン子)は決まりかけた契約をドタキャンする、気まぐれな高齢のひとり客。庭野聖司(工藤阿須加)が苦労して物件を探しても、ことごとく首を縦に振らない。

ある日、神子に飲みに連れ回された庭野は終電がなくなり、ネットカフェへ泊まることに。すると、先に帰っていたはずの神子と店内ですれ違う。慌てて自分の部屋へ戻る神子に、庭野は自宅へ帰るよう促した。
「ここにいる人たちは哀れです。帰りましょう、お送りしますから」(庭野)

そんな庭野を制したのは、留守堂だ。ネットカフェで泊まる神子を理解できない庭野に、留守堂は説いた。地方から上京したある女性客は、複数の女性と繋がる遊び人男と交際中。そんな彼が言ってくれた「一緒に暮らそう」の言葉を信じ、他の女性を整理するまで待っていようと彼女はネカフェ生活を続けている。
工事現場の作業員である男性は、毎日変わる現場から近いネカフェに泊まることで睡眠時間を確保する客だ。
「自分の部屋や家というものに価値を見出さない人だっているんだよ」(留守堂)

「アンタ、いいこと言うじゃない」(神子)
留守堂の言葉を聞いた神子は、遂に自分自身について語った。神子は住んでいたアパートが取り壊しになった。今から新たなアパートを探しても「孤独死されたら困る」と、断られる一方だ。新たに新居を購入しても、1人で住んでいれば結局最後は孤独死。お金があったって孤独。誰かしら気にかけてくれるネットカフェは、彼女にとって安心な場所だった。孤独死を恐れて涙を流す神子に、留守堂は寄り添った。
「ここも悪くないですよねえ」
「寂しいですよねえ。僕もひとりぼっちなんです。神子さんの寂しいお気持ち、よくわかります」

北川景子は客が気付いていない居場所を売る


三軒家の出方は、留守堂と異なる。彼女は神子が定宿にしているネットカフェを買収。オーナーになり、このカフェを閉店する手に出たのだ。
共感して寄り添ってくれた留守堂と正反対の言葉を、三軒家はネットカフェ難民たちに投げかけた。

「こんなところは一気に潰して、なくしてしまったほうがいい!」
「あなたは孤独死が怖いからと、ここで暮らしています。しかし、人の死に孤独でない死はありません。1人で死のうと大勢の家族に囲まれて死のうと、人は1人で死ぬのです。いい年をコイてそんなこともわからない人間は甘ったれという他ありません!」
「この店にいる全ての者は、頑張ることから逃げている甘ったれです。今日踏ん張ることのできない甘ったれ人間に、明日の朝日は見えなくて当然。『明日から頑張ろう』なんて言い訳をコイている人間には、どんな未来も訪れないのです!」

神子は涙を流して三軒家に反論した。
「今日頑張れなかった人間にも明日は来ちゃうんだよ。人生続くんだ! だから、人間は苦しいんだ」
「必死で頑張ったって、できない奴はできないんだよ! ここにいるみんなは、そういう人生が詰まってんだ。世の中には吹き溜まりだって必要なんだよ。吹き溜まりが無かったら、私たちはどこで吹き溜まればいいんだ!」

力強く「この場所は必要」と意思表明した神子を見て、三軒家は提案する。
「ならば、あなたがここを私から買い取り、“吹き溜まりの殿堂”をお作りになったらどうですか?」

人生に迷う客がいれば、客本人も気付いていない最善な居場所を三軒家は提供してあげる。
客に共感して寄り添うところまでは行ける留守堂。それより一歩進んだところまで考えるのが三軒家。誰も損をせず、それでいて家を売ることで問題を解決している。時に強引過ぎるきらいもあるが……。
「優しさだけでは家は売れない!」(三軒家)

明らかに涙をこらえていた北川景子


「家を売る」というガワなのでわかりにくいが、今作は社会派ドラマである。第2話が取り上げたのは、「ネットカフェ難民」と「孤独死」だ。

身近な問題である。人はそれぞれ、みんな違う。その人にはその人なりの生き方があっていい。自分がどんな風に生きていくか、生き方を選ぶのは自分自身であるべき。若者でも高齢者でも、それは同じ。そんなメッセージを“優しさ”に包んで訴えたのが今回だったと思う。
第2話を録画している方は、神子が三軒家に反論している場面をもう一度観てほしい(Huluで全話配信中)。
神子の言葉を正面から受け止める三軒家……北川景子が、こぼれ落ちる感情を必死にこらえようとしているのだ。目が潤んでいるのは、瞬きを我慢してるからじゃない。演者全員が脚本を咀嚼し、メッセージを理解してからドラマに臨んでいる。

時事問題をナチュラルに取り上げ、多種多様な立場や意見を拾い上げ、誰も思いつかなかった発想で三軒家に解決させる気持ち良さ。誰一人損をしない、幸せなエンターテイメントとして着地しているから、脱帽なのだ。

三軒家と留守堂にある因縁は?


今、最も気になるのは留守堂の正体だ。彼は過去に三軒家がホームレスを経験していたことを知っていた。三軒家と留守堂の間には、何か因縁がありそうである。

仕事では完璧なのに、たまにドジな素顔を見せる留守堂。例えば、今回はドアの前で幾度も右往左往していた。押さないと開かないドアを引き続け、引かないと開かないドアを押し続け、困惑している、よくわからない抜けっぷりである。

このくだりは伏線な気がする。
ひょっとして、彼にもホームレスだった過去があるのでは? ドアに馴染みがなく、慣れていないから右往左往したのではないだろうか? 加えて「ネットカフェには家を買う客が大勢いる」と、三軒家と留守堂は発想がイチイチ似ている。
(寺西ジャジューカ)

『家売るオンナの逆襲』
脚本:大石静
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈。柳内久仁子(AXON)
協力プロデューサー:水野葉子
演出:猪股隆一、久保田充 他
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
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