このドラマの主役は、目を合わせた相手の隠れた内面や原風景が見える特殊能力を持つ派遣社員の的場中(杉咲花/以下、アタル)だ。

つらすぎる志田未来が杉咲花の過去を発見する
司法浪人中の同棲相手、つまりヒモ男を養っている神田は自己肯定力が低い女性。仕事は失敗ばかりで、常にまごまごしている。笑い方はどこかうざったく、笑ってごまかす感じが見ている者をイラつかせる。彼女はナメられやすく、攻撃されやすいタイプだ。そんな神田が派遣社員としてやって来たアタルの教育係に任命された。
職場はアタルの歓迎会を居酒屋で開催した。でも、予定のある神田は出席したくなかった。神田は妊娠しており、この日に彼氏へ打ち明けようと決意していたのだ。
しかし、抗えず歓迎会へ出席した神田。彼女はウーロン茶を注文したが、これも認められない。同調圧力で全員がビールを飲む流れになった。
そもそも、その気のない彼との間に子どもを授かったのもこんな流れだった気がする。抗えず、避妊のない性行為に至った。そんなことの連続が神田の人生だったのでは? 仕事の不条理、不誠実な同棲相手。それらに抗えず、流されていく神田。
彼女の日常に、さらなる苦しみが積み重なった。同棲相手に妊娠を打ち明けると「保育園は空きがないし、教育費もかかるし、俺が司法試験受かるまで子どもは待った方が賢明」と、避妊しなかったことも忘れてクズな答えを返してきたのだ。一方、仕事では大失敗を犯してクビの可能性が出てきた。
追い詰められた神田は堕胎しようと産婦人科を訪れる。しかし、寸前で“天才占い少女”として脚光を浴びる幼少期のアタルの動画を発見。
神田は「自分を見てほしい」とアタルに懇願した。
占いというより悩み相談
正直、現時点ではこのドラマの楽しみ方をまだ掴めていない。てっきり、アタルが物凄い能力を発揮し、苦しみから立ち直る道標をズバッと示してくれると期待していたのだ。
占いを始めたアタルの態度は豹変する。言葉遣いはキツくなり、上から目線で神田と接するようになるのだ。そんな彼女が行ったのは、占いというよりカウンセリングの類のものだった。アタルが神田に授けた助言は、要約すると大きく3つ。
●ありのままの自分を大事にしろ
●自分を愛せ
●誰にでも自分にしかできないことが必ずある
これだと「占い」ではなく、誰でもできる「悩み相談」の域に留まってしまっている。弱いのだ。心の奥底を深くえぐってほしい。神田だけでなく、観てる我々の心にも掻き傷を残してほしい。もっともっとエグく行くべきだと思うし、視聴者はそれを望んでいる。だって、こここそ最大の見せ場のはずなのだから。ハッとしたり、ドキッとしたり、赤面したり、占われる側が大きく揺さぶられ、人生の転換期としてふさわしい瞬間にしてほしいのだ。
結局、神田の状況が好転したのは、本人の頑張りが要因だった。
今回の逆転劇と占いの因果関係は薄い。何のための占いだったか。
『ハケン占い師アタル』初回に限っては、主演は神田和実。アタルは神田の引き立て役に収まった。
遊川和彦による第1話はまだ様子見
アタルが所属する部署の面々は、みんなキャラが立っている。声が大きく説教臭い上野誠治(小澤征悦)、気はいいがコネ入社で腫れ物のように扱われる目黒円(間宮祥太朗)、無気力な品川一真(志尊淳)、有能だが常にイライラしている田端友代(野波麻帆)、NOと言えないキャパオーバー寸前の中間管理職・大崎結(板谷由夏)。
このドラマは、毎回アタルが社内の1人1人を占い、アドバイスを送ることで苦しみから救い出す内容になっていく気がする。今回を機に、何だかんだで変わり始めた神田のように。予告によると、次回のアタルは目黒のことを占う模様。
もちろん、アタル自身のことも知りたい。
初回は、まだ様子見。人物紹介を兼ねた第1話だったと思う。アタルが本領を発揮するのは2話以降か? 占いでアタルと関わった人間がどんな風に変わっていくのか、期待をしたい。遊川和彦脚本に初回のみで結論を出すのは早計である。
(寺西ジャジューカ)
木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中