『デイアンドナイト』 ストーリー
父が自殺し、実家へ帰った明石幸次(阿部進之介)は、父が大手企業の不正を内部告発したことで死に追いやられたことに言いようのない想いを抱えていた。父の無念を晴らしたいと、事件の真相を調べ始めると、生前の父に世話になったという、児童養護施設のオーナー・北村(安藤政信)から声をかけられる。その後、北村の下で働きながら事件を調べようと考えた明石だったが、実は北村は児童養護施設の資金調達のための犯罪を行っていた。子どもたちのためなら犯罪も厭わないという北村の信念に、最初は違和感を持った明石も、徐々にその姿に魅せられて行く。そして、事件の真相が少しずつ明らかになるなか、明石は復讐心に支配されていってしまい……。
フィクションだからリアルではない、とは違う

『デイアンドナイト』は役者である山田孝之氏がプロデュースという形で作品に関わっている。近年、彼は“演者”にとどまらず、“表現者”として作品に関わってくることも増えてきた。
僕は彼と同世代ということもあり、彼の出演する映画やドラマは自然と観てきている。映画『その夜の侍』で演じたような、人間の闇の部分を表現した役柄が増えたこともそうだが、『山田孝之のカンヌ映画祭』で見せたような、見る側に「どこまでが本当なのだろうか?」と感じさせる表現はとても興味深かった。


そんな僕が本作を通じて感じたのは、彼が様々な作品に出演したてきた経験もそうだが、彼の中で“人間というもの”への興味や探究心がどんどん深まってきているのではないかということだ。
『デイアンドナイト』は不安定な生き物である“人間”が社会という縛られたルールのなかでどう感じ、どう生きるかを描こうとしている。物語自体はフィクションなのだが、その実はとてもリアルな現実に思える。今回はプロデューサーとして関わっている山田だが、自身が出演せずとも、作品を通して表現者としての山田孝之の真意を探れるのも本作の魅力である。
誰も傷つかない世の中なんてない

“大切なものを守る為には犯罪も厭わない”という北村の信念は、主人公である明石の心情にも影響するものではあるが、この映画はその倫理観の是非を問うものではないと僕は思う。犯罪、復讐、罪、生きるとはどういうことか? など、繊細で答えを導くのが複雑なトピックが多いが、それこそが“人間が誰もが備えている自然なもの”だとういのをシンプルに伝えようとしているんじゃないだろうか。
本作に出てくる“正しさ”という言葉は、これまでの人の歴史の中で作られた社会的な基準に過ぎず、それに完全な正解、不正解は存在しない。明石は父の自殺の事実関係を明らかにしようとするが、真実に近づくにつれて、父の正しさは誰かを救ったのではなく、誰かを傷つけたかもしれないというジレンマで苦しむ。そして、無念を晴らすことはやがて復讐へと形を変えていく。

誰かを傷つけることが単純に悪だというなら、誰かを愛したり、愛されたりする恋愛ですら悪という要素を含んでいることになる。誰かに傷つけられたからこそ、幸せになりたいと願うし、誰かを憎むからこそ、強くあろうと思い、生きたいと願うからこそ、死にたいと感じる。正しさとは、誰かが完全に決められることではない。大切なのは理屈やそれが正しいかどうかではなく、その答えに至った決意なんだと僕は思う。
<プロフィール>

ヤマモトシンタロウ
ロックバンド『LEGO BIG MORL』のリーダーでベースを担当。『LEGO BIG MORL“Something New”2019』を3月5日に名古屋、3月7日に大阪、3月14日に東京で開催。バンド結成記念日である3月28日には、結成地である大阪にて『BIRTHDAY in BIRTHPLACE 2019 〜いよいよ大阪凱旋〜』を開催する。
https://www.legobigmorl.jp/
https://twitter.com/chin_taurou
作品情報

映画『デイアンドナイト』
出演:阿部進之介、安藤政信、清原果耶、田中哲司 他
企画:阿部進之介
プロデューサー:山田孝之、伊藤主税、岩崎雅公
監督:藤井道人
脚本:藤井道人、小寺和久、山田孝之
公開:1月26日(土)全国ロードショー/秋田県先行公開中
公式サイト:https://day-and-night-movie.com/
(C)2019「デイアンドナイト」製作委員会