1月18日(金)ドラマ『トクサツガガガ』(NHK)が放送スタートした。原作は、雑誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載中の同名漫画だ。

主人公の仲村叶(かの)(小芝風花)は、特撮ヒーローが大好きな「特オタ」で、それを母親や周囲に隠して暮らしている。職場の同僚たちからは、いつも笑顔で優しく家庭的な女性だと思われている叶。しかし、頭の中はいつも特撮ヒーローのことでいっぱいだ。
「仲間はほしいが、オタバレ(周囲にオタクだとバレてしまうこと)したくない!」という叶が、オタバレの危機を乗り越えながら日々を前向きに生きていく。

オタクに刺さる名言連発!原作ファンも納得の出来
もともと原作は、特撮ヒーローに限らず、アニメやアイドル、鉄道、宝塚など「大好きだけど、他人には言えない趣味」を持つ人の心に突き刺さることで人気の漫画だ。その要因の一つが、漫画に向かって「わかる!」と言いたくなってしまうほど、オタクの気持ちを的確に表現した台詞。
オタバレを過剰に怖がっている叶に対して、つい「好きなら堂々とすればいいのに」と思ってしまう。ドラマの中でも、同じ会社で働く社員が美少女アニメ好きを隠している男性について同じことを言っていた。その言葉を聞いて、叶は憤る。
叶「自分の好きなものを、悪く言われたり嫌われたりするのって、ものすごく怖いことなんだよ!」
幼少期の叶は、特撮ヒーローを好きな気持ちを母親(松下由樹)に散々否定されていた。好きなものを好きでいると叱られたり馬鹿にされたりする。そうして傷ついてきた叶は、「言えばいいのに」を簡単に受け入れられない。
叶「私の金ぇ、何に使おうが私の自由やろがい!」
好きなヒーローのキーホルダーがほしい叶。
カラオケ怪人「自分の趣味ばかりで、一般的なものを嗜まなかったツケだ! どうしようもないクソオタなのを隠してきた罰だ!」
普段の叶は特ソン(特撮ソング)しか聞かないため、同僚とのカラオケで歌える曲がない。何を歌えば良いのか悩む叶の頭の中にカラオケ怪人が出現。叶に痛烈な言葉を浴びせる。
原作からオタクの心に刺さる言葉をピックアップする脚本に、原作ファンからの期待が高まっている。

世界観を支える画面の彩度と作り込み
ドラマが忠実なのは、原作に対してだけではない。ドラマ内に登場する戦隊ヒーロー「獅風怒闘ジュウショウワン」や「救急機エマージェイソン」などは、東映の協力を得て制作されていて、スーツも動きも本格的だ。
筆者が一番「おおっ!」と驚いたのは、画面の色味。ドラマ内に架空の特撮ヒーロー番組が登場する作品は多数ある。その中で、彩度をドラマパートに合わせてしまい実際のヒーロー番組と違いすぎる色合いのが撮られている場合、ヒーローが浮いてしまい「なんか違う」感が醸し出される。
本作では、ドラマパートの中にヒーローが登場する場面がある。

「円盤」「特オタ」「カプセルトイ」「特ソン」など、オタク用語の注釈がつく親切設計。見る人に丁寧に届けようとするその姿勢は、2018年1月期のドラマ『女子的生活』(NHK)を思い出す。
見る人にとってトランスジェンダーを知るための導入となるように、『女子的生活』も心情はもちろんジェンダーに関する用語の説明を欠かさなかった。『トクサツガガガ』もまた、オタクや好きなものを好きと言えない人を知る入門編になるようなアプローチをしてきている。「知ってもらうため」の番組作りに長けているのは、さすがNHK。(ドラマ『女子的生活』レビュー記事はこちら)
今夜放送の第2話では、叶が「トライガーの君(きみ)」とヒーローショーを見に出かける。トライガーの君は、叶の仲間になってくれるのか。
(むらたえりか)
▼配信サイト
・NHKオンデマンド
ドラマ10『トクサツガガガ』(NHK)
2019年1月18日(金)スタート
毎週金曜 よる10時から10時44分(連続7回)
出演:小芝風花、倉科カナ、木南晴夏、森永悠希、本田剛文(BOYS AND MEN)、武田玲奈、内山命(SKE48)、寺田心、竹内まなぶ、松下由樹、ほか
ナレーション:鈴村健一
原作:丹羽庭『トクサツガガガ』(ビッグコミックス)
脚本:田辺茂範
音楽:井筒昭雄
主題歌:ゴールデンボンバー『ガガガガガガガ』(Zany Zap)
演出:末永創、新田真三、小野見知
制作統括:吉永証