「働くこと」をテーマにしたテレビ東京のビジネスドラマ枠「ドラマBiz」の第4弾『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』(テレビ東京・月曜22:00〜)がスタートした。

これまでの同枠は、江口洋介主演の『ヘッドハンター』、仲村トオル主演『ラストチャンス〜再生請負人』、唐沢寿明主演『ハラスメントゲーム』と、ベテランおじさん俳優を主演に据えたビジネスドラマが続いていたが、今回は真木よう子主演。


ビジネスドラマというと、どうしても「男たちのドラマ」みたいなイメージが強くなってしまうところだが、「男女共同参画社会」が叫ばれて久しいだけに、この「ドラマBiz」枠でも、ここらで女性によるビジネスドラマを作っておかないと……といったところだろうか。

バブルの残り香漂う原作をどうアレンジしたのか!?


よつば銀行頭取・鳩山英雄(古谷一行)の
肝いりでスタートした「輝く女性プロジェクト」の一貫として、台東支店の営業課長に大抜擢された原島浩美(真木よう子)。

即戦力の営業を要請していたにもかかわらず、営業未経験の女性を営業課長として送り込まれた台東支店側では「本部はここ(台東支店)を貶めようとしているに違いない」と、疑心暗鬼になっていた。

台東支店支店長・山田太平(寺脇康文)は、浩美が敏腕なのかポンコツなのか見極め、本部の真意を探るため、紳和商事との新規取引を1ヵ月以内に獲得することを命じる。

原作は、1993年から1997年にかけて連載された周良貨原作、夢野一子作画の漫画『この女に賭けろ』。

バブル崩壊直後の銀行を舞台に、ゆるふわな雰囲気でありながら、妙に鋭い観察眼と巻き込み力を持つ女性総合職・原島浩美がビシビシ出世していって、遂には女性初の銀行頭取をうかがうまでにのぼり詰めるというビジネス漫画。

今回の紳和商事のエピソードは第1巻で描かれており、大まかなストーリー展開は原作に忠実なのだが……。

20年以上前に連載されていた作品だけに、今読み返すとバブルの残り香が漂い過ぎていて、さすがに時代を感じさせる。

それでも、銀行&社会全体の景気の悪さや、ビジネス現場における女性差別など現在に通じる要素も多く、上手く現代版へとアレンジすればいいドラマになるはず!

……と思っていたものの、第1話を見た限り、その現代化がいまいち上手くいっていない印象だ。

紳和商事がメインバンクである丸菱銀行からの勧めで、中国企業とのM&Aを受け入れようとしているなどと、取って付けたような現代っぽい要素は追加されている。

しかし、M&Aに応じなければならないほど追い詰められている会社が美術品を買いあさっているのは違和感があるし、長年のメインバンクが、ちょろっと調べれば乗っ取りグループであることが明白な企業とのM&Aを勧めてくるというのも頭が悪すぎる。

銀行員が「添付書類」で重要データをやり取りしているあたりも「セキュリティー!」とビビッてしまった。今時、そんなユルユルな都市銀行ないよ。


どうも、最近のビジネス事情に詳しくない方が脚本を書いているのでは……と思ったら、朝ドラ『とと姉ちゃん』で何かと物議を醸していた西田征史!

……今後、軌道修正してくれることを願う!

もっと怖〜い真木よう子が見たい


現代版へのアレンジのまずさ以上に気になったのが、そもそも真木よう子は原島浩美役にハマッてるのか問題。

これが、「男性社会に立ち向かう力強い女性」みたいな役柄であればいいのだが、原島浩美は朝に弱い、ゆるふわでかわいらしいキャラ。仕事は敏腕であるものの、あくまでマイペース。バリバリ仕事をこなすというタイプではない。

そんな原島浩美を演じるにあたって、「常に微笑んでいる」という、ゆるふわな役作りをしてはいるものの、真木よう子じゃ明らかにキレ者感が強すぎるのだ。

「ファイルを添付するのを忘れちゃった〜」みたいなゆるふわエピソードも、真木よう子がやっていると、「裏で何か企みがあるに違いない!」と勘ぐってしまう。

原作でいうならば、ニューヨーク支店帰りで
上昇志向バリバリの日比野聖子役の方がハマッていると思うのだが。

第1話で、そんな真木よう子演じる原島浩美に目を奪われてしまったのが、上司の不祥事を内部告発し、

「よつば銀行の名誉を守るためにも、この事実を公にすべきです」

と、当時、人事担当役員だった島津雅彦(柳葉敏郎)に詰め寄って、土下座させているシーン。

黒髪ロングヘアー&クソ恐ろしい眼光でギバちゃんを見下している真木よう子はまさに鬼! 震えるほど美しく、オーラをビンビンに放っていた。

やっぱり真木よう子に求められるキャラはこっちでしょう。微笑んでる場合じゃないよ。
「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!」隠しきれない真木よう子の眼光1話。バブリー名作の現代版成否を考察
イラストと文/北村ヂン

この内部告発が原因で、上層部から疎まれて出向に出されることに。
その間、髪型も変え、キャラ変し、何だかんだでずっと微笑んでいる原島浩美が誕生したようだ。

この過去のくだりは原作にはないエピソード。あの怖〜い真木よう子の、何がどうなって微笑みキャリアウーマンになってしまったのか!? 興味深いところだ。

ゆるふわに見えて、本気を出すと鬼! ガンガン上司たちを追い込んでいく……みたいな、新たな原島浩美像を期待しつつ、第2話以降も見守っていきたい。
(イラストと文/北村ヂン)

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『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』(テレビ東京)
原作:周良貨(原作)夢野一子(作画)『この女に賭けろ』(講談社刊)
脚本:西田征史
演出:星野和成、小野浩司
オープニングテーマ:NEWS「トップガン」(ジャニーズ・エンタテイメント)
主題歌:スガシカオ「遠い夜明け」(Victor / SPEEDSTAR RECORDS)
音楽:信澤宣明
プロデューサー:稲田秀樹・阿部真士(テレビ東京)・八巻薫(MMJ)
制作:テレビ東京、メディアミックス・ジャパン
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