1月23日に『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第3話が放送された。(関連)
「家売るオンナの逆襲」LGBT問題と向き合う北川景子はドライだった。大事なのは理解じゃない3話
家売るオンナ DVD-BOX/バップ

前回のレビューでも言った通り、今作は社会派ドラマである。
第3話で扱ったのはLGBT。このテーマだと『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)を連想しがちだが、あの作品は恋愛ドラマを作ろうとして、それがたまたま男性同士になっただけと制作陣が明かしている。一方、今作は「社会の中のLGBT」とがっつり向き合った。

マンションの現地販売会を担当する庭野聖司(工藤阿須加)は、1人でやって来た男性客を案内。実は、この男性はゲイだった。自らのセクシャリティをキッパリ告げてくる客に面食らう庭野。でも、LGBTの客が来るなんて自然なことのはず。まして、不動産業に勤めているのなら。
「だって、13人に1人はLGBTなんだから」(男性客)

LGBTの描き方に賛否


「LGBT/SOGI監修」としてLGBT社会運動家の松中権氏が参加した第3話。基本的には慎重にLGBTを取り上げていたが、それでも賛否を起こす場面は存在した。すでに話題の、レズビアンカップルの態度についてである。

内見中、浴室で2人きりになった彼女らはいきなりキスをした。メッセージを明瞭にするためだとはわかる。
しかし、人前で露骨にイチャイチャするのがLGBTカップルだと誤解されかねない描写だった。カップルの内の1人は「私たちが愛し合ってることはそんなに恥ずかしいことなの?」と口にしたが、胸を張ることと人前でイチャイチャすることは決してイコールではない。どこか、LGBTを誇張して描きすぎている気がするのだ。“我々のようなストレートとは別にいるLGBT”というスタンスが色濃すぎると思う。

庭野が案内した男性客は、ゲイだと伝えて驚く庭野に「無礼で無知で最低だよ」と言い放った。人前でイチャイチャするレズビアンカップルも然り。自分を認めさせようと無闇に攻撃的になると、ストレートとの溝を逆に大きくしかねない。そして、そこまで露骨に攻撃的になる人はあまりいないと思うのだ。権利を主張するために何が必要か、それくらいはわきまえている。

「理解し合えると思うことは傲慢」(三軒家)


新しい家を探す木村真奈美(佐藤仁美)は、夫の剛史(池田鉄洋)がトランジェスターであることに苦悩している。一人娘は中学生。難しい年頃だけに、家庭に女性性を持ち込まないでほしいと夫に望んでいる。


三軒家万智(北川景子)は庭野ら男性社員に女装させ、その格好で木村夫妻を案内した。
「不愉快! 帰ります」(剛史)
「あんなふざけた女装で、この人に理解を示したつもりでいるの? あなたたちは全くわかってない! この人は私のことも娘のことも大好きだけど、父とか夫とか社会から男として扱われることが苦しくて耐えられないんです!」(真奈美)

三軒家は2人が信頼し合っていることを見抜いていた。真奈美を怒らせ、剛史の苦しみを思いやっていると自覚させようと、わざと剛史を茶化す状況を作り出した。

「わかりません! 残念ながらわかりません。あなたのお気持ちも、あなたのお気持ちもわかりません」(三軒家)
今回の切り口、着地点は見事だったと思う。LGBTを理解しようと無理に促すのではなく、生き方の多様性を受け入れようという矢印になっていたからだ。理解できずとも「自分とは違う人がいる」と認め、だからこそ相手を思いやる気持ちが大事だと提案している。3件の現地販売会それぞれにLGBTの客が訪れたように、多種多様な生き方が頻繁に交錯する時代には尚更である。
「人の気持ちなぞ、理解できなくて当然だ。理解し合えると思うことこそ傲慢である」(三軒家)

三軒家の態度が小気味良い。LGBTそのものへ不必要に深入りしないのだ。「家を売ることだけを考えろ。
お悩み相談などどうでもよい」というポリシーを貫くからこそ、木村家を苦しみから解放した。「将来、別々のパートナーがおできになってもお部屋の数に困ることはありません」というドライな提案も、多種多様が共存する時代にドンピシャだった。木村家のような夫婦は、きっとどこかにいると思う。
(寺西ジャジューカ)

『家売るオンナの逆襲』
脚本:大石静
主題歌:斉藤和義「アレ」(スピードスターレコーズ)
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、柳内久仁子(AXON)
協力プロデューサー:水野葉子
演出:猪股隆一、久保田充 他
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
編集部おすすめ