1月24日に『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第2話が放送された。

1人の社員の抱える問題点が浮き彫りになり、的場中(杉咲花/以下、アタル)が占うことによってその社員が成長する……という流れがこのドラマのフォーマットのよう。
今回は、周囲から腫れ物のように扱われるコネ入社の社員・目黒円(間宮祥太朗)の番だ。
「ハケン占い師アタル」感情移入不可避の間宮祥太朗、大事なことは占いで答えを導き出さない杉咲花2話
イラスト/Morimori no moRi

止まらない目黒への感情移入


今作でアタルは狂言回しの役を担っている。よって、ドラマ中盤までは目黒を取り巻く現状が存分に描かれた。

目黒のキャラクターがたまらないのだ。性格は良くて、純粋。しかし、金持ちの家で育ったゆえ、学生時代は周囲から財布扱いされ、本当の友だちができなかった。でも、めげない。
社会人になると、頑張ってどうにか周囲に認められようとした。しかし、能力の低さと出自のせいで煙たがられる一方……。
ハッキリ言って、目黒からは悪いところがあまり見当たらない。逆に、コネ入社だからと目黒を育てようとしない周囲へ物申したくなる。数度のミスで何もできないと決めつけ、雑用しかさせなくなった上司のほうがいかがなものか。目黒への感情移入は不可避だった。


目黒が所属する制作Dチームは、特撮ヒーロー番組の新グッズを発表するイベントのコンペへ参加することに。全員が手一杯の中、大した仕事を任されていなかった目黒のみ余裕のある状況。周囲が心配する中、本人の熱烈立候補で彼がコンペを担当することとなった。

Dチーム全体に心配の空気が漂う。課長の大崎結(板谷由夏)と上野誠治(小澤征悦)が、目黒の扱いで揉めている。
大崎 上野君もさあ、文句ばっかり言ってないで、そろそろ部下を育てることを考えないと。

上野 お前こそ部下を甘やかしすぎなんじゃないのか?
目黒 まあまあ、ケンカはやめましょうよ。俺たち、仲間なんだし。

前向きが過ぎてKYな目黒に、上野はキレてしまった。
「ここにいる奴らは誰もお前のこと、仲間だと思ってねえからさ。お前はさあ、たまたま同じ職場にいるただのコネ入社なんだよ!」

さすがの目黒も、これには落ち込む。あまりの落ち込みを見るに見かね、神田和実(志田未来)はアタルに目黒を占うよう懇願した。
仕方なく、アタルは目黒を占った。

特殊能力はとっておきの能力ではない


毎回、アタルへの質問は3つまでと限定される。その内の2つの質問に対し、アタルは占わず助言を授けるだけである。今回の目黒からの質問とアタルの回答は以下だ。

Q:俺はなんでモテないのかなあ?
A:中身がないからフラれんの!

Q:褒められたいんだけどどうすればいいかなあ? 昔、ママはメチャクチャ褒めてくれたんだけど、それ以外褒められた記憶がなくて。
A:少しは大人になれよ!(妻が死んだのに息子の前で泣く姿を見せるわけにはいかなかった父の気持ちを目黒はまだ理解できず、幼少期の傷に囚われ続けていた)

Q:俺に何かいいところはあるのかなあ?
A:「中身が空っぽ」に決まってんだろ。普通の人間が持ってる邪気とか悪意が全然ない。
だから、いつも明るくがんばってこれたんだろ? 今までどおり自分らしさ失わずにいたら、必ず誰か手を差し伸べてくれるって! この世に1人もいないっつうの、誰にも必要とされない人間なんて。

「ありのままの自分を大事にしろ」というアドバイスは、1話で神田に授けたアドバイスと同じもの。「誰にも必要とされない人間はいない」も然り。要するに、どちらも特殊能力によって導き出された回答ではないのだ。前回のレビューで「誰でもできる悩み相談の域に留まっている」と書いたが、それは批判ポイントではなかった。背中を押したりケツを引っ叩くことこそアタルの鑑定の肝である。

「俺はなんでモテないのかなあ?」と「俺に何かいいところはあるのかなあ?」に対するアタルの回答を確認してほしい。どちらも「中身がない」だ。短所だと思っていた面も、ありのままの自分を愛していたら長所に転換される。アタルの鑑定には、そんな裏メッセージが貫かれている。

アタルは、過去に遡れる特殊能力を持っている。でも、それを鑑定の肝にしていない。メッセージが一貫してるのだから当然だ。母親のことを聞かれ、狼狽していたアタル。特殊能力ゆえ、サングラスの着用を余儀なくされたアタル。特殊能力の使いどころをとっておきにしていないのは、能力のせいで苦しんできた彼女ならではな気がする。

小澤征悦と野波麻帆の回に期待


感情移入しやすい目黒をフィーチャーした第2話は、ひそかに神回だった。アタルは背中を押したのみ。成長を果たすのは、あくまで自分の力によって。だから、自力で踏み出す目黒の変化に感動したのだ。

こうなると、他の社員にどんな変化が起こるのかも楽しみになる。何かしらのトラウマを抱える社員によって成り立つのがDチーム。注目は、声が大きくて説教臭い上野と、有能だが常にイライラしている田端友代(野波麻帆)だ。この2人に、アタルはどんな占い(説教)をするのか? 特に、“元エリート”の上野が大きな闇を抱えてそうな気がするのだ。

次回、第3話の主役は品川一真(志尊淳)。上野の下につき、パワハラまがいの扱いを受け、転職を熱望する入社1年目である。上野と品川は、見るからに水と油だ。何しろ、上野発(下り)の新幹線と品川発(下り)の新幹線では向く方向が違う。
(寺西ジャジューカ)

木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中