朋美「え? どういう意味?」
小夜子「あるんです、耕造さんの遺言状が」
1月29日(火)放送のドラマ『後妻業』(フジテレビ系)第2話。原作は黒川博行の同名小説だ。
内縁の夫である耕造(泉谷しげる)が死に、小夜子(木村佳乃)は柏木(高橋克典)とともに耕造の遺産約4,000万円を手に入れた。遺産を相続するのは自分だと言い、小夜子は耕造の娘・朋美(木村多江)に啖呵を切る。その態度が我慢ならない朋美は、本多(伊原剛志)に協力してもらい小夜子の過去を暴こうとしていた。

死してなお泉谷しげるの存在感
小夜子「どえらいお宝じいさんや〜ん!」
小夜子と柏木は、耕造の入院中に鍵師を呼んで金庫を開けた。中に入っていた定期預金、投資信託、株券を合わせて4,000万円以上。二人で折半ということにする。
病院では、医師から耕造の転院を促される。転院先が決まらなければ在宅介護だ。娘の朋美と尚子(濱田マリ)は、二人とも引き取るのは無理だと言って耕造の介護を押しつけ合う。二人のそんな姿を、小夜子は何か言いたげに横目で見ていた。
「じいさんの金は手に入った。もう、いつ死んでもええやろ」と柏木に言われ、小夜子は注射器で耕造の静脈に空気を入れる。小夜子が聴いていたのは『レクイエム』。
レクイエムを聴いたり教会に祈りに行ったりと、小夜子には気持ちの拠り所になるルーティンがある。また、祈りの最中には耕造の姿を思い出していた。そうした設定や演出は、小夜子がただの金銭目的や心の穴を埋める目的で後妻業をしているわけではない、ということを訴えてくる。
耕造が死んだとき、後妻である小夜子と娘の朋美が「耕造さん!」「お父さん!」とお互いを押しのけ合って耕造に泣きついていた。それを呆れたように見つめる尚子。耕造そっちのけで意地を張り合う二人の、コントのような一幕だった。
女たちのパワフルな生命力を前にしても、なお存在感がある死体。死んでも空気になりすぎず、コントにも溶け込める。わかりやすくチャーミングな存在感を持つ泉谷しげるが耕造役を担ったことに、ここで妙に納得した。
わかってきた小夜子と朋美の共通点と相違点
原作や映画版と違い、ドラマ版の小夜子と朋美は45歳の同い年という設定になっている。
耕造と小夜子のことがあり、朋美は東京と大阪を頻繁に行き来するようになった。事実婚の夫・司郎(長谷川朝晴)は、朋美が外出するたびに事務所のスタッフ・絵美里(田中道子)との仲を深めている。終電の心配が必要な遅い時間まで司郎と絵美里が二人きりで事務所にいると知り、朋美は浮気が心配になる。でも、何も言えない。
内縁の妻という立場でも、臆せず欲しいものを全部もらう小夜子。対して、内縁の妻という立場に引け目を感じ、浮気の気配にも何も言えない朋美。
婚姻関係よりも、事実婚関係は法的に弱い部分がある。小夜子はその弱さをも後妻業のために利用するが、朋美は弱さに不安を感じる。もしかしたら、同じ立場でありながら自由で傍若無人な小夜子に、朋美は羨ましさすら感じるかもしれない。
事実婚であることに不安を感じる朋美を、本多が「俺も、籍は入れてへん。中瀬(=朋美)とおんなじや」と励ます。小夜子には、朋美にとっての本多のような共感し励まし合える仲間がいない。
二人の女たちが、お互いの持っているもの・持っていないものに気付いたときに、どんな戦いが起こるのか楽しみだ。
耕造と小夜子の最後の会話や、小夜子と柏木の次のターゲットが明らかになる第3話は、今夜9時から放送。
(むらたえりか)
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ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)
毎週火曜 よる9時〜
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる、伊原剛志、ほか
原作:黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)
脚本:関えり香、阿相クミコ
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
主題歌:宮本浩次「冬の花」
企画・プロデュース:栗原美和子
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原 崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ