先週放送された第4話は、ツッコミどころはあったものの、「ああ、このドラマはこういうことがやりたいんだなぁ」ということが(ようやく)見えてきたエピソードだった。視聴率は回復傾向の7.1%。

アキラ100% VS シャブ山シャブ子
冒頭、子連れで議会に来ている女性議員・土方(江藤あや)と、それに批判的な議員の柿崎(アキラ100%)の映像が写し出される。
これは一昨年、注目を集めた熊本市議会の緒方夕佳議員のケースが元ネタ。緒方議員は子連れで議会に入ることを拒否され、厳重注意処分を受けている。議会の対応と緒方議員の行動、双方がそれぞれ批判を集めた。
緒方議員は「子育て世代の代表として、子どもと一緒に議会に参加して発言できる仕組みを整えたかった」と発言して、子連れでの議会出席が一種のパフォーマンスであったことを認めている(ハフポスト日本版 2月26日)。緒方氏は議会に託児所をつくるよう求めていたが、通らなかったという(朝日新聞デジタル 2月6日)。
また、後半で土方が議会でミントタブレットを食べるシーンがあるが、これも緒方氏の事例が元ネタ。昨年9月、緒方氏が議会で質疑に立った際、のど飴を舐めていたことで退席処分が下された。議会は8時間止まり、懲罰特別委員会が設けられて緒方氏は謝罪した。なお、「飲食は規則違反だ」との声が議場から上がったというが、議会では飲食禁止について明確なルールはない(ハフポスト日本版 9月29日)。
ドラマの後半で、土方がかなり意図的に子連れパフォーマンスを行ったことが明かされる。
ラマそのものは「女性の味方」ではない?
鈴木法律事務所、危機管理課に持ち込まれた案件は、高級タワーマンション内でのトラブル。大手ゼネコン次期社長の妻、佐久間京子(原田佳奈)の家に嫌がらせの貼り紙が大量に貼られていた。警察沙汰にせず、解決したいというオファーだ。京子には発達障害の息子・怜(南出凌嘉)がいた。怜は優秀な成績だが、クラスではいじめられ、学級崩壊を引き起こしていた。
ママ友らとのギスギスした関係も出てくるが、犯人は亜矢(木下あかり)という女性だった。亜矢の夫はかつて怜の担任だったが、怜のことをかまうと他の親からクレームが入り、怜を放っておくと京子からクレームが入るという板挟みになり、鬱になって退職、自殺未遂をして意識不明状態になっていた。亜矢はタワーマンションで裕福な暮らしを続ける京子たちを恨んで……という動機だ。
発達障害というデリケートかつ現在、注目を集めている題材をストーリーの中に乱雑に放り込んでいる手付きに驚かされる。
氷見は京子と亜矢を、制度という「大きな敵」に立ち向かわせることで和解させる。結果的に亜矢は犯罪者にならずに済み、京子への嫌がらせはなくなったのだから、氷見はドラマのふれこみどおり「女性の危機を救う」(オフィシャルサイトより)ことに成功したわけだが、一方で視聴者に「女って陰湿だなぁ」と思わせることにも十分に成功している。ドラマ全体が女性の味方ってわけではないのね。
『QUEEN』というドラマの基本構造
今回は鈴木法律事務所でいつも氷見や与田(水川あさみ)らにコケにされている藤枝(中川大志)が頑張った。
藤枝が何をしたかというと、事件の渦中にある、弱っている人(つまり怜)の気持ちに寄り添ってみたということ。いじめられ、「変」だと嘲笑される怜の気持ちを理解し、彼の味方になることで窮地を救っていた。一方、藤枝が頑張るほど、氷見の誰にも「寄り添わなさ」が浮かび上がる。
発達障害の取扱いの雑さとか、ストーリーに偶然が多すぎるとか、佐野岳のシャワーシーンは何だったのか? とか、さまざまなツッコミどころがあるが、「被害者と加害者を手打ちさせつつ、その背後に潜む敵に一太刀浴びせつつ、社会全体の仕組みを変える(きっかけになる)」というこのドラマの基本ラインがようやくはっきりわかるストーリーだった。
ただ、そもそもたいして女性の味方にはなっていないというのと、不快なネットの炎上が主人公の武器という致命的な弱点は抱えたままなのだが……。今夜放送の第5話はデビット伊東による遠野なぎこへのDV疑惑がテーマ。
(大山くまお)
「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」
脚本:倉光泰子、三浦駿斗
音楽:SOIL&"PIMP"SESSIONS、田熊理秀、ハセガワダイスケ
主題歌: YUKI「やたらとシンクロニシティ」(エピックレコードジャパン)
プロデュース:貸川聡子(共同テレビ)、櫻井雄一(ソケット)
演出:関和亮、横尾初喜、山岸聖太、戸塚寛人
制作著作:共同テレビ