先週放送された第5話で「第一部完」。柊の目的が明確になるのと同時に、物語が閉鎖された教室から本格的に外部へと展開することが示唆された。放送が始まる午後10時半から約1時間のストーリーという仕掛け(番宣では「リアルタイムショー」と記されていた)があったが、それほど効果的とは思えなかった。視聴率は再び上昇して10.4%。
やっぱり菅田将暉あっての『3年A組』
不治の病に侵されていた柊は、教室で昏倒してしまう。その隙に、美術準備室へ突入する生徒たち。スマホを取り戻し、さらに殺されたと思われていた中尾蓮(三船海斗)、里見海斗(『花のち晴れ~花男 Next Season~』の鈴木仁)、西崎颯真(『西郷どん』の今井悠貴)、結城美咲(『チア☆ダン』の箭内夢菜)、瀬尾雄大(『アンナチュラル』の望月歩)、堀部瑠奈(森七菜)とも再会する。脱出するチャンスを得て、意気上がる生徒たち。しかし、里見はこう告げる。「俺たちは、学校から出るつもりはない」――。彼らは美術準備室で、柊から真相を明かされていた。
柊の目的は、景山澪奈(上白石萌歌)の自殺の真相を明らかにすること。彼女を自殺に追いやったのは、ドーピング疑惑のフェイク動画だった。
柊の真の目的は、学校に立てこもって騒ぎを大きくし、警察も追及できない顧客をあぶり出すこと。放っておけば、第2、第3の死者が出るかもしれない。同時に、クラスメイトの不幸に無関心を決め込んでいた生徒たちに“最後の授業”を行うつもりだったのだ。
柊に突っかかっていた女子生徒・堀部を演じていたのは、『獣になれない私たち』で田中美佐子の若い頃を演じていた森七菜。『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』では、いじめの標的にされて自殺未遂を起こす生徒の役を演じていた。今年公開予定の岩井俊二監督作『Last Letter』では、松たか子と庵野秀明(!)の娘役をオーディションで勝ち取った。
冒頭のシークエンスは菅田将暉の出番は回想シーンのみ。大挙出演している若手俳優たちがリードしていたが、今ひとつピリッとせず。やっぱりこのドラマは菅田将暉の鬼気迫るハイテンションあってのものだということを再確認した。
今週の地獄説教
「こんなおいしい立場、手放すわけないでしょ」
5話で柊の地獄説教の対象に選ばれたのは、読者モデルでクラスの女王的の諏訪唯月(今田美桜)。諏訪はベルムズのリーダー“K”こと喜志(栄信)と付き合っていた。
諏訪の心に巣食っていたのは、虚栄を求める欲望と、自分さえ良ければいいという利己主義、そして夢に向かって進む影山澪奈への醜い嫉妬心だった。「こんなおいしい立場、手放すわけないでしょ」という彼女の言葉は、連日報道されていた疑惑まみれのエラい人たちの本音のようにも聞こえる。
諏訪にも葛藤はあった。自分は本当にこのままでいいのだろうか、と考えることもあっただろう。だが、虚勢を張り続けるために、ベルムズの側から離れることができなかった。そんな気持ちを見透かした柊が、説教をぶちかます。
「お前は間違ってない。みんな、お前と一緒だよ。
涙を流す諏訪は、喜志からもらったブローチを割る。そこから出てきたのは、ベルムズのフェイク動画顧客リストだった。……なぜそんな大切なものを諏訪に渡していたのだろう? 警察の目が届かない場所という意味?

真犯人は魁皇高校の教師!
中尾、里見たちだけでなく、甲斐、宇佐美も一緒に学校に立てこもることを決意する。陸上部で大学への推薦入学が決まっていた瀬尾は事件に巻き込まれることを頑なに拒否していたが、柊の言葉と体を張った行動によって翻意。3年A組は一致団結して、教室に立てこもることを選ぶ(対外的には、悪いのは柊一人ということにしている)。
諏訪が持っていた顧客リストには、衝撃の事実が記されていた。
これまでは教室内の生徒への説教が中心だった『3年A組』だったが、後半戦は教室の外にいる犯人探しに本格的に突入しそうだ。教室に残る生徒たちを、どのように活躍させられるのかが見ものだと思う。このドラマの命綱である、ツッコミどころをねじふせるようなスピード感とテンションの高さも欠かすことはできないだろう。
あと、このドラマはわりと平気で後出しジャンケンをしてくる。特に伏線もなく、後から真相が解き明かされることが多い。だから、武智が真犯人だとしても驚きはないのだが……。精緻なストーリーに目を凝らすというより、おおらかな気持ちで楽しみたい。それにしても、フェイク動画の顧客リストに新聞記者たちが何人も名前を連ねていたところが、ドラマ制作者たちの気分……というより、彼らがターゲットにしている今の若い人たちの気分が表れているような気がする。
第6話は今夜10時半から。
(大山くまお)
「3年A組─今から皆さんは、人質です─」
日曜22:30~23:24 日本テレビ系
キャスト:菅田将暉、永野芽郁、上白石萌歌、大友康平、田辺誠一、椎名桔平
脚本:武藤将吾
音楽:松本晃彦
演出:小室直子、鈴木勇馬
主題歌:ザ・クロマニヨンズ「生きる」
プロデューサー:福井雄太、松本明子(AXON)
制作著作:日本テレビ
Huluにて配信中