第1話のみで高校編をサクッと終わらせ、今回からは大人編に突入。
高規範子(山口紗弥加)と由美子(美村里江)が偶然再会したことをきっかけに、高校の同級生5人が久々に集まることになる。
高校時代、範子に痴漢から助けてもらった由美子は、なんだか生活に疲れていそうな主婦に。
スカートの長さが校則違反であると告発された和樹(桜井ユキ)はジャーナリストに。
泥棒の疑いをかけられていた理穂(片瀬那奈)は、アメリカ人男性と結婚してインターナショナル・スクールの経営者に。
妊娠し、中絶手術をしていた麗香(田中みな実)は、女優として一線で活躍していた。
高校時代、範子のヤバイまでの正義マシーンっぷりに、良くも悪くも巻き込まれていた4人だが、卒業式の涙とともに「いい思い出」として処理していたようで、久々の再会を喜び合う。
しかし会計の際、持ち合わせが足りなかった由美子に2000円を貸すことになった範子が、借用書を書かせ、腕時計を担保に取るのを見て「あ、こいつこういうヤバイやつだったわ」と薄ら思い出すのだった。
「みんなのこと、ずっと思ってたから」
SNSなどをこと細かにチェックして、みんなの近況をやたらと詳しく把握していたあたりも、友情を感じる以上に怖い。

サイコ演技がハマリ過ぎてるよ、山口紗弥加
大人編に入り、まず目を引いたのは山口紗弥加のサイコパス演技。
「正義よりも大切なものはない」
という信条は昔から一貫しているものの、高校時代の範子を演じていた白石聖ちゃんは、真面目が突き抜けてしまった結果の「正義バカ」くらいのイメージだったのに対し、山口紗弥加の範子は完全にサイコパス。
正義の名のもとに罰するべき対象を見つけ出すと、瞳が爛々と輝き(おそらくリアルにキャッチライトをあてている)「スゥーッ!」と息を吸う。そして隠しきれない笑みが口元に浮かんでくるのだ。
高校編の、甘酸っぱくもギリギリのバランスで成立していたあのノリの継続を期待していただけに、ここまでサイコパスに振り切らなくても……という気持ちもあるが、大人編のサイコ演技もさすがの迫力で引き込まれてしまう。
5人の会食の際、懐かしの映画『家族ゲーム』のような横並びのテーブルが登場して「なんじゃこりゃ〜」と思ったが、コレも、横並びで目線を合わせて会話をしようとする4人と、どこ見ているんだか分からないまま「正義」を語る範子という図式で、サイコっぷりを演出していた。
そして何といっても、肌の調子が悪かったり、元気がなかったりしている友達のために、30時間(!)煮込んで作った完璧な味&栄養素をもつスープ。
「正義をこじらせておかしくなっちゃったんだなー」というのを効果的に表現するアイテムだ。
範子の中では100%善意で作っているのだろうが、麗香の元に届けに行った際は不倫の現場に遭遇。
由美子の家では、夫の借金問題でもめにもめて、ボロボロになっている真っ最中。トラブルに引き寄せられる呪いの30時間スープだ。
美村のかわいそ過ぎる主婦っぷりがツライ
今回、サイコパス化した範子のメイン・ターゲットとなったのは由美子。
仕事もしないでゴロゴロしている上に、それを指摘されると暴れるクソ夫(忍成修吾)に苦しめられていたが、範子に民法752条(同居、協力及び扶助の義務)を説かれ、仕事を紹介されたことでクソ夫が働き出すことに。
高校時代に痴漢から助けられて以来、一貫して範子を信奉してきた由美子は、ますます範子に心酔していくのだった。
しかし、仕事をはじめたはいいものの、アッという間に辞めて300万の借金を作ってしまったクソ夫と修羅場に。
範子に助けを求めるが、範子はクソ夫の借金問題よりも、修羅場のどさくさで由美子に突き飛ばされケガをした子どもの方に注目。由美子の行動をDV認定して、養育者としてふさわしくないと断罪する。
範子の「正義」が自分に都合のいい方向を向いている間は、「正義漢が強く友情に篤いステキな友達」と思えるが、その矛先が自分自身に向けばザ・悪魔!
クソ夫&範子に追い詰められてボロボロになっていく由美子の演技がまた迫真だった。
美村がミムラ時代に『斎藤さん』で演じていた気弱な主婦を思わせる感じだが、泣くのにも笑うのにも顔のシワをガッツリむき出しにしていて、さらに生活感がにじみ出ている。
児童相談所に通報された挙げ句、範子から、
「私、何か間違ったこと言ってる? どう、間違ってないでしょ?」
と追い詰められ、
「は……はい!」
と答えてしまう姿は、あまりにリアル&かわいそ過ぎてつらかった。
神がかりすぎていた高校編と比べると、普通の怖いドラマ感が強くなった大人編。
それでも、同級生たちの人生を引っかき回しまくる範子をテンポよく描いていて、ググッと見入ってしまう良作だ。
テンポがよすぎて、原作の分量を考えると4話くらいで終わっちゃうんじゃないかというスピード感でもあるのだが……。
原作では終盤になって登場する範子の娘・高規律子も早々に登場していることもあり、ドラマ独自のオリジナル展開も用意されているのだろうか?
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・FOD
・TVer
『絶対正義』(フジテレビ)
原作: 秋吉理香子『絶対正義』『この女に賭けろ』(幻冬舎文庫刊)
脚本:仁志光祐、谷岡由紀、政池洋佑
演出:西浦正記、浅見真史
主題歌:嘘とカメレオン「ルイユの螺旋」(キングレコード)
音楽:木村秀彬、佐藤浩一
企画:横田誠(東海テレビ)
チーフプロデューサー:市野直親(東海テレビ)
プロデューサー:浅野澄美、郷田悠(FCC)
制作著作:フジクリエイティブコーポレーション
制作:東海テレビ放送