2月6日に『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)の第6話が放送された。
北川景子「家売るオンナの逆襲」大胆「ホームとエロス論」にツッコみたい、筧美和子のボディじゃ無理!6話
イラスト/まつもとりえこ

夫婦には「ホーム」と「エロス」がある


テーコー不動産にやって来たカリスマ美容師・八十多湊人(武田航平)とつぐみ(内山理名)夫妻は割り切った関係。ビジネスパートナー同士であり、お互いの不倫を公認する“友達夫婦”である。


湊人との関係性を説明するのはつぐみだ。
「死ぬまで男と女として愛し合うご夫婦もたくさんいるとは思いますけど、ウチは違うんです。ウチは恋愛感情はもう卒業してしまって」
「この先、夫も私も生涯恋をしないっていうのは何か無理があると思うんですよね。私だけを見つめて生きてる夫っていうのも、何だか気持ち悪いし」
「私も仕事を持っていれば出会いもあります。そのときのときめきを押し殺して生きていくっていうのは、人間としてもったいないような気がするんです。それで夫とは人間同士としては愛し合い、並んで年を重ねていきつつも、外での恋愛は自由にしようって話し合ったんです」

問題は、この夫婦が外で恋愛する際の相手側だ。湊人は若い女性・尾田まり(筧美和子)と恋人関係である。実は、まりには順平(橋爪淳)という夫がいた。尾田夫妻に八十多夫妻のような価値観はない。湊人とまりの恋愛は、順平からするとただのW不倫。2人の関係を知り、順平は激怒した。

三軒家万智(北川景子)は作戦を立てた。
年上好きで今は彼氏のいないつぐみと順平が運命的に出会うよう仕組んだのだ。2人を恋愛関係にさせる、名付けて「メイク・ディスティニー・オペレーション」作戦! 結果、つぐみと順平は恋に落ちた。

2組の夫婦を招集し、三軒家は「ホームとエロス論」を説いた。
■ホーム
・八十多湊人──八十多つぐみ
・尾田順平──尾田まり
■エロス
・八十多湊人──尾田まり
・尾田順平──八十多つぐみ

2組の夫婦がスワッピングすることで、ホーム(人間愛)とエロスの両方を全員が手に入れる。当事者が幸せで、誰も傷付けていなければ、こういう夫婦の形もアリではないのか? という三軒家のプレゼンである。「多くの夫婦はホームとエロスのどちらかで諦めるが、この形ならどちらも満たされるはず」、それが彼女の主張だ。

不倫を肯定しているわけじゃない


伝えたいメッセージはわかる。つまり、「自分の物差しで他人は測れない」ということ。自分の持っている価値観を、他人も共有しているとは限らない。自分が理解できなくても、当事者が幸せならばそれでいいはず。人に迷惑を掛けなければ「認めない!」と頭ごなしに決め付けるのは違う。夫婦の形も様々だ。
要するに、決して不倫を推奨していないのだ。
大事なのは多様性。2組の夫婦が“安定の四角形”となり、丸く……ではなく四角く収まったのは多様性ありきだからだ。

ところで、三軒家のスタンスはどこにあるのか? それについては、課長であり夫の屋代大(仲村トオル)とのやり取りが全てを表している。
屋代 君は婚外の恋を肯定してるの? 僕は嫌だな。安定の四角形なんていらないよ。
三軒家 全ては家を売るためです。

三軒家の立ち位置はずっと変わらない。LGBTや働き方、外見(整形)や住居がテーマのときと同じ。否定も肯定も彼女はしない。でも、常に多様性は受け入れる。不倫や婚外恋愛も、やはり肯定はしていない。

「ホームとエロス」の「エロス」が持ちそうにない


メッセージはわかった。
だとしても、看過できない部分がある。はっきり言って雑なのだ。

第6話の内容には賛否両論……と言うより否の意見がネット上に数多く上がっていた。筆者にも引っかかる部分はあった。どこが残念ポイントだったか?

(1)
三軒家が説いたのは「ホームとエロス論」。尾田夫妻に注目すると、順平にとってまりは「ホーム」ということになっている。
こんなの嘘だ。教え子と恋に落ち、かなり年齢が下のまりと結婚をした順平。しかも、まりを演じているのは筧美和子である。巨乳だ。順平からまりへは、絶対に「エロス」の矢印も向いている。まりをホーム扱いにするのは、かなり無理があるのではないか?

(2)
湊人とまりのデートを目撃した順平は激怒、湊人を襲撃しようとした。
加えてその直後、順平はこんなことを口にしている。
「今、まりと一緒にいたら殴ってしまうと思って、今夜は実家に帰しました」

順平は、まりを女として愛している。これは人間愛ではない。「ウチは恋愛感情はもう卒業した」と割り切る八十多夫妻とは違うのだ。
順平はつぐみと恋愛関係になった。でも、それでもまりと湊人がイチャついていたら耐えられないと思う。恋愛は足し算や引き算ほど単純じゃない。

(3)
三軒家の立てた作戦「メイク・ディスティニー・オペレーション」が、あまりにも褒められたものではない。湊人とまりのW不倫がバレた後、不倫された順平に新しい相手をあてがっただけなのだ。品のないプロジェクトではないか。しかも、それを不動産屋が? まあ、これは当事者同士が同意しているからいいのだが……。

(4)
当初、順平は「結婚というのは1人の異性と永遠の愛を誓うこと」「生涯、まり以外に心を奪われることはない」と言っていた。
しかし、つぐみと出会ってすぐに恋に落ちた。あんなに不倫を否定していたのに……(本人も「むちゃくちゃになってるな、僕ら」と自嘲している)。
彼は、気がありそうな若い女性がいると即コロッと行っちゃいそうな気がするのだ。もし、順平に別の新たな出会いがあった場合は大丈夫なのか?

「エロス」の関係性は、すぐ壊れてしまいそうな危うさに満ちている。それは、湊人とまりのほうも然り。なのに、同じマンションの部屋を買ってしまって……。


三軒家が見繕った「安定の四角形」は、あまりに頼りなさすぎる。長く持たないと思うのだ。「多様性を受け入れる」以前に、新しい価値観が成立するのか疑問である。「家が売れれば後は知らない」で済ます三軒家じゃないはずなのに。
話の方向性がダメなのではない。ストーリーが雑だから、「オイ、オイ」と物申してしまいたくなるのだ。



『家売るオンナの逆襲』は、前シリーズの『家売るオンナ』と少し趣きが違う。社会問題、多様性を取り上げるチャレンジングな姿勢である。いいと思う。特に、泉ピン子を迎え、「ネットカフェ難民」と「孤独死」をテーマに掲げた第2話は神回だった。
でも、テーマばかり重視し、粗や説得力不足が目立つと本末転倒だ。意地悪な言い方をすると、新たな価値観を掬うその時点でドヤってるようにさえ感じてしまう。

特に、第6話は視聴者のリアクション的にもかなりスレスレのテーマだった。だからこそ、より丁寧に行くべきだったと思う。
(寺西ジャジューカ)

『家売るオンナの逆襲』
脚本:大石静
主題歌:斉藤和義「アレ」(スピードスターレコーズ)
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、柳内久仁子(AXON)
協力プロデューサー:水野葉子
演出:猪股隆一、久保田充 他
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中
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