オトナの土ドラ『絶対正義』(フジテレビ系・土曜23時40分~)第4話。

正義サイコ vs 復讐サイコ


高規範子(山口紗弥加)から、不倫相手の本間亮治(神尾佑)の妻がずっと寝たきり状態だということを知らされショックを受けた石森麗香(田中みな実)。

範子の入れ知恵のせいで、取材協力者・岡本瞳(黒沢リコ)から訴えられそうになっている今村和樹(桜井ユキ)。


これまた範子の入れ知恵で、夫に子どもの親権を取られそうになっている西山由美子(美村里江)

能天気すぎる外国人夫・ジョーイ(厚切りジェイソン)を取り込んで、不妊という超・プライベートな問題にまで介入してこようとする範子に辟易している理穂・ウィリアムズ(片瀬那奈)。

そんな彼女たちの元へ唐突に現れたのが矢沢剛志(水橋研二)。

かつて「タバコを隠れて吸っていた生徒たちを見逃した」ということを範子から告発され、失職した元・高校教師だ。

「助けに来たんだよ。先生が、お前を助けてやる」

失職してから人生がメチャクチャになってしまった矢沢は、「高規範子被害者の会」を結成して範子への復讐を考えているようだ。

彼女たちの問題を、範子ばりの調査能力&行動力、そして「理詰めの正義」一本槍の範子とは違う「情に訴えかける力」でサクサクと解決する矢沢。

サワヤカ熱血教師だった頃の面影を残しつつも、目が確実に狂っている、味わい深いキャラクターだ。

「正しい」を振りかざして無双状態となっている正義サイコ・範子に対抗できそうな、もうひとりのサイコパス・矢沢の登場でがぜん盛り上がるドラマ。

しかし、範子と矢沢の直接対決となる肝心の同窓会のシーンが「なんじゃこりゃ」感が強く、イマイチ腑に落ちなかった。

矢沢先生、打たれ弱すぎだよ


範子が「正そう」として火に油を注いできた問題を、ことごとく解決したのを見せつけてマウントを取る矢沢。

和樹たちを味方につけ、範子をガンガンに責めたてる。

「お前は法律じゃない、間違っているのはお前だ」
「間違わない人間なんていないのに、人を批判することが正しいことなのか?」
「お前は人の気持ちがこれっぽっちも分かっていない、そこが間違ってるんだよ」

「確かに、そうかも知れません。私は……」

とにかく範子に間違いを認めさせ、謝罪させるというのが宿願だったのだろう。
先走って口を「ま・ち・が・っ・て・た」の形にしてしまう矢沢、サイコーの顔だ。

しかし「間違っていません、やっぱり」と反撃に転じた範子から、ファッションヘルスで働く弁護士・伊藤薫と交際していること。多額の借金をして自己破産をしたことを暴かれた矢沢は、すっかり弱腰になってしまう。

現役教師だったらさすがに問題があるだろうが、失職してすべてを失っている矢沢にとって、そこまでうろたえるような話だろうか?

「私と矢沢さんと、どちらを信じるのか選んで」と範子に迫られた和樹たちの手のひら返しっぷりがさらにヒドイ。

「認知症の老人からこんなことを聞き出すヤツを信じるのか、お前らは」
「こいつがどんなヤツかまだ分からないのか、大丈夫かお前ら」

と訴える矢沢に対し、

「ひどい言い方」
「最低」

範子への復讐を目前にしてテンションが上がりすぎ、少々イカれた感の強い口調になっていたのは確かだけど、「最低」とまで言われるほどヒドイこと言ってる?

弁護士が風俗嬢をやっているのがそんなに悪い?(この人の経歴はすごく気になるが)自己破産してるのはそんないダメなこと!? そもそも、その原因を作ったのは範子だし。

矢沢に色々と助けられたことを忘れ、範子に破滅寸前まで追い込まれていたことも忘れて「私たちは範子を選びます」とか言っちゃう和樹たちよ。

こいつらもだいぶ頭がおかしいぞ!?
「絶対正義」熱血教師の面影を残したまま壊れちゃった先生がヤバイ、範子の正義の被害者かと思いきや…4話
イラストと文/北村ヂン

このバケモノを作ったのはお前たちだ!


何度、範子に追い込まれても、喉元過ぎれば……で再び仲良しごっこを繰り広げてしまう彼女たちに、範子は当然のごとく友情とか無関係に正義砲をぶちかます。

麗香には「(不倫相手の)子どもたちに事実を伝える」と告げる。

理穂の夫には卵子の提供を申し出る。

岡本瞳に協力して和樹に対する訴状を制作。

由美子のDVを告発するため、夫側の承認として離婚調停の場に登場。

同窓会での矢沢の捨てゼリフがすべてを物語っている。


「いつかこいつを受け入れたことを死ぬほど後悔することになるぞ」

“いつか”がすごく早くやって来たねぇ。

最初から揺るがない「正義」を持って突き進んできたように見えていた範子だが、思い返せば、彼女たちに「正義」を承認されるたびに、徐々に正義クレイジーっぷりをエスカレートさせてきたのだ。

範子が過剰な正義を振りかざして他人を地獄に堕としても、何だかんだで「範子が正しかったねぇ〜」で済ませてきた彼女たち。

そのたびに範子は恍惚の表情を浮かべ、「正義は正しい」との思いを強くしてきた。

「このバケモノを作ったのはお前たちだ!」

範子もヤバイが、そんな範子と友人関係を継続してきた、他の4人もやっぱりどこかぶっ壊れているのでは? と思わされた今回。

ラスト、範子の遺体(?)を前にガクガクブルブルする4人の姿が映し出されていた。

今夜放送の第5話から第2章スタート。結局、まともだったのは矢沢先生だけだった……的なオチだったらすごいが。
(イラストと文/北村ヂン)

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『絶対正義』(フジテレビ)
原作: 秋吉理香子『絶対正義』(幻冬舎文庫刊)
脚本:仁志光祐、谷岡由紀、政池洋佑
演出:西浦正記、浅見真史
主題歌:嘘とカメレオン「ルイユの螺旋」(キングレコード)
音楽:木村秀彬、佐藤浩一
企画:横田誠(東海テレビ)
チーフプロデューサー:市野直親(東海テレビ)
プロデューサー:浅野澄美、郷田悠(FCC)
制作著作:フジクリエイティブコーポレーション
制作:東海テレビ放送
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