オトナの土ドラ『絶対正義』(フジテレビ系・土曜23時40分~)第5話。

「オトナの土ドラ史上に残る衝撃展開!!」という、ちょっとハードル上げすぎなサブタイトルがつけられていたが、その看板に違わぬ衝撃展開だった。


「家族」という言葉に依存


第4話までは、高規範子(山口紗弥加)に翻弄される同級生たち側の目線で展開されてきた本作だが、今回は範子目線を中心に進行。

これまでのエピソードをダダダーッと振り返りつつ、その裏で範子がどんな行動を取っていたのかが明かされる。

意外だったのが、汗ひとつかかず冷静に正義を貫いているように見えた範子だったが、実はかなり必死こいて同級生たちを追い詰める材料を集めていたということ。

あの冷静な顔を作っている裏には、「取り乱して信号無視をした母親が死んだ」というトラウマがあったのだ。あれ以来、「正義に反する行動を取らない」「焦らない」というルールを自分に課している。

そして、西山由美子(美村里江)たち同級生にまで過剰な「正義」を押しつけてきた原因は、高校時代の由美子が発した、

「私たちって、本当の家族より家族って感じがするの」
「範子ちゃんも今日から私たちの家族ね」

という言葉にあった。

自分と母親が「正義に反する行動」を取ってしまったため、「家族」(母親)を失ってしまったと考え、絶望の淵にいた範子。

そんな時に贈られた「家族」という言葉に依存し、

「15年後にまたここで(写真を)撮らない?」

を実現させるため、「家族」を失うことのないよう、自分にも同級生たちにも正義を強要してきたのだ。

しかし解せないのが、超・重要な伏線である「15年後にまたここで撮らない?」という言葉も、写真を撮ったというエピソードも、これまでドラマに登場していなかったということ(過去回を見直しちゃったよ!)。

高校時代編の最後にこのシーンが入っていたら、ものすごく気持ちよく伏線を回収できたのに……。

入れなかったのには何か理由があるのだろうか?

わたしたち、家族じゃないの?


いよいよ約束の日。

15年前に写真を撮ったあの場所に向かう範子の元に、矢沢剛志(水橋研二)が再登場する。

サイコパス vs サイコパスの戦い再びか!? と思ったら、矢沢はアッサリと殺害(?)されてしまったようだ。前回の口論でもそうだったけど、矢沢先生、弱すぎだよ!

それにしても、これまで「正義よりも大事なものなんてない」と言い続けてきた範子よ。
いくら「約束を守るため」とはいえ、正義に反する行動を取ってよかったのか? 「後で罰を受ければオッケー」という考えなの?

矢沢の返り血を浴びたまま約束の場所で待っている範子に、完全にドン引きする由美子たち。

約束の写真を撮り終えた範子が「自首する」と言うと、露骨に安堵の表情を浮かべる。

目の前にいるヤベエやつが警察に行ってくれるという安堵、そして自分の人生へ過剰に介入してくる厄介な人がいなくなるという安堵。

しかしここで、由美子たちはまたしてもやらかしてしまう。安心して気が緩んだのか、範子へ感謝の気持ちを語り出したのだ。

「何だかんだで色々あったけど、もう会えないと思うと全部いい思い出だよね〜」という、高校の卒業式の時と同じパターンだ。

範子がどんなヤバイ行動を取っても、この4人が何だかんだで受け入れてきたせいで、範子の「正義」がエスカレートし続けてきた。やはり、正義マシーンを生み出したのはこの4人の自業自得だ。

友達(範子)に優しい言葉をかけて気持ちよくなっている4人に、自分が刑務所に入っても「正義」の押しつけは続くと宣言する範子。絶望する4人。いつものパターンだ。

しかし、いつもと違ったのは「私、何か間違ったこと言ってる?」とドヤる範子の首を、由美子が無言で絞めにいったこと。


怒りの表情を浮かべたり、手をプルプル震わせたりせず、唐突に首締め。テンパッた挙げ句「思わず」というのがふさわしい行動だ。

今村和樹(桜井ユキ)、理穂・ウィリアムズ(片瀬那奈)も協力して息の根を止めたかと思いきや、立ち上がって涙を流す範子。

「わたしたち、家族じゃないの? 家族じゃないの? 違うの? 家族じゃないの?」

これまでのヤバイ行動全部、ホントーによかれと思ってやっていたんだな……。

高校時代に戻ったかような子どもっぽい口調に(高校時代の範子、もっと大人っぽかったけど)思わず同情しそうになってしまったが、それをドーンと崖下に突き飛ばす
石森麗花(田中みな実)。

首を絞められ、だいぶ高そうな崖から落ちてもギリ生きていた範子はさすがに強すぎる。

それにしても、最後の力を振り絞って腕時計を外し、由美子たちとの写真を取り出したのはどういう意図があったのか?

由美子たちのことを思って、身元が分かる証拠を捨てようとしているようにも見えるし、いつものように由美子たちを「正す」ために「こいつらが殺したんだよ!」と証拠を残しているようにも見える。
山口紗弥加「絶対正義」他人の不倫には厳しいのに自分の夫の不倫はスルー「みんな違ってみんなヤベエ」5話
イラストと文/北村ヂン

他人の不倫には厳しいのに、自分の夫の不倫はスルーかよ


サイコパス・矢沢をサイコパス・範子が殺害し、その範子を同級生4人が殺すという「みんな違ってみんなヤベエ」状態となっているこのドラマ。

しかし、それに輪をかけてヤバそうな新キャラが登場している。範子の夫・啓介(堀部圭亮)だ。

これだけ杓子定規な「正義」を振りかざしてくる妻と生活するなんてメチャクチャ大変だろうと思いきや、啓介がバレバレの不倫をしているのに範子はスルー。

あれほど他人の不倫に厳しかったのに、自分の夫の不倫は見て見ぬ振りというのはワケが分からないが、範子曰く「主人は家族じゃありませんから」ということらしい。


範子の正義が適用されるのは、範子が「家族」だと考えている娘・律子と、由美子たち同級生4人、および「家族」に危害を加える者だけということなのだろうか?

……のわりには、矢沢や廃屋に不法侵入していたホームレスなど、「家族」とは関係ないのに範子の被害者となった人もいるけど!?

夫のために何かするたびに「貸し3になります」など、貸し借りを勘定していたり、範子と啓介の関係は、普通の夫婦ではなさそうだ。娘がいるということはヤルことはヤッてるんだろうけど……。

第5話目にして、主人公・範子も、その敵・矢沢も殺されちゃうというまさかの展開。

今後は殺害犯である同級生4人と、妻を殺された啓介がガッツリ絡んでくるのだろうか? あの何重にも鍵をかけられた部屋に閉じ込められている律子ちゃんは大丈夫なのか!?

そして、これだけ緊張感の高いドラマの最後に毎回、厚切りジェイソンのクソつまらないギャグは必要なのか!?
(イラストと文/北村ヂン)

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『絶対正義』(フジテレビ)
原作: 秋吉理香子『絶対正義』(幻冬舎文庫刊)
脚本:仁志光祐、谷岡由紀、政池洋佑
演出:西浦正記、浅見真史
主題歌:嘘とカメレオン「ルイユの螺旋」(キングレコード)
音楽:木村秀彬、佐藤浩一
企画:横田誠(東海テレビ)
チーフプロデューサー:市野直親(東海テレビ)
プロデューサー:浅野澄美、郷田悠(FCC)
制作著作:フジクリエイティブコーポレーション
制作:東海テレビ放送
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