
総務省は近年、深刻になっているIT業界の人材不足のなかでも、高度ICT人材のPM(プロジェクトマネージャー)不足の問題解決に、特に力を注いでいる。
PMには知識や実技はもちろん人格も求められることから、育成が難しいとされている。
PM不足解消のための企業CM
先日、こんなCMに目が止まった。PM不足解消のために、優秀なPMを採用することを呼びかけるために、社長自らが出演している。
SHIFT_TVCM2019_志篇 from 株式会社SHIFT on Vimeo.
昨今、PM不足解消のために動くIT企業は複数社あるが、そのうちのひとつである株式会社SHIFTでは、自社のPM採用を強化すると同時に、日本のPM不足を解消すべく、PMの自らの仕事の価値と、日本が誇る『ものづくり』への自負を再認識してもらいたいという思いを込め、CMでメッセージを送った。
優秀なPMの採用強化により、自社の組織力強化と、IT業界の構造課題の抜本的な解決を図ろうとする狙いがあるという。
このCMにより、PMが相当不足しており、さらに育成が難しいという問題があることを改めて知った。
同社の担当者にPMのスキルアップについて尋ねたところ、やはり高度な意識が必要であることがわかった。
「PMは個人が持つ技術や経験が重要な職種です。技術の進歩や、移り変わりが早い業界だからこそ、常に市場のニーズをキャッチし、スキルを高め続ける必要があると考えます」
PM育成が難しいのはなぜ?

そもそもPM育成が難しいといわれる理由は何なのか。
それを知るべく、国内のプロジェクトマネジメント普及活動などを行う一般社団法人 PMI日本支部に尋ねたところ、会長の奥澤薫さんは次のように回答した。
「プロジェクトマネジメントの観点からすると、IT業界は特殊な世界といえます。ITの世界で知識の習得と適用は、ほとんど同時で距離がありません。
他の業界では、知識の習得はほんの入り口で、その後の実践を通した習熟が求められます。
プロジェクトマネジメントも実は医師と同様に習熟が求められるのですが、IT業界ではとかく習熟のプロセスが軽視されてしまうのです。
PMを目指す本人だけでなく、育成する立場の人も同様の職業的バイアスに基づいてプロジェクトマネジメントに取り組むことになります。
これがIT業界でのPMの育成の障害になっていると思われます」
PMの人格面を育成するには?

PMの人格面を育成するには、どんな指導や訓練が求められるのだろうか? 奥澤さんは次のように話す。
「PMの人格面を育成することは、特別なことではないと思います。人間は、過去数千年にわたって『どのようにしたら望ましい人格の人材を育てられるか』に取り組んできたことから、IT以外の世界に解があると思います。つまり、先人の知見を活用することがポイントになります。
状況を設定し、自分自身で積極的にその状況を理解し、問題を発見し、対策を考えることに取り組むことを繰り返すことが大切です。
人によって効果は違いますが、事例検討での討論、ロールプレイング、本人の感性が強ければ古典の読書会でもいいと思います。
ただし、効果は個人によりバラツキがあり、繰り返し実施する必要があることから、育成者は時間がかかることを覚悟する必要があります。人材を育成することは、多大の労力と長期の時間を覚悟することが求められ、投資した人材は大切に活用しなければなりません」
PMとして大成するためのスキルアップ方法

PMとしてやっていくにはどんなスキルアップが必要になるのだろうか?
「先にもお伝えした通り、PMのスキルアップは『知識量を増やす』だけでは達成できません。実践力のあるPMを育成するには、『実践に近い訓練を、できるだけ経験する』ことが大切です。
人により上達の速さは違いますし、長期の停滞と突然の目覚めがつきものです。必要なのは、スキルアップを目指すPMに、気付きの機会をできるだけ多く与え、本人が『自分自身で真剣に受け止め、状況に入り込み、対応策を模索し、様々な要素に思い悩んで、最後は決断する』という経験をできるだけ多く積むことが求められます」
PMとして一人前になるためには、知識習得はもちろん、経験を積むことが何より重要であるようだ。
【取材協力】
株式会社SHIFT
一般社団法人 PMI日本支部
(石原亜香利)