「塩加減は大丈夫かなと思いながら、みなさんにおにぎりを握るときは幸せですね」

そんなことを語る石原さとみの主演ドラマ「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」が今夜10時からスタートする。原作は「動物のお医者さん」「おたんこナース」などで知られる佐々木倫子による同名コミック(kindle版1巻無料)。

石原さとみ「Heaven?~ご苦楽レストラン~」“いい話”感のなさにとても期待している。今夜スタート

今クールのドラマの中でも期待度は高い。『コンフィデンス』誌での「7月クールドラマ期待度ランキング」では堂々1位を獲得(同率1位は「監察医 朝顔」)。レビューサービス「Filmarks」による「2019年夏ドラマ期待度ランキング」でも2位を獲得している(1位は「凪のお暇」)。

正体不明の変人オーナー


あらすじは、「自分が心ゆくままにお酒と食事を楽しみたい」という欲求をかなえるためだけに、墓地の中のフレンチレストラン「ロワン・ディシー<この世の果て>」を開いた正体不明の変人オーナー、黒須仮名子(石原さとみ)と彼女が集めた従業員たちが巻き起こす騒動を描くというもの。いわゆる“いい話”感がない、純然たるコメディーである。

彼女が(かなり適当に)集めたメンバーを紹介しよう。伊賀観(福士蒼汰)は営業スマイルができないシェフドラン(上級ウェイター)で、サービス陣では唯一のフレンチレストラン経験者。原作では周囲(主に仮名子)に振り回される彼が主人公である。

店長で経理を担当する堤計太郎(勝村政信)は元牛丼屋店長。ソムリエの山縣重臣(岸部一徳)は定年退職した元銀行役員。コミドラン(アシスタントのウェイター)の川合太一(志尊淳)は元美容師。

シェフの小澤幸應(段田安則)は三ツ星レストランでの経験があるが、在籍した店を次々と潰してしまう不吉なジンクスを持つ。なお、小澤は原作では下の名前がなかったが、ドラマでは「幸應」という立派な名前がついた。
もちろん、服部栄養専門学校の服部幸應からとられたものだろう。なんというか、このドラマの姿勢が表れているような気がする(いい意味で)。

正直、“賭け”な部分も


欠点を抱えた従業員たちが集まって奮闘するドラマといえば、金字塔として「高原へいらっしゃい」(76年。03年にリメイク)と「王様のレストラン」(95年)がそびえたつ。女性にまつわる諸問題を扱った「問題のあるレストラン」(15年)や近作の「崖っぷちホテル!」(18年)も同系統のドラマだ。

ただ、「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」の原作の持ち味は、これらのドラマと比べると、独特のマヌケさが漂っていておかしみが強い。なんらかの社会問題をとらえようとしているドラマは制作発表の受け答えも真面目になったりするものだが、このドラマの制作発表は石原さとみが楽屋でごはんを炊いておにぎりを握ってみんなにふるまったり、福士蒼汰がやたらあちこちで大声で歌っていたり、勝村政信が自宅の庭でバナナの木を育てていたりするという、のどかなエピソードばかりが飛び出すというものだった。

石原さとみはこのドラマについて、「正直、“賭け”な部分もあります」と語っていたが、それはひとえに“いい話”感のなさのことだと思う。やっぱり独特のマヌケさで勝負するのだろうか? 「アンナチュラル」のローな石原さとみではなく、コメディエンヌとしてのハイな石原さとみを楽しみたい。若手イケメン(福士&志尊)や枯れおじさん(岸部&段田&勝村&舘)の楽しみもたっぷりだ。今夜10時から。
(大山くまお)

「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳、舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS
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