そういえば、どれくらい水がかかればタイムリープできるんだろう?

「誰かの手でびしょ濡れになると過去へ、自らびしょ濡れになると現在へ」タイムリープする水野羽衣(大原櫻子)が主人公の『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』(テレビ東京、毎週水曜25:35〜)。その能力を使って羽衣が毎回2件の事件を追及するというドラマだ。
テレビ東京とParaviの2媒体で少しずつ展開が異なり、それぞれの事件が解決する。

今回はスーパーの凄腕万引きGメン山田(片桐はいり)の依頼で、「勤務するスーパーで特定のパンに必ず9割引のシールが貼られてしまう」というもの。監視カメラの映像を見るとびしょ濡れの羽衣が映っている。もちろん、この真相を追及するためにタイムリープした姿なのだが、山田に疑われてしまい、逃げながら事件を追うはめになる。
「びしょ濡れ探偵水野羽衣」片桐はいり圧巻の演技、矢部太郎(がんばれ…!)との対比もいい
イラスト/よねこ

片桐はいり、圧巻の演技


で、冒頭の疑問だ。逃げた先の公園で、水鉄砲を撃ちあっている子供たちを利用してタイムリープをする羽衣。ふだん、洗面器たっぷりの水を顔面に受けるのに比べると相当勢いも弱く、水量も少ない。実際、最初は「まだ足りない!」と言い、子供たちに集中的に撃ってもらう展開になるのだ。たとえばエスパー魔美だったら「仁丹をぶつける衝撃」で「テレポーテーション」をしていたけど、羽衣の場合は衝撃はさほど必要ないのか? であれば毎回あんなに勢いよく水をかけている兄(矢本悠馬)の仕打ちは……。今後、いろんなパターンの「水をかぶらされる」展開によって、何がトリガーになっているのかがわかっていくことを期待したい。……といっても、そういうのが全然関係ないところがこのドラマのいいところでもあるんだけど。

今回の見どころはやはりゲスト・片桐はいりの圧巻の演技だ。出てくるだけで、しゃべるだけで面白いその存在感! 息を乱さず羽衣を追うアンドロイドのような走りには、彼女がかつて出演し、マシーンのように感情を排してただ男のために力強く行動する女を演じた松尾スズキ作・演出の『マシーン日記』を思い出してしまった。

冴えないスーパーの店長・矢部太郎との対比もいい。いろいろ大変な状況の彼だが、マンガだけでなく演技の方でも頑張ってほしい。

テニスコートが水野羽衣をどう料理するか


今回の脚本を担当したのは小出圭祐。3人組コントユニット「テニスコート」の一員だ。武蔵野美術大学在学中に結成し、以来定期的に単独ライブを開催している。主戦場はライブでありながら、お笑いライブに頻繁に出るいわゆるふつうの芸人とはちょっと違う立ち位置(なにしろ所属事務所がスターダストである。ちなみに片桐はいりも)。3人揃ってEテレ『シャキーン!』の構成も担当している。演劇との親和性が高く、つい先週末には「大交流会館」と題して脚本にも出演にも演劇畑のゲストを迎えた公演を行ったばかり。シュールでスタイリッシュ、だけどくだらないコントにはファンも多く、私が観に行った回では立ち見も出ていた。

小出が担当した第4話でも、Paravi版の展開が心底くだらなく、なのにいい話風にまとまっているところがさらにしょうもない感じを加速させていた。テニスコートは今後も今作の脚本を担当する予定。
それぞれの描く水野羽衣の違いもこれからの楽しみのひとつになりそうだ。
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