「誰かの手でびしょ濡れになると過去へ、自らびしょ濡れになると現在へ」タイムリープする水野羽衣(大原櫻子)が主人公の『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』(テレビ東京、毎週水曜25:35〜)。毎回異なる2つの事件が起き、羽衣が能力を使って事件を追及する。
テレビ東京とParaviの2媒体で少しずつ展開が異なる仕立てのドラマだ。

第6話の脚本は、4話で脚本を担当した小出が所属する3人組コントユニット、テニスコートの吉田正幸。そしてもう一人のメンバー、神谷圭介が依頼人の一人として登場する。今作の企画・メイン脚本を担当するブルー&スカイのユニット、フロム・ニューヨークの公演『サソリ退治に使う棒』にテニスコートの3人が客演をしたこともあり、何かと交流がある組み合わせだ。
「びしょ濡れ探偵水野羽衣」正統派漫才から急にキャラ漫才に転向、エジプト漫才は「こっぱずかしい」か6話
イラスト/よねこ

券売機の呪い


エジプトっぽいキャラに扮した漫才で最近少し人気が出てきたお笑い芸人クスダオオタの太田(神谷)。相方の楠田(長谷川ティティ)が失踪したのは正統派漫才をやってきた自分たちが急にキャラ漫才という「こっぱずかしい」転向をしたからではないかという相談だ。
もう一方は食堂をエジプトっぽく改装した途端に食い逃げが頻発して困っているという依頼。店主(松本実)は改装の際に処分してしまった大きなまねき猫の祟りではないかと恐れている。いつものように羽衣がびしょ濡れになって過去に行くが、2週間前に戻るつもりが間違えて1カ月前にタイムリープしてしまい、結果そのことによって事件は「なにもかもすっきり」解決する。

テレビ東京版ではクスダがエジプト漫才に愛想をつかしたのではなく、クスダオオタのファンであるヤンさん(ヤオ・アイニン)から贈られた、あまりにもくさすぎるお守りに慣れるために訓練をしていたことがわかる。Paravi版では食堂が改装に伴い、券売機形式から後払いにしてしまったため、慣れていなかった客が払ったものと思い出て行ってしまったという結論。羽衣は「券売機の呪いと言えるかもしれませんね」と結ぶ。

余談だが、冒頭のお笑いライブのシーンでボンゴレ兄弟として登場するなすなかにしは短い時間ながら若手ベテランの魅力を発揮していていいアクセントになっていた。
ヤンさんが「ツンデレなお笑いファン」という意外な一面を見せたのも今回の見どころだろう(結果、事件が起きるわけだけど)。また、お笑い芸人とも言いづらく、かといって演劇とも少しちがう、変わった立ち位置のテニスコートの吉田が「正統派漫才からキャラ漫才への転向」を描くのも、ちょっと面白い構図と言えるかもしれない。

無機物に魂が宿る話


そういえば、テニスコートのコントには無機物に魂が宿るものがいくつかある気がする。つい先日のライブでも餅つきのコントにおいて、餅に魂が宿っていた。その系譜のひとつ、と言えるかもしれない。

ちなみに、今回出演していた神谷はこの『びしょ濡れ探偵』のオープニング映像を担当している。水色の背景のなか、天狗や菊、そして女性の耳に水がかかっていくオープニングは、「びしょ濡れ」というタイトルをつけながらもエロ要素がほぼないこの番組で、なんならいちばんセクシーな映像かもしれない(なぜかドミノや麻雀牌、赤べこなどにも水がかかっていって、エロスなのかなんなのかわからなくなるのだが)。
トリオの3人中2人が脚本を担当したテニスコート。神谷が脚本を担当する回が来るのかも、この先の楽しみの一つに数えたい。
(釣木文恵)

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「びしょ濡れ探偵 水野羽衣」
出演:大原櫻子、矢本悠馬、大堀こういち、ヤオアイニン
企画:ブルー&スカイ、加藤伸崇
脚本:ブルー&スカイ、村上大樹、テニスコート、金井純一
監督:草野翔吾、金井純一、長野晋也
チーフ・プロデューサー:山鹿達也
オープニング曲:マカロニえんぴつ「surpernova」
エンディング曲:大原櫻子「I am I」
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